108 / 154
離縁2
しおりを挟む
「どうかしら?やっぱり私がいる方が、マーガレットも嬉しそうだし。母親なんだから、当たり前なんだけど。ダリアもその方がいいでしょう?」
「…」
「ねえ、そうしましょう?絶対にその方がいいわ、ダリアも分かるでしょう?」
「君はマーガレットに会いに来たんだろう」
ダリアはメリーアンの自信のあるところが好ましいと思っていたが、今では得体のしれない人間のように感じて、思ったより低い声が出た。
「そうだけど、勿論、ダリアにも会いたかったわ!そんなことは口にしなくても、夫婦なんだから言わなくても分かるでしょう?」
まるでダリアではなく、マーガレットに会いに来たと言ったことに、ダリアが拗ねているような口振りであった。
「マーガレットは見ない間に大きくなったわね、私もこの目で見たかったわ。ねえ、マーガレット?」
マーガレットは、変わらずメリーアンに反応する様子はない。
「やっぱり耳が聞こえにくいのかしら?可哀想に…」
実はメリーアンの片耳は、聞こえにくいだけで、聞こえていないわけではないことが分かっていたが、メリーアンには伝える気持ちが持てなかった。
「ねえ、やっぱりマーガレットにも、オスレ伯爵家にも私が必要でしょう?」
「冗談はいいから、もう帰ってくれ」
「え?どうしてよ…ちゃんと私を見て頂戴、必要に決まっているわ」
メリーアンはもう一度話せば、オスレ伯爵家にいる私を見れば、マーガレットを愛する私を見れば、ダリアはやっぱり君が必要だと言ってくれると思っていた。
メリーアンは結局、私、私、私と、自分のことばかりで、結果的に思い通りにならないことがなかった人生であり、今回も何とかなると思っていた。
「その話はもう終わっただろう?何度もする気はない」
「っな!ダリアは考え過ぎるんだから、気持ちで動かなくちゃ駄目だって、言っていたでしょう?んもう」
メリーアンがダリアによく言っていたことであった、だがもう素直に受け取ることは出来なくなったダリアには何も響くことはなかったが、確かに沢山考えたが、事実から導き出した答えであった。
「自分の気持ちで動いた結果だよ」
「え?」
「母親を殺されたんだ、気持ちで動くのは当然だろう?」
「そ、それはそうだけど」
まさにメリーアンの言い続けていたことであるために、反論する言葉は見付からなかった。
「でも、私だって、叔父様の子だって言われて、混乱しているの!支えて欲しいと思っても当然じゃない!」
ジーリスのことは知らない使用人もいる場であったのだが、メリーアンはお構いなしで、話し始めており、使用人たちは顔を見合わせていた。
だが、当の本人が話し出したので、ダリアも止めることはしなかった。
「私ではない方に支えて貰うといい」
「…本気で言っているの?」
まさかそんな言葉を、愛し合っていたはずのダリアから聞くとは思っていなかった、メリーアンは衝撃を受けた。
「ああ、私たちは相反するものだと言っただろう?支えることは出来ない」
「じゃあ!私が再婚してもいいと言うのね!」
「ああ、そうするといい。私たちは離縁するのだから、気にせず再婚したらいい」
「分かったわ!マーガレットは、絶対に引き取るんだから!ダリアは後悔すればいいわ!絶対に後悔するんだから!」
捨て台詞を吐いて、メリーアンは帰って行った。
ダリアはその日に、ユーフレット侯爵に連絡をして、今日の経緯を話した。
「申し訳ありませんでした」
勝手に出掛けていたことすら聞いておらず、しかも行ってはいけないと言ってあった、オスレ伯爵家に行っているとは思わなかった。
「マーガレットのことは話し合いの場を設けますから、離縁を先にして貰えますか」
「そうですね、そうしましょう」
そうして、ダリアとメリーアンの離縁は成立した。
「…」
「ねえ、そうしましょう?絶対にその方がいいわ、ダリアも分かるでしょう?」
「君はマーガレットに会いに来たんだろう」
ダリアはメリーアンの自信のあるところが好ましいと思っていたが、今では得体のしれない人間のように感じて、思ったより低い声が出た。
「そうだけど、勿論、ダリアにも会いたかったわ!そんなことは口にしなくても、夫婦なんだから言わなくても分かるでしょう?」
まるでダリアではなく、マーガレットに会いに来たと言ったことに、ダリアが拗ねているような口振りであった。
「マーガレットは見ない間に大きくなったわね、私もこの目で見たかったわ。ねえ、マーガレット?」
マーガレットは、変わらずメリーアンに反応する様子はない。
「やっぱり耳が聞こえにくいのかしら?可哀想に…」
実はメリーアンの片耳は、聞こえにくいだけで、聞こえていないわけではないことが分かっていたが、メリーアンには伝える気持ちが持てなかった。
「ねえ、やっぱりマーガレットにも、オスレ伯爵家にも私が必要でしょう?」
「冗談はいいから、もう帰ってくれ」
「え?どうしてよ…ちゃんと私を見て頂戴、必要に決まっているわ」
メリーアンはもう一度話せば、オスレ伯爵家にいる私を見れば、マーガレットを愛する私を見れば、ダリアはやっぱり君が必要だと言ってくれると思っていた。
メリーアンは結局、私、私、私と、自分のことばかりで、結果的に思い通りにならないことがなかった人生であり、今回も何とかなると思っていた。
「その話はもう終わっただろう?何度もする気はない」
「っな!ダリアは考え過ぎるんだから、気持ちで動かなくちゃ駄目だって、言っていたでしょう?んもう」
メリーアンがダリアによく言っていたことであった、だがもう素直に受け取ることは出来なくなったダリアには何も響くことはなかったが、確かに沢山考えたが、事実から導き出した答えであった。
「自分の気持ちで動いた結果だよ」
「え?」
「母親を殺されたんだ、気持ちで動くのは当然だろう?」
「そ、それはそうだけど」
まさにメリーアンの言い続けていたことであるために、反論する言葉は見付からなかった。
「でも、私だって、叔父様の子だって言われて、混乱しているの!支えて欲しいと思っても当然じゃない!」
ジーリスのことは知らない使用人もいる場であったのだが、メリーアンはお構いなしで、話し始めており、使用人たちは顔を見合わせていた。
だが、当の本人が話し出したので、ダリアも止めることはしなかった。
「私ではない方に支えて貰うといい」
「…本気で言っているの?」
まさかそんな言葉を、愛し合っていたはずのダリアから聞くとは思っていなかった、メリーアンは衝撃を受けた。
「ああ、私たちは相反するものだと言っただろう?支えることは出来ない」
「じゃあ!私が再婚してもいいと言うのね!」
「ああ、そうするといい。私たちは離縁するのだから、気にせず再婚したらいい」
「分かったわ!マーガレットは、絶対に引き取るんだから!ダリアは後悔すればいいわ!絶対に後悔するんだから!」
捨て台詞を吐いて、メリーアンは帰って行った。
ダリアはその日に、ユーフレット侯爵に連絡をして、今日の経緯を話した。
「申し訳ありませんでした」
勝手に出掛けていたことすら聞いておらず、しかも行ってはいけないと言ってあった、オスレ伯爵家に行っているとは思わなかった。
「マーガレットのことは話し合いの場を設けますから、離縁を先にして貰えますか」
「そうですね、そうしましょう」
そうして、ダリアとメリーアンの離縁は成立した。
1,642
お気に入りに追加
2,842
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる