悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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子爵夫妻2

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「ですが、フォンターナ家が出て行かなければ、罰されていたでしょう?」
「それは…」
「フォンターナ伯爵家が出て行くとはせずに、陛下と交渉をしていたら?陛下が止めたことは、父上もきいたことがあるでしょう?」

 バトワス王太子殿下が認めていたという手前、直接は言われたことはないが、ジェフとシャーリンの関係者はお前たちのせいでという目で見られており、良く思われていなかったことは確かである。

「伯爵の地位、商会…間違いなく、請求されていたでしょう」
「っ」

 カッシャーも、フォンターナ伯爵家に請求されていたら、騎士団長やアニバーサリーのことも出されて、どれくらいの慰謝料になったか分からないことに気付いた。

「でも、あちらはお金持ちだったと聞いたことがあるわ、要求されないのではないかしら」
「謝罪と誠意だよ、母上にはそんな気持ちもないのか?」
「私はそんなつもりで言ったわけではないわ」
「では、どういうつもりだ?お金持ちだからいいだろう、自分の娘と愛し合ってしまったんだからいいだろう?出て行ったのならいいだろうか?それが今、降りかかっているんだろうが!」
「っひ」

 マレーラは仰け反り、カッシャーの腕にしがみついた。

「ベリック、そのくらいにして置きなさい」
「では、父上が支払うのですね?」
「いや、それは…だな」

 払わなくても大丈夫ではないかと、持参金すら出し渋ったカッシャーが、どう考えても払う気があるとは思えなかった。

 マレーラも同じだ、甘い言葉を吐いて置いて、払ってあげようとという優しさは持っていない。

「国王陛下や、大公閣下はジェフ様のように考慮してくださるか分かりませんよ。ガルッツ子爵家は覚悟をしなくてはいけません」
「っな、シャーリンが払うのでは駄目なのか?」

 ジェフがこれからのガルッツ子爵家のことを考慮してくれたことで、シャーリンが払えばいいと、カッシャーは強く思うようになっていた。

 当主ではないが、親として責任を取る気すらない。

 だが、ガルッツ子爵家がシャーリンのせいで、自分の娘のせいで、爵位を剥奪されることは、許容は出来なかった。

「では、シャーリンが分割で払うということでいいのですね?」
「ああ…シャーリンが起こしたことだしな」

 カッシャーはうんうんと頷き、マレーラも仕方がないことだと言わんばかりに頷いているが、ベリックは危機感は持って置いて貰わなくてはならないと事実を告げることにした。

「ちなみにレオラッド大公閣下は、容赦のない方だそうです」
「…な」
「愛妻家だそうですので、妻を害した者たちには、さらに容赦はないでしょう」
「そ、それは、どういう意味だ?」
「当時、監督責任のあった親は責任を取る気がないと思われるということですよ」
「それは…だが、私たちの資金を渡したら、生活が出来ない」

 いくらお金がないと言っても、生活が出来るほどのお金は持っている。だが、余裕はないので、今のシャーリンのために出したくなかったのである。

「あなた…」

 マレーラはよく言ってくれましたわと言うかのように、嬉しそうに微笑んでいた。だが、そんなことで解決することではない。

「そうですか、ではそのように伝えます」
「いいのか…?」

 もっと責められると思っていたカッシャーは、呆気に取られた。

「どういう意味ですか?」
「払わなくてもいいのか?」
「それは私が決めることではありません。明日、王太子殿下に話して来ますので」
「あっ、ああ」

 ベリックは取り繕わずにバトワス王太子殿下に告げ、そのままレオラッド大公閣下に告げて貰って構わないと覚悟を決めた。

 マレーラは良かったと言わんばかりの顔をしていて、さらに気持ちを強くした。

 翌日、バトワス王太子殿下に会いに行き、ありのままを伝えた。
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