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再会
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ルカスは突如、アウラージュが夜会に出席するとの情報を得ることが出来た。最後に会ったのは半年以上前である。これでようやくまだ迷いのあるシュアリーのためにも、話が出来るようになるのではないかと期待した。
シュアリーに話すと、一刻も早く会いたい、どうにかして参加したいと言われ、慌てて友人の伝手でどうにか参加することが出来た。会場に入ると、ブルーナ殿下の姿があり、シュアリーは迷わず声を掛けた。
「ブルーナ殿下!」
「王太子殿下」
「いらっしゃっていたのですね」
「ええ、お誘いいただきましたので、参加させていただいております」
「そうだったですか…」
アウラージュにはもう会ったのだろうか、まだ消化できていない気持ちのためにも、会わせた方がいいのか分からなかった。だが、ブルーナ越しに、人に囲まれている隙間から、アウラージュの姿を捉え、思わず声を上げていた。
「お姉様っ!」
「えっ、アウラージュ様ですか」
「えっと、はい」
「行かれてはいかがですか」
「あの、では、すみませんが」
シュアリーは急ぎ足でアウラージュの元へ行き、ルカスも一緒に向かった。久しぶりに会う姉は変わらず、いや、輝きを増してるように思えた。
「お姉様!今までどこにいらっしゃったの!」
「まあまあ、王太子殿下、バートラ公爵令息様、ごきげんよう」
「殿下…」
「ルカス様、お姉様はもう殿下ではないです」
「いえ、殿下に変わりありません」
「別にいいですけど」
シュアリーは王太子の自覚を持ってくださいと言っていたくせに、王位継承権を放棄をしたアウラージュをまだ殿下と呼ぶなんて、自分もやはり逃げ出したいのではないかと思った。でも王家を抜けたとは聞いていないので、王女のままではあるのかもしれない。逃げ出したい気持ちと、お姉様より上の立場、心がせめぎ合っている。どうしたらいいのか分からない。
「申し訳ないのだけど、私、色々とお約束がありまして、失礼いたしますわね」
周りにいた人たちはさっと3人から距離を取ったが、割り込んだのはシュアリーであるため、仕方のないことではあるが、側まで来ていたブルーナを私が紹介した方がいいような気がした。
「待って、お姉様。こちらはスイク王国の第二王子であるブルーナ殿下です」
シュアリーの後ろにはブルーナがいた。ブルーナはアウラージュに微笑み、右足を引き、左腕は腹部に水平に当てて挨拶をし、アウラージュも膝を折って片足を後ろに引き、身を低く挨拶を返した。
「ごきげんよう、殿下」
「ごきげんよう」
「お約束があると聞こえました。私のことはお気になさらず、ご挨拶できただけでも大変光栄に思います」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせていただきます」
ブルーナはシュアリーにご紹介ありがとうございましたと去って行き、アウラージュは再び人に囲まれており、楽しそうな笑い声もする。アルバートもやっぱりいる。シュアリーの側にはルカスと護衛しかいない。その後はルカスの友人や、挨拶に来た人と話をするくらいであった。
シュアリーはブルーナと縁談の話をしたい、アウラージュに何をしていたのか、王太子の話もしたい、でも私が動けばルカスが一緒に来てしまい、どちらもルカスの前で話すことは出来ないと、動けずにいた。
ブルーナは様々な人と話をしており、特に令嬢たちがうっとりしていることが、よく分かる。あれだけの美男子だもの、あんな方に愛されてしまったら、どうなってしまうのかしらと考えていた。
「殿下、今日はアウラージュ殿下と話すのは難しいでしょう。皆に聞かれるようなところで話すことでもありませんから」
「そうね…一体どこにいるのかしら」
「半年も経ちましたし、公に出て来たということは、陛下に頼んで話をしたいと言ってみてはいかがでしょうか」
「分かったわ、お父様に話してみる」
パーティーはそろそろ終わりになるようで、挨拶が行われている。ブルーナ殿下の姿がなく、アウラージュの方を見ると、ブルーナと話をしている。声が聞こえないのか、距離も近い。
一体、そんな側で何を話しているの。
「アウラ」
「久しぶりね、王太子殿下に何かしたの?」
「ちょっと美しき猫が引っ掻いていてみようかと」
「まあ、意地が悪い」
「アウラに言われたくはないな」
シュアリーに話すと、一刻も早く会いたい、どうにかして参加したいと言われ、慌てて友人の伝手でどうにか参加することが出来た。会場に入ると、ブルーナ殿下の姿があり、シュアリーは迷わず声を掛けた。
「ブルーナ殿下!」
「王太子殿下」
「いらっしゃっていたのですね」
「ええ、お誘いいただきましたので、参加させていただいております」
「そうだったですか…」
アウラージュにはもう会ったのだろうか、まだ消化できていない気持ちのためにも、会わせた方がいいのか分からなかった。だが、ブルーナ越しに、人に囲まれている隙間から、アウラージュの姿を捉え、思わず声を上げていた。
「お姉様っ!」
「えっ、アウラージュ様ですか」
「えっと、はい」
「行かれてはいかがですか」
「あの、では、すみませんが」
シュアリーは急ぎ足でアウラージュの元へ行き、ルカスも一緒に向かった。久しぶりに会う姉は変わらず、いや、輝きを増してるように思えた。
「お姉様!今までどこにいらっしゃったの!」
「まあまあ、王太子殿下、バートラ公爵令息様、ごきげんよう」
「殿下…」
「ルカス様、お姉様はもう殿下ではないです」
「いえ、殿下に変わりありません」
「別にいいですけど」
シュアリーは王太子の自覚を持ってくださいと言っていたくせに、王位継承権を放棄をしたアウラージュをまだ殿下と呼ぶなんて、自分もやはり逃げ出したいのではないかと思った。でも王家を抜けたとは聞いていないので、王女のままではあるのかもしれない。逃げ出したい気持ちと、お姉様より上の立場、心がせめぎ合っている。どうしたらいいのか分からない。
「申し訳ないのだけど、私、色々とお約束がありまして、失礼いたしますわね」
周りにいた人たちはさっと3人から距離を取ったが、割り込んだのはシュアリーであるため、仕方のないことではあるが、側まで来ていたブルーナを私が紹介した方がいいような気がした。
「待って、お姉様。こちらはスイク王国の第二王子であるブルーナ殿下です」
シュアリーの後ろにはブルーナがいた。ブルーナはアウラージュに微笑み、右足を引き、左腕は腹部に水平に当てて挨拶をし、アウラージュも膝を折って片足を後ろに引き、身を低く挨拶を返した。
「ごきげんよう、殿下」
「ごきげんよう」
「お約束があると聞こえました。私のことはお気になさらず、ご挨拶できただけでも大変光栄に思います」
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせていただきます」
ブルーナはシュアリーにご紹介ありがとうございましたと去って行き、アウラージュは再び人に囲まれており、楽しそうな笑い声もする。アルバートもやっぱりいる。シュアリーの側にはルカスと護衛しかいない。その後はルカスの友人や、挨拶に来た人と話をするくらいであった。
シュアリーはブルーナと縁談の話をしたい、アウラージュに何をしていたのか、王太子の話もしたい、でも私が動けばルカスが一緒に来てしまい、どちらもルカスの前で話すことは出来ないと、動けずにいた。
ブルーナは様々な人と話をしており、特に令嬢たちがうっとりしていることが、よく分かる。あれだけの美男子だもの、あんな方に愛されてしまったら、どうなってしまうのかしらと考えていた。
「殿下、今日はアウラージュ殿下と話すのは難しいでしょう。皆に聞かれるようなところで話すことでもありませんから」
「そうね…一体どこにいるのかしら」
「半年も経ちましたし、公に出て来たということは、陛下に頼んで話をしたいと言ってみてはいかがでしょうか」
「分かったわ、お父様に話してみる」
パーティーはそろそろ終わりになるようで、挨拶が行われている。ブルーナ殿下の姿がなく、アウラージュの方を見ると、ブルーナと話をしている。声が聞こえないのか、距離も近い。
一体、そんな側で何を話しているの。
「アウラ」
「久しぶりね、王太子殿下に何かしたの?」
「ちょっと美しき猫が引っ掻いていてみようかと」
「まあ、意地が悪い」
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