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悩める夫たち3

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「じゃあ、去年は何を贈ったんだ?」
「ええっと、何だったかな?服とかじゃなかったかな?」
「そうなのか?それなら店に確認すれば、分かるだろう。どこの店だ?」

 服ならばサイズもあるだろうから、本当ならば確認が出来る。本当ならばだが…。

「それが飛び込みで買ったから」
「現金でか?」

 平民の服でもあるまいし、大金を持って買いに行ったというのか?言っていておかしいと思わないのだろうか?

「ええ、そうよ」
「毎年?二人にか?」
「そうよ、当たり前じゃない。私は自分の選んだ物を両親には渡しているの」

 母上への嫌味なのだろうが、嘘を付いている自覚がないのだろうか?義父上なら貰ったことにして欲しいと言えば、口裏を合わせてくれると思っているのだろう。

「そうか…今後は飛び込みでも、店と何を買ったか記録して置いてくれ」
「分かったわ」

 もうメルベールに贈り物を頼むことは止めよう、両家で贈り物はなくなるだろうが、他の家にはさらに任せられない。

 執務室に戻ったマトムも頭を抱えていた。アベリーのことで評判を回復しようと、シュアト公爵家を頼ろうなどとしたことが間違いだった。

 ユーリが可愛がって貰っていたならば、メルベールも可愛がって貰ると思ったこと。冷静になれば、シュアト公爵家がユーリが亡くなったことで、何が起きたのか調べないはずがないのだ。

 我々は間接的にユーリを害したとしても、仕方のない存在だった。

 レイアがことは情けなくて堪らなかった。しっかりした立派な女だと思っていた。気位は高いが、侯爵家としてはマイナスにはならない。子どもたちも立派に育て、結婚させて、孫にも恵まれた。

 それなのに、アベリーは修道院に行くことになり、嫁がせることも出来ない。嫁は一人は自害し、一人は嘘を付いて、女は全滅ではないかと思った。

 サイラ夫人のことはレイアと違って、夫に意見も言えない、正直情けない女だと思っていた。だが、きちんと為すべきこと、礼儀は弁えており、強請るような愚かな行動も取るはずがない。

 情けな女だったのはレイアの方だった。

 レイアは食事中も恨みがましく喋らず、部屋に籠っているそうだが、私の方こそ話すことはない。

 生家の伯爵家を継いでいる弟君に、話をした方がいいだろうかとすら思ったが、戻されても迷惑だろう。大人しくしているのならば、このままいるだけなら我慢するしかないのか。

 もう高位貴族に呼ばれることはないだろう。呼ばれたところで、嫁にたかっていたと分かれば、辱めを受けるだけだろう。

 だがこのままではトスカーとミエルの将来も、どうなるか分からない。何もしていない二人にせめて影響がないといい、レイアとメルベールには関わらないようにした方がいいのかもしれない。

 ユーリ、サイラ夫人がいた方が良かったのではないかと考えてしまう。

 アレクスだけは自業自得だと思うが、夫たちはどこかで防げたことを間違えてしまったのだろう。キリアムはアベリーの躾、メルベールの虚言癖に、オーランドは女性関係に、私は妻の恥知らずな行動に。

「一体、これからどうすればいいのだろうか…」

 でも当主としてやらなくてはならない。アベリーの寄宿学校と修道院も決めなくてはいけない。

 社交は最低限にして、領地が困らない程度にすればいい。いつか晴れやかな気持ちになれる日が来るとは思えないが、やるしかない。

 そう思っていたのに、私が外出中にレイアがオーランドのところに勝手に行ったという。

 強請ったことをまだ認められていなかったのか、オーランドが都合のいい証言をしてくれるはずがないだろう。考えて分からないのだろうか。

 オーランドに厳しく言って貰った方が目が覚めるかもしれないと、放って置くことにした。
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