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再調査1
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「トーマス、そのような文献は?」
「そのような記述は…」
そう言いながら、トーマスは首を振った。
200年前であり、どこかに雨が多かったと記述があったとしても、強い雨だったのか、嵐だったのか、長雨だったのか、他の年と比べてどうだったのか、裏付けが取れない限り、研究者として判断は出来ない。
「前に夜会の際に、大雨で大変だったこともありましたとお話したと思いますが、今までもなかったわけではありませんから、重なっただけかもしれませんが」
「いいえ、もしかしたら前兆だった可能性はありますから」
「そうですね」
最後の恵みは言い過ぎだが、前兆であった可能性はある。
「何か追加で調査が必要だという部分があれば、おっしゃってください」
「ありがとうございます」
「今回は王子や王女にもちゃんと話をしておりますので、前回のようなことにならないと思いますので、調査をよろしくお願いいたします」
オリビアは既におらず、オークリーは留学中で不在、王太子殿下は来ていないことで、王女たちは大丈夫だろうと思っていたが、アッシュだけは前回留学中でおらず、念のために注意をしてあった。
「お心遣いありがとうございます」
アッシュもオークリーと同じように、メーリンの美しさに釘付けになったが、事前に注意を受けていたので、気にはなりながらも近付くことはしなかった。バトワスは念のために、前回同様にメーリン王女殿下の方に、監視を付けてもいた。
メーリンとトーマスたちは調査部に行き、持って来た資料を調査部の方に見て貰い、メーリンとトーマスたちは集められた資料を皆で読むことになった。
まずはバトワスの言っていた前兆ではないかという資料に目を通した。
「確かに王太子殿下のおっしゃる通り、多いですね」
「はい、その年だけ明らかに多いとは言い切れませんが、多いことは確かです」
他の年にも、強い雨、嵐、長雨などはあり、格段にということはないが、集中しているのは確かである。
「殿下は当時、学園に通ってらしたので、よく覚えておいででしょう。殿下の同じくらいの年代に話を聞くと、邸を出ただけでびしょ濡れになってしまい、外出が大変だったと証言しています」
「量が多かったということですね」
その後は、天候の方はトーマスに任せ、メーリンはバトワスが依頼したり、何があったのかの調査書にも目を通すことになった。
結局は天候の影響が多かったが、ある貴族が爵位を返上して、アジェル王国を出て行っていることが書かれていた。
理由はマクローズ伯爵令息から、娘が婚約を破棄されたこととある。
「このフォンターナ伯爵家というのは?」
「はい、マクローズ伯爵家の子息と、フォンターナ伯爵家の子女が婚約していたのですが、フォンターナ家が婚約を破棄されて、一家で出て行きました」
詳しく話せないと言ったところで、フォンターナ家のことは調べればすぐに分かることであるために、事実を述べることにした。
「まあ…」
ハビット王国でも婚約を解消、破棄などということはなくはないが、爵位を返上してということは、メーリンの記憶にある限りはない。
「他に出て行かれた貴族はいるのですか?」
「はい、ですがそちらもフォンターナ家と縁のある家でしたので、一緒に出て行ったということでしょう」
実はフォンターナ家と一緒に、ビアターナ男爵家、ソターナ男爵家というフォンターナ家の縁者も同時に爵位を返上している。
ビアターナ男爵家、ソターナ男爵家は領地を持たない男爵家であったために、重要視されておらず、フォンターナ家に仕える立場であったために、一緒に出て行ったと判断していた。
「今はどちらにいらっしゃるか、分かりますか?」
「いいえ」
「分からないのですか?」
可能ならその方々からも、話が聞けたらとメーリンは思っていた。
「そのような記述は…」
そう言いながら、トーマスは首を振った。
200年前であり、どこかに雨が多かったと記述があったとしても、強い雨だったのか、嵐だったのか、長雨だったのか、他の年と比べてどうだったのか、裏付けが取れない限り、研究者として判断は出来ない。
「前に夜会の際に、大雨で大変だったこともありましたとお話したと思いますが、今までもなかったわけではありませんから、重なっただけかもしれませんが」
「いいえ、もしかしたら前兆だった可能性はありますから」
「そうですね」
最後の恵みは言い過ぎだが、前兆であった可能性はある。
「何か追加で調査が必要だという部分があれば、おっしゃってください」
「ありがとうございます」
「今回は王子や王女にもちゃんと話をしておりますので、前回のようなことにならないと思いますので、調査をよろしくお願いいたします」
オリビアは既におらず、オークリーは留学中で不在、王太子殿下は来ていないことで、王女たちは大丈夫だろうと思っていたが、アッシュだけは前回留学中でおらず、念のために注意をしてあった。
「お心遣いありがとうございます」
アッシュもオークリーと同じように、メーリンの美しさに釘付けになったが、事前に注意を受けていたので、気にはなりながらも近付くことはしなかった。バトワスは念のために、前回同様にメーリン王女殿下の方に、監視を付けてもいた。
メーリンとトーマスたちは調査部に行き、持って来た資料を調査部の方に見て貰い、メーリンとトーマスたちは集められた資料を皆で読むことになった。
まずはバトワスの言っていた前兆ではないかという資料に目を通した。
「確かに王太子殿下のおっしゃる通り、多いですね」
「はい、その年だけ明らかに多いとは言い切れませんが、多いことは確かです」
他の年にも、強い雨、嵐、長雨などはあり、格段にということはないが、集中しているのは確かである。
「殿下は当時、学園に通ってらしたので、よく覚えておいででしょう。殿下の同じくらいの年代に話を聞くと、邸を出ただけでびしょ濡れになってしまい、外出が大変だったと証言しています」
「量が多かったということですね」
その後は、天候の方はトーマスに任せ、メーリンはバトワスが依頼したり、何があったのかの調査書にも目を通すことになった。
結局は天候の影響が多かったが、ある貴族が爵位を返上して、アジェル王国を出て行っていることが書かれていた。
理由はマクローズ伯爵令息から、娘が婚約を破棄されたこととある。
「このフォンターナ伯爵家というのは?」
「はい、マクローズ伯爵家の子息と、フォンターナ伯爵家の子女が婚約していたのですが、フォンターナ家が婚約を破棄されて、一家で出て行きました」
詳しく話せないと言ったところで、フォンターナ家のことは調べればすぐに分かることであるために、事実を述べることにした。
「まあ…」
ハビット王国でも婚約を解消、破棄などということはなくはないが、爵位を返上してということは、メーリンの記憶にある限りはない。
「他に出て行かれた貴族はいるのですか?」
「はい、ですがそちらもフォンターナ家と縁のある家でしたので、一緒に出て行ったということでしょう」
実はフォンターナ家と一緒に、ビアターナ男爵家、ソターナ男爵家というフォンターナ家の縁者も同時に爵位を返上している。
ビアターナ男爵家、ソターナ男爵家は領地を持たない男爵家であったために、重要視されておらず、フォンターナ家に仕える立場であったために、一緒に出て行ったと判断していた。
「今はどちらにいらっしゃるか、分かりますか?」
「いいえ」
「分からないのですか?」
可能ならその方々からも、話が聞けたらとメーリンは思っていた。
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