【完結】あなたにすべて差し上げます

野村にれ

文字の大きさ
上 下
18 / 38

影響

しおりを挟む
 リラ・ブラインたちのパーティーは健全ではあったが、自由への気持ちを高めるようなパーティーだった。高位貴族は来なかったが、招待客や、お友達に誘われて、興味本位で来た者もいたが、多くの人が集まったそうだ。

 熱く議論を交わす中で、今まで親に言われた通りに生きて来た者、自由など考えたこともなかった者で、共感する者も現れるようになったいう。

「概ね予想通りね」
「徐々に侵食していくための布石だろうな」
「何か起こすかしら?」
「感化されて自由を提案した者もいるらしいが、それならば解消しましょうと言われた者もいる」
「でしょうね、自由だろうが何だろうが、それが正論だわ。学園で起こせば、学園長がようやく罰することが出来るでしょうしね」

 案の定というべきか、感化された令息が婚約者の令嬢ではない、別の令嬢とお友達だと言って、親しくし始めて、令嬢の家で問題となり、婚約を解消しようということになった。令息の家では令息から話を聞き、学園でそのような風潮があると知り、苦情が入ることとなった。

 ついにリラ・ブラインは学園長と担任教師に呼び出されることとなった。

「君の言動で、婚約に影響を与えるようになっている。責任を取れるか?」
「それはご自身が感じたことなのではありませんか、それなのに私が責任を取るのですか?理不尽ではありませんか」
「君が言い出したことだろう?」
「私は私の考えを伝えたまでで、強要したわけではありません。もし共感したとしても、本人の責任ではないでしょうか」
「そうか、だが影響を与えたのは事実だろう?」
「影響だなんて、私にそんな影響力はありません」

 リラはまるで謙遜するかのように首を振りながら、私には力などないと表現しているのだろうが、パフォーマンスにしか見えない。

「ご両親を呼んで、今後について話し合うことになるが、それでいいか」
「両親は関係ありません、あの人たちは私を利用できる物くらいにしか思っておりません。ですから、私は私らしく、意見を言っただけです」

 学園としてはあまりに重大な事案ではない場合は、一度目は本人に注意、そして二度目は保護者と面談となっている。苦情が入ればそこで終わりとなる。

「次に同じようなことが起きれば、話し合いとなることを理解しなさい」
「それは思考への横暴です」
「そう思うのならば、我が学園には合わないということだろう」
「学園長、それでは何も変わりません」
「変えるつもりはない」

 幾度か王族が巻き込まれて、現在は学園に通えなくなったことで、さらに高位貴族も通えなくなれば、もはや学園の意味はない。王侯貴族の責任は生まれながらに重いということを変えてはならない、自覚していない者が増えては困る、自由にしたいのならそのような校風の学校に通えばいいのだ。

 ブライン伯爵から周りと関わることでいい影響を受けて欲しいと聞いていたが、自らが変えようとするなどとは思わなかった。

「学園は変わるべきなのです!皆、浮かない顔、疲れた顔をしていますよ。学園長なのに気付いていないのですか」
「ここは勉強をする場でもあるが、小さな社交界。意識を持つための場なのだ。風紀を乱す場ではない」
「乱してなどおりません」

 明らかに率先して乱す行為をしている者が、どうして否定できるのだろうか。

「では、なぜ婚約を解消する者が出て来ている?」
「それは、お互いの相性が悪かっただけではないですか。だって、想い合う者ならばそんなことにはならないでしょう?」
「君の意見を聞かなければ、2人は幸せな夫婦になれたかもしれないとしてもか?」
「そんなの、幸せになれるはずないわ」
「君は未来でも視えるというのか」
「そのくらい分かります。想い合う2人なら、びくともしないはずです。壊れるべくして壊れたのです」
「何も言って無駄だな。二度目はない、肝に銘じなさい」

 学園長はリラ・ブラインに気持ちの悪さを感じた。担任教師も同意見であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

処理中です...