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トスター侯爵家の謝罪
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「アベリーに会わせてください」
「ああ、アベリーが謝罪が出来るなら一緒に連れて行くが無理なら、我々四人で向かう。いいな?」
キリアムはメルベールを連れて、アベリーの部屋に向かったが、部屋の中から物が壊れるような音と、癇癪を起すような声が聞こえる。
「アベリー」
メルベールはユーリの衝撃で、足取りもおぼつかない。
「おとうさま!かえってきてたの?ねえ、おみやげは?」
アベリーはキリアムの周りをキョロキョロと見渡しており、出掛ける前と何も変わらず、何もなかったかのようにしか見えない。
「アベリー」
「そう、みんなひどいの。おそとにいっちゃいけないっていうの」
「アベリー、何をしたか分かっていないのか」
「ぬいぐるみのことぉ?」
「そうだ」
アベリーは一瞬、ばつが悪そうな顔はしたものの、すぐにツンと開き直った。
「くれなかったあのこががわるいのでしょう」
「人様の物を奪おうとしたのだぞ?」
「かわいかったから、アベリーがもらってあげようとおもったの。で、おみやげはどこ?アベリー、おかしもたべたい」
「逆だったらどうだ?アベリーも大事な物を奪われて、怪我をしたら嫌だろう?」
「おじいさまもおなじようなことをいっていたわ、でもアベリーはあげないもん。だからわからないもん」
祖父である侯爵も同じ話をしたが、アベリーには奪われるという経験がないため、どういうことが実感できなかった。
「アベリーのせいでその子は怪我をして、痛くて辛いんだ。そして、叔母様にも会えなくなってしまったんだよ」
「アベリーのせいじゃないもん」
「何てことを言うの!あなたのせいじゃない、ユーリを返して!!」
メルベールはアベリーを睨み付けて、大声で叫んだ。
「おかあさままで、ひどい…うあぁぁぁぁん」
アベリーは泣き出してしまうが、それにつられたようにメルベールもまた泣き出してしまい、場は混沌とした。
結局、アベリーは連れて行っても粗相をするだけだと置いて行き、四人で謝罪に向かうことになった。
「この度は娘が大変申し訳ございませんでした、お怪我はいかがでしょうか」
「そなたが父親か」
「はい、隣が母親のメルベールです」
メルベールは頭を下げたが、大公夫妻はメルベールをじっと見つめ、メルベールが気付くと、そっと目を逸らした。
「娘が申し訳ありませんでした」
憔悴したメルベールは謝罪が精一杯で、その後は侯爵が話し始めた。
「正直に申し上げます。アベリーは反省できておりません。ですので、今日も連れて来ませんでした、申し訳ございません」
「悪いと思っていないのか?」
「理解できていないという方が正しいかと思います」
「五歳だろう?」
「申し訳ございません。しっかり理解し、反省出来るまで外には出しません。そして十二歳になるまで、邸、もしくは領地で監視し、十二歳になり次第、修道院に入れます。そして、こちらが治療費と慰謝料でございます。どうかお納めください」
「…そうか」
グラーフ伯爵家とトスター侯爵家からの慰謝料、そして一人の女性の命。
兄は家族思いであるため、家族のこととなると過剰になりすぎてしまう。しかも今回はアンジュリーには一切非がない。
アンジュリーのことはすぐに報告をしたが、怒り狂って乗り込んで来る寸前であった。だが、今のところアンジュリーに後遺症がないこと、叔母ユーリ・クレナがすぐさま命を差し出したことにより、驚いたのもあるだろうが、怒りはかなり収まっていると聞いている。
おそらく監視を付けられることにはなるだろうが、知ったことではない。
「分かった、必ず反省をさせるように」
「承知しました」
「兄には国の問題にならぬように、私から話しておく。ただし、約束を違えるなよ?そして、ユーリ・クレナのおかげと一生忘れるでないぞ」
「は!承知しました」
侯爵が答えると、夫人とキリアムとメルベールは深く頭を下げた。
「ああ、アベリーが謝罪が出来るなら一緒に連れて行くが無理なら、我々四人で向かう。いいな?」
キリアムはメルベールを連れて、アベリーの部屋に向かったが、部屋の中から物が壊れるような音と、癇癪を起すような声が聞こえる。
「アベリー」
メルベールはユーリの衝撃で、足取りもおぼつかない。
「おとうさま!かえってきてたの?ねえ、おみやげは?」
アベリーはキリアムの周りをキョロキョロと見渡しており、出掛ける前と何も変わらず、何もなかったかのようにしか見えない。
「アベリー」
「そう、みんなひどいの。おそとにいっちゃいけないっていうの」
「アベリー、何をしたか分かっていないのか」
「ぬいぐるみのことぉ?」
「そうだ」
アベリーは一瞬、ばつが悪そうな顔はしたものの、すぐにツンと開き直った。
「くれなかったあのこががわるいのでしょう」
「人様の物を奪おうとしたのだぞ?」
「かわいかったから、アベリーがもらってあげようとおもったの。で、おみやげはどこ?アベリー、おかしもたべたい」
「逆だったらどうだ?アベリーも大事な物を奪われて、怪我をしたら嫌だろう?」
「おじいさまもおなじようなことをいっていたわ、でもアベリーはあげないもん。だからわからないもん」
祖父である侯爵も同じ話をしたが、アベリーには奪われるという経験がないため、どういうことが実感できなかった。
「アベリーのせいでその子は怪我をして、痛くて辛いんだ。そして、叔母様にも会えなくなってしまったんだよ」
「アベリーのせいじゃないもん」
「何てことを言うの!あなたのせいじゃない、ユーリを返して!!」
メルベールはアベリーを睨み付けて、大声で叫んだ。
「おかあさままで、ひどい…うあぁぁぁぁん」
アベリーは泣き出してしまうが、それにつられたようにメルベールもまた泣き出してしまい、場は混沌とした。
結局、アベリーは連れて行っても粗相をするだけだと置いて行き、四人で謝罪に向かうことになった。
「この度は娘が大変申し訳ございませんでした、お怪我はいかがでしょうか」
「そなたが父親か」
「はい、隣が母親のメルベールです」
メルベールは頭を下げたが、大公夫妻はメルベールをじっと見つめ、メルベールが気付くと、そっと目を逸らした。
「娘が申し訳ありませんでした」
憔悴したメルベールは謝罪が精一杯で、その後は侯爵が話し始めた。
「正直に申し上げます。アベリーは反省できておりません。ですので、今日も連れて来ませんでした、申し訳ございません」
「悪いと思っていないのか?」
「理解できていないという方が正しいかと思います」
「五歳だろう?」
「申し訳ございません。しっかり理解し、反省出来るまで外には出しません。そして十二歳になるまで、邸、もしくは領地で監視し、十二歳になり次第、修道院に入れます。そして、こちらが治療費と慰謝料でございます。どうかお納めください」
「…そうか」
グラーフ伯爵家とトスター侯爵家からの慰謝料、そして一人の女性の命。
兄は家族思いであるため、家族のこととなると過剰になりすぎてしまう。しかも今回はアンジュリーには一切非がない。
アンジュリーのことはすぐに報告をしたが、怒り狂って乗り込んで来る寸前であった。だが、今のところアンジュリーに後遺症がないこと、叔母ユーリ・クレナがすぐさま命を差し出したことにより、驚いたのもあるだろうが、怒りはかなり収まっていると聞いている。
おそらく監視を付けられることにはなるだろうが、知ったことではない。
「分かった、必ず反省をさせるように」
「承知しました」
「兄には国の問題にならぬように、私から話しておく。ただし、約束を違えるなよ?そして、ユーリ・クレナのおかげと一生忘れるでないぞ」
「は!承知しました」
侯爵が答えると、夫人とキリアムとメルベールは深く頭を下げた。
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