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限界
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「もう王太子をやめたい…王太子になってから辛いことばかりだわ」
「シュアリー様…」
ルカスもシュアリーに限界が近づいているのではないかと思っていた。シュアリーがアウラージュから奪ってでも、王になりたかったのならば、違っただろう。最初は戸惑っていたが、王太子という立場に誇らしそうではあった、だが本格的に教育が始まれば、現実を知る。
王家の歴史を学び、予算、法案、調査、研究と多岐に渡る。他国についても、言語、マナー、歴史と同じように学ぶようになる。そして、一番は家臣の声を聞き、民の声を聞き、国をまとめる力。シュアリーに出来るとは思えなかった。
シュアリーを選んだ時点で、ルカスも王配になる気はなくなっていた。
今は陛下がいるが、いなくなったら、一番フォローするのはルカスとなる。王配教育も格段にレベルが上がっている。アウラージュとは比べものにならないほど、決断を迫られるだろう。
「ルカス様もそう思うでしょう」
「お辛いのは分かります。ですが、王になるということは生半可な気持ちではなれません」
「そんなこと分かっているわ、でも私は王になりたかったわけではないもの。2人で話したじゃない、お姉様を支えるか、公爵になるかだって。なのにどうして、私が王太子なのよ!」
もう諦めるしかないのか、何か問題を起こしては補佐も公爵も難しくなってしまう。今ならまだ好待遇のままでいられるのではないか。実家の公爵家よりも下がることは避けたい。
ルカスもアウラージュがいた頃のシュアリーへの気持ちが減っている、おそらくシュアリーもそうだろうと気付いている。ブルーノ殿下への態度は男性として、お近づきになりたいという顔をしていた。分かり易いというのは男性にとって利点もあるが、傷付くこともある。
アウラージュの周りにも幼い頃からの知り合いである友人の男性はいたが、同じくらい女性もいた。仕方のないことだが、婚約を解消してからはアウラージュの友人とは関わることもなくなった。
おそらく友人の邸にいるか、別荘などにいるのだろうが、教えてくれるはずはない。ここまで洩れないということは、見付けることは困難だろう。そもそもルカスは関わってはならないため、探すことは出来ない。実家にも迷惑が掛かってしまう。
「陛下に話してみますか」
「お父様に言ったら、リオンかマーガレットになってしまうわ」
「ホワイトア公爵家の?」
「そうよ、お姉様が早く戻って来ないからいけないのよ」
シュアリーが降りれば、アウラージュが戻るではなく、カトリーヌ様は結婚の際に王位継承権を放棄しているため、ホワイトア公爵に移る。
「シュアリー様が降りれば、アウラージュ殿下が戻られるでしょう」
「絶対?」
「ええ、アウラージュ殿下以上に相応しい方はいないでしょうから」
「そうよね!お父様もいずれ戻って来るようなことを言っていたし、それまで頑張れということ?それとも意地悪しているのかしら」
「戻るとおっしゃっていたのですか」
「いつとは言っていなかったけど」
「そうでしたか…」
ルカスとアウラージュの関係は互いにとても義務的であった。
好かれているとは思っていなかったが、それでも持っていたはずのものを奪われるのは憎かっただろう。だから私を奪った趣旨返しとして、王位継承権まで放棄したのかもしれないとは思っていた。
そして自身が行った王太子教育をやらせて、どれだけ辛かったかを体験させ、シュアリーが私には無理でしたと頭を下げて、戻って来て欲しいというのを待っているのではないか。奪われた怒りを晴らそうとしているのかもしれない。
だが、それがいつなのか。早々に終わらせては面白くないはずだ。
「ホワイトア公爵家に移る前にどうにかしなくてはなりませんね。アウラージュ殿下が王太子、後の王となれば、シュアリー様は王の妹になりますが、公爵家に移ってしまったら、王の妹にはなれません」
「えっ、それは嫌よ」
「待つしかないのかもしれませんね…」
「シュアリー様…」
ルカスもシュアリーに限界が近づいているのではないかと思っていた。シュアリーがアウラージュから奪ってでも、王になりたかったのならば、違っただろう。最初は戸惑っていたが、王太子という立場に誇らしそうではあった、だが本格的に教育が始まれば、現実を知る。
王家の歴史を学び、予算、法案、調査、研究と多岐に渡る。他国についても、言語、マナー、歴史と同じように学ぶようになる。そして、一番は家臣の声を聞き、民の声を聞き、国をまとめる力。シュアリーに出来るとは思えなかった。
シュアリーを選んだ時点で、ルカスも王配になる気はなくなっていた。
今は陛下がいるが、いなくなったら、一番フォローするのはルカスとなる。王配教育も格段にレベルが上がっている。アウラージュとは比べものにならないほど、決断を迫られるだろう。
「ルカス様もそう思うでしょう」
「お辛いのは分かります。ですが、王になるということは生半可な気持ちではなれません」
「そんなこと分かっているわ、でも私は王になりたかったわけではないもの。2人で話したじゃない、お姉様を支えるか、公爵になるかだって。なのにどうして、私が王太子なのよ!」
もう諦めるしかないのか、何か問題を起こしては補佐も公爵も難しくなってしまう。今ならまだ好待遇のままでいられるのではないか。実家の公爵家よりも下がることは避けたい。
ルカスもアウラージュがいた頃のシュアリーへの気持ちが減っている、おそらくシュアリーもそうだろうと気付いている。ブルーノ殿下への態度は男性として、お近づきになりたいという顔をしていた。分かり易いというのは男性にとって利点もあるが、傷付くこともある。
アウラージュの周りにも幼い頃からの知り合いである友人の男性はいたが、同じくらい女性もいた。仕方のないことだが、婚約を解消してからはアウラージュの友人とは関わることもなくなった。
おそらく友人の邸にいるか、別荘などにいるのだろうが、教えてくれるはずはない。ここまで洩れないということは、見付けることは困難だろう。そもそもルカスは関わってはならないため、探すことは出来ない。実家にも迷惑が掛かってしまう。
「陛下に話してみますか」
「お父様に言ったら、リオンかマーガレットになってしまうわ」
「ホワイトア公爵家の?」
「そうよ、お姉様が早く戻って来ないからいけないのよ」
シュアリーが降りれば、アウラージュが戻るではなく、カトリーヌ様は結婚の際に王位継承権を放棄しているため、ホワイトア公爵に移る。
「シュアリー様が降りれば、アウラージュ殿下が戻られるでしょう」
「絶対?」
「ええ、アウラージュ殿下以上に相応しい方はいないでしょうから」
「そうよね!お父様もいずれ戻って来るようなことを言っていたし、それまで頑張れということ?それとも意地悪しているのかしら」
「戻るとおっしゃっていたのですか」
「いつとは言っていなかったけど」
「そうでしたか…」
ルカスとアウラージュの関係は互いにとても義務的であった。
好かれているとは思っていなかったが、それでも持っていたはずのものを奪われるのは憎かっただろう。だから私を奪った趣旨返しとして、王位継承権まで放棄したのかもしれないとは思っていた。
そして自身が行った王太子教育をやらせて、どれだけ辛かったかを体験させ、シュアリーが私には無理でしたと頭を下げて、戻って来て欲しいというのを待っているのではないか。奪われた怒りを晴らそうとしているのかもしれない。
だが、それがいつなのか。早々に終わらせては面白くないはずだ。
「ホワイトア公爵家に移る前にどうにかしなくてはなりませんね。アウラージュ殿下が王太子、後の王となれば、シュアリー様は王の妹になりますが、公爵家に移ってしまったら、王の妹にはなれません」
「えっ、それは嫌よ」
「待つしかないのかもしれませんね…」
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