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夫と弟1

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 キリアムとマトムはお金は用意が出来ても、返せる相手がいない。

 レイアは自分の恥ずかしい行為が認められず、まるで私こそが不幸かのように嘆いているが、夫にもキリアムにも相手にされない日々を送っている。

 マトムとキリアムとオーランドは、グラーフ伯爵では話にならないだろうと、ユーリとサイラについて、メルベールとユーリのの弟・ルオンに話を聞こうと、三人相手ではさすがに話し辛いだろうと、夫であるオーランドが呼び出し、後で話を聞かせて貰うことにした。

 オーラントとルオンは年が離れていることもあり、一緒に遊んだりするような関係はなく、幼なじみの弟、現在は妻の弟という、親戚でも密な間柄ではない。

 ルオンもオーランドには緊張感があるくらいだ。

「義母上はそちらでも見付かっていないのか」
「はい…執事から聞いただけですが、父も探しているようです。連絡もありません」
「そうか、こちらも探しているが見付かっていない。何と言って出て行ったんだ?メルベールには妻を守れなかったから、あの家にいる資格もいる理由もないと、言っていたそうだが?」
「ああ…はい、娘を見殺しにした罪は負わないといけないと言っていました」

 義母上ならそう思ったとしても仕方ないだろう。私が最後に会った時も、既に決意していたようだった。

「話を聞きたいのだが、ユーリを看取ったのは義母上なんだよな?」
「そう言っていました」
「聞いたのか?」
「はい、あの日、本邸が騒がしかったので、様子を見に行ったら、アベリーのことでユーリ、姉が謝罪に行くことになったと聞いて」
「止めなかったのか?義父上が行くべきだろう?」
「っえ、あの…それは…姉が行くと言ったのかと思って」
「そんなはずないだろう?わざわざ医院で働いていたユーリは、義父上によって早退させられているんだぞ?」

 オーランドが医院に挨拶に行くと、薬師長からあの日は義父上・アレクスが無理やり早退させたこと、その後に急死したことで、何かあったのではないかという目で見られ、私は留守にしていたのでというのが精一杯であった。

「え?知りませんでした」
「まあいい、それで?」
「それからは私は別邸に戻ったので、知りません。気付いたら、姉の葬儀の準備をしていて」
「それまで、気にもしなかったのか?」
「…あ、はい。私がいても何も出来ないだろうと思って」

 どうしてそのまま気にしないなどと言うことが出来るのか、自分に降りかかるのを恐れたのだろうと思った。

「それで?」
「姉が責任を取るために亡くなったこと、母が一人で看取ったと聞きました。父は侯爵家にアベリーを連れて説明に行くように言っていたそうですが、夫人が来るまで黙っていたそうです」
「はあ…」

 アレクスとルオンはよく似ている、ユーリに押し付けて、どうにかなると二人とも思っていたのだ。

「おかしいと思わなかったのか?ユーリが行くことに何の疑問もなかったのか?」
「それは…」

 おかしいことが普通であったとしても、ユーリが行く理由にはならない。

「今さら言っても仕方ないが、せめて止めていてくれたらと思ってしまう」
「でも、オーランド様は恋人がいるんでしょう?」
「それは違う!誤解だ!」
「でも葬儀の日に、侯爵夫人が埋葬は待って欲しいと言い出したんです。母上がユーリはオーランド様を待っていないと、愛人がいる癖に、今さら悲劇の夫のように振舞われても困ると、あなただったら愛人を孕ませた夫を待つかと言っていました」

 義母上はそんなことを言っていたのか、だが待ちたくもないと思って当然だろう。
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