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真相
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カインドールは宿屋にミルシュアを迎えに行かせて、夫妻となら会ってもいいと承諾を得て、三人で会うことになった。
「その目は私を信じたんですね」
「嘘だったの!!」
「嘘じゃないわ、言ったでしょう?過程はどうであれ、事実は一つだと」
「私は殺していない」
「いいえ、リズファンを殺したのは間違いなくあなたですよ。私はこの目で見ていたんですから。分かりますか?最愛の妹を殺す瞬間を見た気持ちが!」
「私は会ったのことが無いんだ。だから殺せるはずがない」
ラズリーを見守っていた時に何度か遠くからではあるが、リズファンの風貌見ている。そのような者には会っていない。
「えっ?」
「邸に来た時に会ってますよ。さすがに会わないと殺せないでしょう?」
「あの日、会った中に妹君はいなかった。会ったのは伯爵と、愛人と、メイド、後は護衛くらいだったはずだ」
「…そんなっ」
ラズリーは横にいる夫の顔を見ることは出来なかった。
「夫人は気付いたようですよ」
「あの中にいたというのか」
「ええ、リズファンと私は両親への抵抗として髪を短く切っており、騎士のような恰好しておりましたからね。外では鬘を被っておりましたが」
「そうとしても殺すなどと」
「あなたは覚えていない些細なことだったのでしょう、払った程度だったのかもしれませんね。でもその衝撃でリズは頭に損傷を負い、致命傷となった。あなたが殺したことだけは事実。揺るがないのです」
不運な事故とは呼べない、自らの力をリズファンに向けたのは事実だ。
「…そんな、すま、ない、なんてことを」
「全部知っているのかと思っていましたよ?だってリズに触るな、邪魔だって仰って払い除けたじゃないですか」
「違う!」
娘だと分かっていればなんて言うことは出来ない、確かに何者だと言う者を何人か払い除けた、どこかにぶつかった者もいた。気にもしていなかった。あれがリズファンではなかったとしても、私は人を殺していたのだ。
「言いましたよ!自分の子ではない夫人の子を始末したかったと言えばいいじゃないですか。どうして私を殺してくれないのです?甥の番だから?」
「そんなことはしない」
「私はあなたたちに事実を告げるために、甥の番になったのかもしれませんね」
「違う、サリスは君を愛しているんだ…本当だ」
ああ、何てことだ。私のせいでなんて、詫びようがない。
「番だから愛しているんでしょう?番という箱に入った私だから欲しい。番だから助けたい、彼も何度もそんなことを言っていましたね。あなたも言ったんでしょう?あんな家は君の居場所ではない、あんな家にいてはならない、私と一緒になろうと、リズを犠牲にして!よく笑えたものだわ」
「…謝って済むことではないのは分かった。君は我々に何を望む?」
「罰を望むわけではありません。証拠は私が目撃したことだけですからね、王族には敵わないでしょう。お子さんもいらっしゃるようですし、子に罪はないはずですから。これから先もあなた方は長いのですから、言い訳なり、懺悔でもすればよろしいのではありませんか」
「それは、何もなしというわけにはいかない」
死んでくれと言われると思っていた。私だけなら、それでもいいとすら思った。
「その目は私を信じたんですね」
「嘘だったの!!」
「嘘じゃないわ、言ったでしょう?過程はどうであれ、事実は一つだと」
「私は殺していない」
「いいえ、リズファンを殺したのは間違いなくあなたですよ。私はこの目で見ていたんですから。分かりますか?最愛の妹を殺す瞬間を見た気持ちが!」
「私は会ったのことが無いんだ。だから殺せるはずがない」
ラズリーを見守っていた時に何度か遠くからではあるが、リズファンの風貌見ている。そのような者には会っていない。
「えっ?」
「邸に来た時に会ってますよ。さすがに会わないと殺せないでしょう?」
「あの日、会った中に妹君はいなかった。会ったのは伯爵と、愛人と、メイド、後は護衛くらいだったはずだ」
「…そんなっ」
ラズリーは横にいる夫の顔を見ることは出来なかった。
「夫人は気付いたようですよ」
「あの中にいたというのか」
「ええ、リズファンと私は両親への抵抗として髪を短く切っており、騎士のような恰好しておりましたからね。外では鬘を被っておりましたが」
「そうとしても殺すなどと」
「あなたは覚えていない些細なことだったのでしょう、払った程度だったのかもしれませんね。でもその衝撃でリズは頭に損傷を負い、致命傷となった。あなたが殺したことだけは事実。揺るがないのです」
不運な事故とは呼べない、自らの力をリズファンに向けたのは事実だ。
「…そんな、すま、ない、なんてことを」
「全部知っているのかと思っていましたよ?だってリズに触るな、邪魔だって仰って払い除けたじゃないですか」
「違う!」
娘だと分かっていればなんて言うことは出来ない、確かに何者だと言う者を何人か払い除けた、どこかにぶつかった者もいた。気にもしていなかった。あれがリズファンではなかったとしても、私は人を殺していたのだ。
「言いましたよ!自分の子ではない夫人の子を始末したかったと言えばいいじゃないですか。どうして私を殺してくれないのです?甥の番だから?」
「そんなことはしない」
「私はあなたたちに事実を告げるために、甥の番になったのかもしれませんね」
「違う、サリスは君を愛しているんだ…本当だ」
ああ、何てことだ。私のせいでなんて、詫びようがない。
「番だから愛しているんでしょう?番という箱に入った私だから欲しい。番だから助けたい、彼も何度もそんなことを言っていましたね。あなたも言ったんでしょう?あんな家は君の居場所ではない、あんな家にいてはならない、私と一緒になろうと、リズを犠牲にして!よく笑えたものだわ」
「…謝って済むことではないのは分かった。君は我々に何を望む?」
「罰を望むわけではありません。証拠は私が目撃したことだけですからね、王族には敵わないでしょう。お子さんもいらっしゃるようですし、子に罪はないはずですから。これから先もあなた方は長いのですから、言い訳なり、懺悔でもすればよろしいのではありませんか」
「それは、何もなしというわけにはいかない」
死んでくれと言われると思っていた。私だけなら、それでもいいとすら思った。
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