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シュアト公爵家の茶会1
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レイアとメルベールは、シュアト公爵家の茶会に行くことになった。
「ユーリが可愛がって貰っていたそうなの」
「ユーリが?」
「あなたも知らなかったのね」
「ええ、聞いたこともありません。妹のクレア・マクシス様は医院で医師をされているから、その伝手なのかもしれないけど」
「そうだったのですか…」
一度も聞いたこともなかった、お茶会などに誘われていたのだろうか?言ってくれれば一緒に行ったのに、どうして言ってくれなかったのだろうか。
「ユーリに聞いたことはないの?よく伯爵家に行っていたじゃない」
「聞いて貰ってばかりだったので、ユーリの話はあまり…」
「そうだったの、まあユーリは大人しい子でしたからね。あなたも姉なのだから、ユーリのように親しくさせて貰えるように努力なさい」
「ユーリのように?」
「ええ、葬儀の際にお二人ともユーリに縋るように泣いてらしたの。とても親しくしていた証拠でしょう?アベリーのこともあるから、味方は多い方がいいわ」
「頑張ります」
アベリーのことを直接言って来る者がいないが、シュアト公爵家が味方になってくれれば、社交界でも息がしやすくなる。
ユーリが気に入られたのならば、私が気に入られるのも容易いだろうと、愛されて来たメルベールは思っていた。
シュアト公爵家に着くと、美しい庭に茶会の準備がされており、高位貴族が集まっていた。そこにはニーナとクレア姉妹もおり、二人は両親より世代が上で、レイアもメルベールも今まで関わりもなかった。
「お招きありがとうございます」「ありがとうございます」
「ようこそお越しくださいました」
「確かに顔はそっくりね」
「ええ」
「ユーリが親しくしていただいたようで、ありがとうございました」
「あなたにお礼を言われることではありませんわ、私たちがユーリと一緒にいたいからいただけよ」
メルベールは微笑む二人に、同じ顔のユーリを思い出しているのだと感じていた。
レイアとメルベールは席に案内され、茶会が始まった。レイアも緊張している様子で、いつものような頼りになる姿ではなかった。
「ニーナ様、この赤いお茶とても美味しいわ」
そう言うのはミオール・スカラット侯爵夫人。
「そうでしょう?ローズヒップとハイビスカスなんですって。ユーリがお勧めしてくれたものなのよ、少し酸っぱいけど、美肌効果があるんですって」
「まあ!いっぱい飲まなくちゃ」
そう言いながら、美しい所作でお茶を飲んでいるのは、アルビナート・コンクエッツ公爵夫人。
「アルビナートったら」
「でも私、この酸っぱさは好きですわ」
「ユーリもアルビナートが好きかもって言っていたの」
「さすがユーリね…」
「ローズヒップのお酒もあるそうですなんて言っていたから、取り寄せたのに、飲まずにいなくなってしまうなんて。今度、夜会で皆で偲んでいただきましょう。きっとユーリも喜ぶわ」
「ええ、ユーリはちょっと飲みにくいなんて話すと、効能を説明してくれて、飲みたい気分にさせてくれるのよね」
「慣れれば美味しいですよってよく言ってましたわね」
そう言うのはリナース・ガルツ侯爵夫人。
ここは錚々たる面々が集まっているのだ、おまけにご息女や嫁もいるため、皆朗らかに話しているが、初心者には敷居が高い。
レイアとメルベールに味の感想は聞いて来るが、それ以上の会話はない。
メルベールはユーリと同じ顔を持っているはずなのに、誰もそのことを話すこともない。ユーリのことを聞かれるだろうと思ってシミュレーションをしていたが、話し掛けれる状況ではない。
「ユーリもいつも茶会に誘われてたのですか」
声を上げたのはメルベールではなく、レイアだった。
「ユーリが可愛がって貰っていたそうなの」
「ユーリが?」
「あなたも知らなかったのね」
「ええ、聞いたこともありません。妹のクレア・マクシス様は医院で医師をされているから、その伝手なのかもしれないけど」
「そうだったのですか…」
一度も聞いたこともなかった、お茶会などに誘われていたのだろうか?言ってくれれば一緒に行ったのに、どうして言ってくれなかったのだろうか。
「ユーリに聞いたことはないの?よく伯爵家に行っていたじゃない」
「聞いて貰ってばかりだったので、ユーリの話はあまり…」
「そうだったの、まあユーリは大人しい子でしたからね。あなたも姉なのだから、ユーリのように親しくさせて貰えるように努力なさい」
「ユーリのように?」
「ええ、葬儀の際にお二人ともユーリに縋るように泣いてらしたの。とても親しくしていた証拠でしょう?アベリーのこともあるから、味方は多い方がいいわ」
「頑張ります」
アベリーのことを直接言って来る者がいないが、シュアト公爵家が味方になってくれれば、社交界でも息がしやすくなる。
ユーリが気に入られたのならば、私が気に入られるのも容易いだろうと、愛されて来たメルベールは思っていた。
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「お招きありがとうございます」「ありがとうございます」
「ようこそお越しくださいました」
「確かに顔はそっくりね」
「ええ」
「ユーリが親しくしていただいたようで、ありがとうございました」
「あなたにお礼を言われることではありませんわ、私たちがユーリと一緒にいたいからいただけよ」
メルベールは微笑む二人に、同じ顔のユーリを思い出しているのだと感じていた。
レイアとメルベールは席に案内され、茶会が始まった。レイアも緊張している様子で、いつものような頼りになる姿ではなかった。
「ニーナ様、この赤いお茶とても美味しいわ」
そう言うのはミオール・スカラット侯爵夫人。
「そうでしょう?ローズヒップとハイビスカスなんですって。ユーリがお勧めしてくれたものなのよ、少し酸っぱいけど、美肌効果があるんですって」
「まあ!いっぱい飲まなくちゃ」
そう言いながら、美しい所作でお茶を飲んでいるのは、アルビナート・コンクエッツ公爵夫人。
「アルビナートったら」
「でも私、この酸っぱさは好きですわ」
「ユーリもアルビナートが好きかもって言っていたの」
「さすがユーリね…」
「ローズヒップのお酒もあるそうですなんて言っていたから、取り寄せたのに、飲まずにいなくなってしまうなんて。今度、夜会で皆で偲んでいただきましょう。きっとユーリも喜ぶわ」
「ええ、ユーリはちょっと飲みにくいなんて話すと、効能を説明してくれて、飲みたい気分にさせてくれるのよね」
「慣れれば美味しいですよってよく言ってましたわね」
そう言うのはリナース・ガルツ侯爵夫人。
ここは錚々たる面々が集まっているのだ、おまけにご息女や嫁もいるため、皆朗らかに話しているが、初心者には敷居が高い。
レイアとメルベールに味の感想は聞いて来るが、それ以上の会話はない。
メルベールはユーリと同じ顔を持っているはずなのに、誰もそのことを話すこともない。ユーリのことを聞かれるだろうと思ってシミュレーションをしていたが、話し掛けれる状況ではない。
「ユーリもいつも茶会に誘われてたのですか」
声を上げたのはメルベールではなく、レイアだった。
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