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夜会(表)
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その後はリラ・ブラインは表立っては意見をばら撒くのは止めたようで、影響を受けた者も、婚約解消されたという者を見て、現実に引き戻されたようだ。以降、学園に苦情は入っていない。それでもリラの気持ち悪さは漂い続けた。
そして、今年最後となる王家の夜会の日が迫って来た。シュアリーとルカスは夜会に参加するアウラージュと話をしようと決めていた。王太子教育を始めて、そろそろ1年が経過する。
「絶対にお姉様と話をして、出来なくても約束だけでも取り付けましょう」
「そうですね、後日となっても構いません」
「そういえば、あのリラという伯爵令嬢も来るの?」
「どうでしょうか、伯爵令嬢ですから来るのではないでしょうか?何かあるのですか、最近は大人しくしているようですよ」
「この前しっかり見なかったから。お姉様に瞳が似ていると言われていたそうよ、ちっとも似ていないのに」
「そのようなことが?」
ルカスもさすがに元婚約者のアウラージュの瞳の色は、他と似ているような瞳でないことは知っている。
「ええ、メイドが言っていたわ。王女と比べるなんて図々しいわよね」
「彼女はブラウンではないでしょうか?」
「よく知っているのね」
「ですから、話をすることがあったくらいです」
「ふーん」
当日、アウラージュは王位継承権を放棄したので、王族としての参加しないとし、一般に混ざって参加となった。入場は王太子であるシュアリーと、婚約者であるルカス・バートラ。そして、国王陛下。
アウラージュの周りはバリケードのように公爵、侯爵家の布陣で囲まれている。ちゃっかりお忍びブルーノもいる。おかげでシュアリーはアウラージュよりも、ブルーノがいることに驚きながらも目を輝かせ、その様子をルカスに悟られていた。
表彰などがあり、歓談になってもアウラージュの周りには近づけない。
ルカスは話をしながらも、ブルーノを目で追うシュアリーに嫌気が差し、別の方を見るとリオン・ホワイトアが今日も凛々しく振舞っていた。隙のない、気品あふれる姿に、無意識に溜息を吐いていた。
「王太子殿下、バートラ公爵令息様、ごきげんよう」
現れたのは気合の入った派手な装いの噂のリラ・ブライン。いつもなら同志といることが多いが、周りを見ても、一人のようだ。
「っあ、あの時の」
「憶えてらっしゃってくれたのですね、光栄です。改めましてリラ・ブラインと申します」
シュアリーは訝しげな顔で、じっとリラの瞳をじっと覗き込んだ。
「やっぱり似ていないわね。ルカス様の言う通り、ブラウンだわ」
「えっ、何の話でしょうか」
「瞳の色よ」
「ああ、このヘーゼルの瞳ですね。よく褒められるのです」
「ヘーゼルではないわ、ヘーゼルはお姉様のような瞳のことをいうのよ?色だって濃いし、グリーンがないじゃない?あなたはブラウンよ」
アウラージュは外側は極めて薄いブラウンに内側のグリーンで、透き通るような瞳で、コンクラート王国の一般的なヘーゼルとは異なるが、シュアリーにとってのヘーゼルの瞳はアウラージュである。
「ヘーゼルです」
「私もヘーゼルではないと思うよ」
「ルカス様まで、これはヘーゼルです。愛する人が褒めてくれたのです、ですからヘーゼルです」
いつもは余裕のある雰囲気なのが、どうもリラの様子がおかしい。
「ブライン伯爵令嬢?」
「それより、お兄様のジルバード様はいらしてないのですか」
「兄?兄と知り合いだったのですか」
「ええ、ああ!あちらにいらっしゃいます、参りましょう」
「え?」
リラは返事も聞かず、早足に婚約者のララと談笑しているジルバードの元へ行ってしまい、シュアリーとルカスはぽかんとしていた。
「ジルバード様、お久しぶりです」
「どなたでしょうか?」
「リラ・ブラインです。ヘーゼルの瞳を褒めてくださった、憶えてますでしょう?」
「会った記憶もないが、人違いではないですか」
「何を仰っているのです?このヘーゼルの瞳ですよ、ちょっとジルバード様に触らないで、離れなさいよ」
ジルバードの腕を持っていたララを叩こうとしたが、騎士に掴まれて、跪かされ、口を覆われた。
「不届き者、下がりなさい。ララ、怪我はありませんね?」
「はい、殿下」
響いたのは圧倒的な声の持ち主、アウラージュであった。
「牢に入れて、伯爵家に連絡を入れるように」
「はっ!」
ジルバードもララも怖さはあったものの、あまりに一瞬のことで驚き、一体何だったんだと思うしかなかった。
「何者ですか、あれは」
「詳しくは後で説明します。シュアリー、場を戻しなさい」
「えっ、どうやって」
アウラージュはここで指導する時間はないと、目立つことは避けたかったが、思った以上に興味を引いてしまったため、不本意ではあるが、声を響かせた。
「皆様、お騒がせしました!酔っぱらいの不届き者は負い出しましたので、歓談をお続けください。もうそろそろ、陛下お勧めのとっておきの白ワインが振舞われますので、是非ご賞味くださいませ」
おぉという声と共に、再び人々の声でざわつき始めた。
そして、今年最後となる王家の夜会の日が迫って来た。シュアリーとルカスは夜会に参加するアウラージュと話をしようと決めていた。王太子教育を始めて、そろそろ1年が経過する。
「絶対にお姉様と話をして、出来なくても約束だけでも取り付けましょう」
「そうですね、後日となっても構いません」
「そういえば、あのリラという伯爵令嬢も来るの?」
「どうでしょうか、伯爵令嬢ですから来るのではないでしょうか?何かあるのですか、最近は大人しくしているようですよ」
「この前しっかり見なかったから。お姉様に瞳が似ていると言われていたそうよ、ちっとも似ていないのに」
「そのようなことが?」
ルカスもさすがに元婚約者のアウラージュの瞳の色は、他と似ているような瞳でないことは知っている。
「ええ、メイドが言っていたわ。王女と比べるなんて図々しいわよね」
「彼女はブラウンではないでしょうか?」
「よく知っているのね」
「ですから、話をすることがあったくらいです」
「ふーん」
当日、アウラージュは王位継承権を放棄したので、王族としての参加しないとし、一般に混ざって参加となった。入場は王太子であるシュアリーと、婚約者であるルカス・バートラ。そして、国王陛下。
アウラージュの周りはバリケードのように公爵、侯爵家の布陣で囲まれている。ちゃっかりお忍びブルーノもいる。おかげでシュアリーはアウラージュよりも、ブルーノがいることに驚きながらも目を輝かせ、その様子をルカスに悟られていた。
表彰などがあり、歓談になってもアウラージュの周りには近づけない。
ルカスは話をしながらも、ブルーノを目で追うシュアリーに嫌気が差し、別の方を見るとリオン・ホワイトアが今日も凛々しく振舞っていた。隙のない、気品あふれる姿に、無意識に溜息を吐いていた。
「王太子殿下、バートラ公爵令息様、ごきげんよう」
現れたのは気合の入った派手な装いの噂のリラ・ブライン。いつもなら同志といることが多いが、周りを見ても、一人のようだ。
「っあ、あの時の」
「憶えてらっしゃってくれたのですね、光栄です。改めましてリラ・ブラインと申します」
シュアリーは訝しげな顔で、じっとリラの瞳をじっと覗き込んだ。
「やっぱり似ていないわね。ルカス様の言う通り、ブラウンだわ」
「えっ、何の話でしょうか」
「瞳の色よ」
「ああ、このヘーゼルの瞳ですね。よく褒められるのです」
「ヘーゼルではないわ、ヘーゼルはお姉様のような瞳のことをいうのよ?色だって濃いし、グリーンがないじゃない?あなたはブラウンよ」
アウラージュは外側は極めて薄いブラウンに内側のグリーンで、透き通るような瞳で、コンクラート王国の一般的なヘーゼルとは異なるが、シュアリーにとってのヘーゼルの瞳はアウラージュである。
「ヘーゼルです」
「私もヘーゼルではないと思うよ」
「ルカス様まで、これはヘーゼルです。愛する人が褒めてくれたのです、ですからヘーゼルです」
いつもは余裕のある雰囲気なのが、どうもリラの様子がおかしい。
「ブライン伯爵令嬢?」
「それより、お兄様のジルバード様はいらしてないのですか」
「兄?兄と知り合いだったのですか」
「ええ、ああ!あちらにいらっしゃいます、参りましょう」
「え?」
リラは返事も聞かず、早足に婚約者のララと談笑しているジルバードの元へ行ってしまい、シュアリーとルカスはぽかんとしていた。
「ジルバード様、お久しぶりです」
「どなたでしょうか?」
「リラ・ブラインです。ヘーゼルの瞳を褒めてくださった、憶えてますでしょう?」
「会った記憶もないが、人違いではないですか」
「何を仰っているのです?このヘーゼルの瞳ですよ、ちょっとジルバード様に触らないで、離れなさいよ」
ジルバードの腕を持っていたララを叩こうとしたが、騎士に掴まれて、跪かされ、口を覆われた。
「不届き者、下がりなさい。ララ、怪我はありませんね?」
「はい、殿下」
響いたのは圧倒的な声の持ち主、アウラージュであった。
「牢に入れて、伯爵家に連絡を入れるように」
「はっ!」
ジルバードもララも怖さはあったものの、あまりに一瞬のことで驚き、一体何だったんだと思うしかなかった。
「何者ですか、あれは」
「詳しくは後で説明します。シュアリー、場を戻しなさい」
「えっ、どうやって」
アウラージュはここで指導する時間はないと、目立つことは避けたかったが、思った以上に興味を引いてしまったため、不本意ではあるが、声を響かせた。
「皆様、お騒がせしました!酔っぱらいの不届き者は負い出しましたので、歓談をお続けください。もうそろそろ、陛下お勧めのとっておきの白ワインが振舞われますので、是非ご賞味くださいませ」
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