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次期侯爵の離縁6
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ディビットとディアーナとブリジットが父親について聞いても、ミカエラーは口ごもって答えないという。
シャルロットとスチュアートも、知らないことは事実であるため、知らないと答えるしかなく、弟と妹は知る権利があるだろう。女性同士であるシャルロットが弟と妹に代わって、聞くことにした。
「お母様、父親について話してあげてください」
「でも…」
部屋に閉じこもっているというミカエラーに、無理矢理押しかけ、座り込んだ。
「知りたいに決まっているではありませんか、本当に分からないのですか?心当たりがあるのではありませんか?」
「心当たりは…あるけど…絶対では…ないの」
「どういうことですか?」
シャルロットは口ごもり、目を合わせようとしない母に、苛立った。
「よく知らない違う相手と、そのようなことをしていたのですか?」
「…」
沈黙は肯定なのだろうと、弟と妹たちに何と言えばいいのか。
なんて無責任で、なんて恥ずかしい母親なのだろうかと、顔を顰めたくなった。
おそらく母にとっては、私もスチュアートも、たまたま父の子だったのだろう。私は運が良かっただけで、父親が分からないということも、あり得たのだろう。
シャルロットとスチュアートも、オリビアのことでズニーライ侯爵家の人間だというのは、これからマイナスになることになる。
弟たちとどちらが良かったかなど、今はまだ分からない。だが、父親が分かっているという点だけは、まだ良かったというべきだろう。
「弟と妹にお母様がきちんと説明してください、母親なんですから」
「どうして私ばかり責めるのよ…」
「当たり前ではありませんか、ずっとお父様を裏切っていたのでしょう?罪もない弟や妹たちはずっと苦しむのですよ?」
「アンドリュー様が悪いのよ…アンドリュー様が相手にしてくれていたら、行かなかったわ」
ミカエラーは他の夫人に、求めて来ない夫が悪いのだからと吹き込まれて、罪悪感などすっかりなくなっており、離縁されて実家に戻されて、怖くなっていった。
だから、子どもたちにも父親のことを話すことが出来ないというよりは、どう話しても、自分がとても酷い人間のようで、塞ぎ込んでいた。
両親にも男娼ではなく、貴族令息なんだろうと攻め立てられたが、妊娠した時に誰と関係を持っていたかまでは覚えておらず、どうしたらいいのか分からなかった。
「ふざけないでください!ふしだらなことをしていたのはお母様でしょう!」
「だから、アンドリュー様が…」
「嫌なら行かなければ良かったでしょう!行っていたのは、お母様じゃない!」
「それは…」
抜けたらバラすと脅されていたわけでもない、ただもし何かあっても道連れにはしないというのが、暗黙の了解であった。
これまでも何人かの夫人は来なくなったが、他の夫人が増えただけで、同じような気持を抱えた夫人は多かった。
だからこそ、罪悪感もなく出掛けていた。
「母親ならしっかりしてください」
「そんな…」
「父親が分からない以上、あの子たちにはお母様にしかいないのですよ?」
「アンドリュー様が、いれば…」
「弟と妹たちには可哀想ですが、お父様はもう関係がありません。関係を持つ理由がないのです」
シャルロットも言いたくはないが、お父様は父親ではなかったのだから、どうすることも出来ない。
わざわざ子どもではなかったと公表はしていないが、聞かれたら答えるしかなく、ズニーライ侯爵家からは既に外れている。
「あっ」
「お父様を裏切って、不貞をして、托卵をして、一体何がしたかったのですか?皆を裏切ったようなものです」
「あああ…私は、何てことを…」
今更、震えながら嘆き始めたミカエラーにシャルロットは、反省してくれることを願って、部屋を出た。
嘆いても変わらないことに、ミカエラーがいつ気付くのか。
シャルロットとスチュアートも、知らないことは事実であるため、知らないと答えるしかなく、弟と妹は知る権利があるだろう。女性同士であるシャルロットが弟と妹に代わって、聞くことにした。
「お母様、父親について話してあげてください」
「でも…」
部屋に閉じこもっているというミカエラーに、無理矢理押しかけ、座り込んだ。
「知りたいに決まっているではありませんか、本当に分からないのですか?心当たりがあるのではありませんか?」
「心当たりは…あるけど…絶対では…ないの」
「どういうことですか?」
シャルロットは口ごもり、目を合わせようとしない母に、苛立った。
「よく知らない違う相手と、そのようなことをしていたのですか?」
「…」
沈黙は肯定なのだろうと、弟と妹たちに何と言えばいいのか。
なんて無責任で、なんて恥ずかしい母親なのだろうかと、顔を顰めたくなった。
おそらく母にとっては、私もスチュアートも、たまたま父の子だったのだろう。私は運が良かっただけで、父親が分からないということも、あり得たのだろう。
シャルロットとスチュアートも、オリビアのことでズニーライ侯爵家の人間だというのは、これからマイナスになることになる。
弟たちとどちらが良かったかなど、今はまだ分からない。だが、父親が分かっているという点だけは、まだ良かったというべきだろう。
「弟と妹にお母様がきちんと説明してください、母親なんですから」
「どうして私ばかり責めるのよ…」
「当たり前ではありませんか、ずっとお父様を裏切っていたのでしょう?罪もない弟や妹たちはずっと苦しむのですよ?」
「アンドリュー様が悪いのよ…アンドリュー様が相手にしてくれていたら、行かなかったわ」
ミカエラーは他の夫人に、求めて来ない夫が悪いのだからと吹き込まれて、罪悪感などすっかりなくなっており、離縁されて実家に戻されて、怖くなっていった。
だから、子どもたちにも父親のことを話すことが出来ないというよりは、どう話しても、自分がとても酷い人間のようで、塞ぎ込んでいた。
両親にも男娼ではなく、貴族令息なんだろうと攻め立てられたが、妊娠した時に誰と関係を持っていたかまでは覚えておらず、どうしたらいいのか分からなかった。
「ふざけないでください!ふしだらなことをしていたのはお母様でしょう!」
「だから、アンドリュー様が…」
「嫌なら行かなければ良かったでしょう!行っていたのは、お母様じゃない!」
「それは…」
抜けたらバラすと脅されていたわけでもない、ただもし何かあっても道連れにはしないというのが、暗黙の了解であった。
これまでも何人かの夫人は来なくなったが、他の夫人が増えただけで、同じような気持を抱えた夫人は多かった。
だからこそ、罪悪感もなく出掛けていた。
「母親ならしっかりしてください」
「そんな…」
「父親が分からない以上、あの子たちにはお母様にしかいないのですよ?」
「アンドリュー様が、いれば…」
「弟と妹たちには可哀想ですが、お父様はもう関係がありません。関係を持つ理由がないのです」
シャルロットも言いたくはないが、お父様は父親ではなかったのだから、どうすることも出来ない。
わざわざ子どもではなかったと公表はしていないが、聞かれたら答えるしかなく、ズニーライ侯爵家からは既に外れている。
「あっ」
「お父様を裏切って、不貞をして、托卵をして、一体何がしたかったのですか?皆を裏切ったようなものです」
「あああ…私は、何てことを…」
今更、震えながら嘆き始めたミカエラーにシャルロットは、反省してくれることを願って、部屋を出た。
嘆いても変わらないことに、ミカエラーがいつ気付くのか。
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