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無自覚
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「お兄様、ちょっといいかしら?」
トーラスの部屋を訪ねて来たのは、メリーアンだった。
「何だ?」
「お母様の言ったことって、本当だったの?」
「どのことだ?」
トーラスは沈んだ表情で帰って来たメリーアンを見て、多少は現実を見たのだろうと思っていた。
侍女たちに話を聞くと、予想以上に話題になって、乗り込んだり文句を言うこともなく、会話を聞いていたというので、これで自覚を持ってくれることを期待した。
「あなたは傲慢だから、同情を買える様に、しおらしくしないと駄目だって…」
「メリーアンはそうするべきだろうな」
「でも、侯爵令嬢なのよ?」
まだそんなことを言っているのかと思った。ユーフレット侯爵家自体に罰はなかったが、力は急速になくなっている。
唯一の救いと言っていいかは分からないが、加害者であるリリーもジーリスもいないことで、大変だろうなという目で見てくれる人もいるが、そうではない人もいる。
だからこそ、今まで以上にきちんとしなければならない。
「ユーフレット侯爵令嬢だからだよ、母上は離縁して自身で罪を償っているとしても、叔父上のことはユーフレット侯爵家が責任を持たなくてはいけない」
「でも、もう亡くなって、いえ、殺されているじゃない」
「殺人とは認められていない」
オーロラは傷害罪とされて、殺人罪にはならなかった。
動機のこともあり、母上が証言したこと、何人も被害者がおり、オーロラは唯一の弟を失った。刺したわけでも、毒を盛ったわけでもなく、ただ怪我をすればいいという目的だとされた。
ユーフレット侯爵家としても、ジーリスがあまりにも悪質であったために、『殺人だ!』と声を上げることは出来なかった。
そんなことをすれば、今以上の敵意を向けられることだろう。
ある意味、母であるリリーはこうなることを望んでいたのかもしれない。生家であるロス伯爵家も、罪人を出したことで、同じような目に遭っている。
勿論、リサナ・エンザーの嫁ぎ先のビュータ伯爵家や生家、オパール・ガルツの生家、コンガル侯爵家も同様である。
「殺したようなものでしょう!被害者じゃない」
「同時に、叔父上自身も加害者なんだよ。しかも、亡くなっているから、本人が責任を取ることが出来ないだろう」
「じゃあ、仕方ないとなってもいいじゃない」
同じ女性なのに、母親が強姦されていたというのに、どうしてそんな言葉が出て来るのだろうと思った。しかも、口にはしないようにしているが、その犯人はメリーアンにとっては実父である。
「メリーアンが被害者だったら、そう思えるか?強姦されて、亡くなったから、もういいと、許すか?」
「そっ、それは…」
さすがのメリーアンも、想像も出来ないことではあったが、言葉に詰まった。
「前にも聞いただろうが、今でも苦しんでいる方も、自殺した方もいるんだ。外でそんなことを絶対に言うな!刺されても文句は言えないからな」
「さ、刺されるなんて」
「あり得るよ、叔父上のことを恨んで、代わりに私たちだって刺されるかもしれない。そう思っている」
「そんな…私も?」
「可能性はないとは言えないだろうな」
メリーアンは侯爵令嬢ではあったが、危険に関わったことはなかった。
本当ならスノーの代わりに連れ去られる予定ではあったが、それも命に係わるようなことではなかったが、スノーよりもトラウマにはなったかもしれない。
「私は関係ないのに…」
「ユーフレット侯爵令嬢だと言うのなら、覚悟して置きなさい」
「そんな覚悟なんて出来ないわ、お兄様とは違うんだから」
「何が違う?」
「私はそんな覚悟をするような立場じゃないわ」
どちらかと言えば、実際に近しい存在なのはトーラスよりもメリーアンだろう。
トーラスの部屋を訪ねて来たのは、メリーアンだった。
「何だ?」
「お母様の言ったことって、本当だったの?」
「どのことだ?」
トーラスは沈んだ表情で帰って来たメリーアンを見て、多少は現実を見たのだろうと思っていた。
侍女たちに話を聞くと、予想以上に話題になって、乗り込んだり文句を言うこともなく、会話を聞いていたというので、これで自覚を持ってくれることを期待した。
「あなたは傲慢だから、同情を買える様に、しおらしくしないと駄目だって…」
「メリーアンはそうするべきだろうな」
「でも、侯爵令嬢なのよ?」
まだそんなことを言っているのかと思った。ユーフレット侯爵家自体に罰はなかったが、力は急速になくなっている。
唯一の救いと言っていいかは分からないが、加害者であるリリーもジーリスもいないことで、大変だろうなという目で見てくれる人もいるが、そうではない人もいる。
だからこそ、今まで以上にきちんとしなければならない。
「ユーフレット侯爵令嬢だからだよ、母上は離縁して自身で罪を償っているとしても、叔父上のことはユーフレット侯爵家が責任を持たなくてはいけない」
「でも、もう亡くなって、いえ、殺されているじゃない」
「殺人とは認められていない」
オーロラは傷害罪とされて、殺人罪にはならなかった。
動機のこともあり、母上が証言したこと、何人も被害者がおり、オーロラは唯一の弟を失った。刺したわけでも、毒を盛ったわけでもなく、ただ怪我をすればいいという目的だとされた。
ユーフレット侯爵家としても、ジーリスがあまりにも悪質であったために、『殺人だ!』と声を上げることは出来なかった。
そんなことをすれば、今以上の敵意を向けられることだろう。
ある意味、母であるリリーはこうなることを望んでいたのかもしれない。生家であるロス伯爵家も、罪人を出したことで、同じような目に遭っている。
勿論、リサナ・エンザーの嫁ぎ先のビュータ伯爵家や生家、オパール・ガルツの生家、コンガル侯爵家も同様である。
「殺したようなものでしょう!被害者じゃない」
「同時に、叔父上自身も加害者なんだよ。しかも、亡くなっているから、本人が責任を取ることが出来ないだろう」
「じゃあ、仕方ないとなってもいいじゃない」
同じ女性なのに、母親が強姦されていたというのに、どうしてそんな言葉が出て来るのだろうと思った。しかも、口にはしないようにしているが、その犯人はメリーアンにとっては実父である。
「メリーアンが被害者だったら、そう思えるか?強姦されて、亡くなったから、もういいと、許すか?」
「そっ、それは…」
さすがのメリーアンも、想像も出来ないことではあったが、言葉に詰まった。
「前にも聞いただろうが、今でも苦しんでいる方も、自殺した方もいるんだ。外でそんなことを絶対に言うな!刺されても文句は言えないからな」
「さ、刺されるなんて」
「あり得るよ、叔父上のことを恨んで、代わりに私たちだって刺されるかもしれない。そう思っている」
「そんな…私も?」
「可能性はないとは言えないだろうな」
メリーアンは侯爵令嬢ではあったが、危険に関わったことはなかった。
本当ならスノーの代わりに連れ去られる予定ではあったが、それも命に係わるようなことではなかったが、スノーよりもトラウマにはなったかもしれない。
「私は関係ないのに…」
「ユーフレット侯爵令嬢だと言うのなら、覚悟して置きなさい」
「そんな覚悟なんて出来ないわ、お兄様とは違うんだから」
「何が違う?」
「私はそんな覚悟をするような立場じゃないわ」
どちらかと言えば、実際に近しい存在なのはトーラスよりもメリーアンだろう。
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