悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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象徴だった二人の離縁1

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 シャーリンは部屋で謹慎となり、ベリックは妻子に話をして、領地を買ってくれる者を探して、駆けずり回っていた。

 だが、どこも天候の影響で厳しい状況であり、買ってくれそうな貴族は見付からない。まだ資産がある貴族でも、わざわざベリック子爵領を買っても仕方ないというのが、現実であった。

 そして、ジェフから連絡があり、ベリックとジェフとで、マクローズ伯爵家で話し合いが行われることになった。

「改めまして、申し訳ございませんでした」
「ベリック殿のせいではない、慰謝料もシャーリン本人に課すつもりだ。一生を掛けて、支払って貰う」
「ありがとうございます。ですが、僅かではありますが、せめてこちらだけはお納めください」

 両親やベリックの持ち物を売って、作ったお金であった。

「分かった、生活は出来るのだな?」
「はい、大変心苦しいのですが…」
「いや、そちらのご家族が生活が出来ないとなるのは望んでいない」
「ありがとうございます」

 ベリックはジェフの優しさに、ただただ感謝した。

「だが、もう一つ話さなくてはならないことがある」
「はい、何でしょうか」
「念のため、親子鑑定をして貰った」

 その言葉にベリックは、体の中心が酷く冷えたような気持ちになった。

「そんな…ジェフ様の子ではなかった子がいるのですか」
「ああ、三女のアイリと、四女のマイリが私の子ではなかった」
「っな」

 ジェフとシャーリンの子どもは、生まれ順は長男、長女、次女、次男、三女、三男、四女、四男となっている。ジェフの子どもではなかった、三女・アイリは12歳、四女・マイリは6歳。

 アンドリュー様より数は少ないとは言えるが、12年以上前からシャーリンは不貞行為を犯していたことが分かったのである。

「私も驚いた、まさか娘ではなかったなんて…これが鑑定書だ」

 八人の鑑定書が並べられたが、アイリとマイリには否とあった。

「申し訳ございません!」
「私も子どもたちのことを考えると心苦しいが、籍は外させて貰うしかない」
「はい…これまでの養育費は、こちらでお支払いします」
「それもシャーリンに払わせよう。でないと、性格上、頼りきりになってしまうだろう。弁護士も呼んである」
「はい…」

 待たせていた弁護士を呼び、ジェフとシャーリンの離縁と、アイリとマイリの籍を外し、これまでの一般的な養育費と慰謝料はシャーリンが支払う手続きを取った。

「出産するまでは待つが、出産後からは支払いをして貰う」
「はい、必ず働かせて支払わせます。アイリとマイリには話をされたのでしょうか?」
「既に伝えてある…連れて帰って貰えるか?」

 結果が出た翌日には、アイリとマイリには誤魔化してどうにかなる年ではないために、話をしている。アイリは絶望し、マイリは泣き喚いた。

 酷いことを言うようだが、誰かが自分の子でないのなら、問題を起こしたミミリーが自分の子ではなければいいのにとすら思っていた。

 おそらく他の子どもたちも、そう思っていたように思う。

 シャーリンとは別れの挨拶をしないまま、邸を去らせてしまったので、子どもたちには言いたいことや、会いたければ会いに行けばいいと話したが、皆、今は顔も見たくないと言い切った。

「承知しました」

 きょうだいに付き添われながら、目を腫らしたアイリとマイリがやって来た。

「アイリ、マイリ、お前たちは悪くない。しっかり生きて行くんだよ」

 二人は泣き出し、ジェフは二人を抱きしめた。

「行こうか」

 ベリックが声を掛けても、二人は手を繋ぎ、何も答えなかったが、ゆっくりと歩き出して、馬車に乗り込んだ。

 馬車の中でもアイリとマイリは下を向いたまま何も話さず、ベリックが連れて邸に入ると、またも両親が待ち構えており、驚いた顔をしていた。
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