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私の決めた謝罪
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「何かあったの?」
「アベリーがお父様が勝手に連れだした茶会で、大公家のお孫さんを怪我させたの…具合が心配だわ」
「はあ?何てことしてくれたんだよ!茶会なんかに連れて行くからだろ。こっちまで責任取れとかないよな?侯爵家の問題だろう?」
連れて行ったのは間違いなくグラーフ伯爵の責任となる、父親が正しいとは思っていないが、血筋なのか傲慢なところが非常に似ている。
「あなたも自分のことしか考えていないのね」
「当たり前だろ」
「ユーリが謝罪に行くことになったの。何も関係ないのに」
「いいじゃないか、役立たずが役に立てるのだから」
「いい加減になさい!何か役立たずですか!あなた薬師になれるような頭脳があるの?ないでしょう!馬鹿言わないで!」
いつもルオンに対して、怒ったりはおろか、大きな声を出すこともない母・サイラの剣幕に驚いた。
「どうしたんだよ、母上だっていつも面倒そうにしかめっ面してたじゃないか」
「あれは不甲斐ない自分を嫌悪していたの!」
「そんなはず…」
「実力の世界だったらあなたは淘汰される存在よ!覚えておきなさい!」
ユーリが戻ると、母が待ち構えており、先触れの返事も来ており、父・アレクスの用意したお金を持って、馬車に乗り込んだ。アレクスもルオンも、見て見ぬ振りをして、出て来ることもない。
「ユーリ、ごめんなさい…侯爵家には知らせていないけど、さっきキリアムくんとメルベールには早文を出したわ」
「私が戻ったら侯爵家に知らせましょう。アベリーは侯爵家の孫なんだから」
「そうね、あちらも責任を取ることになるものね。ユーリ、本当に大丈夫?やっぱり私が」
「大丈夫です、お母様。私は私の責任を取って来ます」
久しぶりに見た気のするユーリの力強い笑顔であったが、サイラは酷くその笑顔に不安に駆られた。
ユーリはホテルに向かい、スタッフに部屋に通されると、一礼してから、脇目も振らずに、すぐさま深く深く土下座をした。
「ユーリ・クレナと申します。姪、アベリーが怪我をさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。お嬢様の容態はいかがでしょうか」
「姪!?」
「申し訳ございません、現在、姪の両親は領地に行っており、早文は出しましたが、すぐには戻って来れません」
「それで伯母が来たというのか」
「はい、父、いえ先程の一緒におりました祖父にお前が行って来いと、職場から連れ出されまして」
ユーリは父に言われたように、取り繕うつもりは一切なかった。卑怯で裏切りであろうが、ここで現状を全て暴露するつもりだった。
「グラーフ伯爵だったな」
「はい、姪と一緒にいたのはアレクス・グラーフ伯爵です。お嬢様はどのようなご様子でしょうか」
「一度は目覚めたが、頭が痛いと言って、寝ておる」
「大変、申し訳ございません!」
一度目覚めたとしても、後遺症がないとは言い切れない。頭部は特に何が起こるか分からない。
「あの娘の教育はどうなっている!」
「申し訳ございません、アレクス・グラーフが甘やかしたせいで、姉から聞く限りではありますが、家庭教師にも匙を投げられている様子で、本日はアレクス・グラーフが世話を任されていたのですが、連れだしたのです」
「連れ出した?」
「はい、姪はトスター侯爵家の嫡男夫妻の娘です」
「侯爵はどうした!」
「はい、知らせようとしたのですが、アレクス・グラーフが知らせるのは謝罪してからだと、私は父には逆らえませんので、謝罪してから報告をするつもりでした」
「あなたの家はどうなっているの?自分が連れ出したのに、母親でもない娘に行かせるなんて、尋常じゃないわ!」
大公妃様が甲高い声を張り上げたが、私もまともだと思って話してはいない。
「その通りです。母は私が行くと言ったのですが、父は私を指名しましたから、謝罪に参った次第でございます。大変、申し訳ございませんでした」
「あなたはいつもそのような役回りをしているの?」
「はい、私は姉のために役立たねばならない存在なのです…」
「アベリーがお父様が勝手に連れだした茶会で、大公家のお孫さんを怪我させたの…具合が心配だわ」
「はあ?何てことしてくれたんだよ!茶会なんかに連れて行くからだろ。こっちまで責任取れとかないよな?侯爵家の問題だろう?」
連れて行ったのは間違いなくグラーフ伯爵の責任となる、父親が正しいとは思っていないが、血筋なのか傲慢なところが非常に似ている。
「あなたも自分のことしか考えていないのね」
「当たり前だろ」
「ユーリが謝罪に行くことになったの。何も関係ないのに」
「いいじゃないか、役立たずが役に立てるのだから」
「いい加減になさい!何か役立たずですか!あなた薬師になれるような頭脳があるの?ないでしょう!馬鹿言わないで!」
いつもルオンに対して、怒ったりはおろか、大きな声を出すこともない母・サイラの剣幕に驚いた。
「どうしたんだよ、母上だっていつも面倒そうにしかめっ面してたじゃないか」
「あれは不甲斐ない自分を嫌悪していたの!」
「そんなはず…」
「実力の世界だったらあなたは淘汰される存在よ!覚えておきなさい!」
ユーリが戻ると、母が待ち構えており、先触れの返事も来ており、父・アレクスの用意したお金を持って、馬車に乗り込んだ。アレクスもルオンも、見て見ぬ振りをして、出て来ることもない。
「ユーリ、ごめんなさい…侯爵家には知らせていないけど、さっきキリアムくんとメルベールには早文を出したわ」
「私が戻ったら侯爵家に知らせましょう。アベリーは侯爵家の孫なんだから」
「そうね、あちらも責任を取ることになるものね。ユーリ、本当に大丈夫?やっぱり私が」
「大丈夫です、お母様。私は私の責任を取って来ます」
久しぶりに見た気のするユーリの力強い笑顔であったが、サイラは酷くその笑顔に不安に駆られた。
ユーリはホテルに向かい、スタッフに部屋に通されると、一礼してから、脇目も振らずに、すぐさま深く深く土下座をした。
「ユーリ・クレナと申します。姪、アベリーが怪我をさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。お嬢様の容態はいかがでしょうか」
「姪!?」
「申し訳ございません、現在、姪の両親は領地に行っており、早文は出しましたが、すぐには戻って来れません」
「それで伯母が来たというのか」
「はい、父、いえ先程の一緒におりました祖父にお前が行って来いと、職場から連れ出されまして」
ユーリは父に言われたように、取り繕うつもりは一切なかった。卑怯で裏切りであろうが、ここで現状を全て暴露するつもりだった。
「グラーフ伯爵だったな」
「はい、姪と一緒にいたのはアレクス・グラーフ伯爵です。お嬢様はどのようなご様子でしょうか」
「一度は目覚めたが、頭が痛いと言って、寝ておる」
「大変、申し訳ございません!」
一度目覚めたとしても、後遺症がないとは言い切れない。頭部は特に何が起こるか分からない。
「あの娘の教育はどうなっている!」
「申し訳ございません、アレクス・グラーフが甘やかしたせいで、姉から聞く限りではありますが、家庭教師にも匙を投げられている様子で、本日はアレクス・グラーフが世話を任されていたのですが、連れだしたのです」
「連れ出した?」
「はい、姪はトスター侯爵家の嫡男夫妻の娘です」
「侯爵はどうした!」
「はい、知らせようとしたのですが、アレクス・グラーフが知らせるのは謝罪してからだと、私は父には逆らえませんので、謝罪してから報告をするつもりでした」
「あなたの家はどうなっているの?自分が連れ出したのに、母親でもない娘に行かせるなんて、尋常じゃないわ!」
大公妃様が甲高い声を張り上げたが、私もまともだと思って話してはいない。
「その通りです。母は私が行くと言ったのですが、父は私を指名しましたから、謝罪に参った次第でございます。大変、申し訳ございませんでした」
「あなたはいつもそのような役回りをしているの?」
「はい、私は姉のために役立たねばならない存在なのです…」
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