上 下
66 / 154

調査6

しおりを挟む
 ハンカチを解析に出すと、媚薬の成分が検出された。想像していたリリーではなかったが、リサナを追い詰めることは出来るだろう。

 まずはリサナ、そこからリリーの名前が出ればいいと思っている。

 バークスとヒューナは、ビュータ伯爵家を訪れた。既に拘束する許可も得ているが、話を聞いてからにするために二人と侯爵家の護衛二名と、騎士団員二名が向かった。夫で伯爵である、デリサンも同席させている。

「マリエル・オスレが帰り道で怪我をした茶会で、マリエルの馬に媚薬を入れましたね?」
「え?何を、おっしゃっているのですか?意味が分かりません」
「証人も証拠も見付かっている。素直に話した方がいい」
「どういうことですか?」

 前置きもなく始まった話に、デリサンも黙ってはいられなかった。

「マリエル・オスレが亡くなったのは、リサナ・ビュータが関与しているということです」
「デタラメです、証言なんて、どうして今更…」
「今更とはどういうことですか?今更、分かるはずがないということか?」
「そ、そうではなく…」

 リサナは顔色を悪くしながら、首をフルフルと振り出した。

「ビュータ伯爵。こちらが夫人が書いた、マリエルの宛ての嫌がらせの手紙です」
「っな」
「私ではないわ」
「筆跡を鑑定して貰ったんです」

 これはマリエルが持っていた物ではなく、オリラが預かっていた方に、リサナの筆跡の手紙が3通見付かっていた。

「大事に扱ってください、何かしようとした段階で、騎士団が拘束します」

 夫妻は後ろの屈強な騎士が、騎士団員なのだと理解した。

「…はい」

 デリサンはその袋に入れられた手紙を黙って読み進め、確かにリサナの字に似ていると思った。

「リサナ、本当なのか?」
「あなた、違うわ、私はそんなことしていないわ」
「だが、この手紙の字は私が見ても、似ていると思う」

 その言葉にリサナは目を泳がせた。

「ちょっとした嫌がらせだったんです」
「リサナ!」
「マリエルが嫌いだったの?それとも、オリラのせいにしたくてしたの?それとも両方かしら?」
「それは…」
「恐れながら、オリラ様というのは?」

 デリサンはオリラと聞いても、誰か分からなかった。

「リーター子爵家の令嬢です」
「コンガル侯爵の元嫡男と離縁したと言えば分かるかしら?」
「ああ…」

 その様子に、デリサンもおそらく、リサナから聞いているのだろうと思った。

「お父様はランドマーク前侯爵で、現ランドマーク侯爵の義姉になります」
「は?」
「え?」
「まさか、あなた知らなかったの?それで、オリラを馬鹿にしていたのね、どうしてコンガル侯爵家が困窮したのか、分かっていなかったの?だからこんな真似が出来たのね。ご主人も聞いていたのでしょう?」
「いえ、私は友人が辛い目に合っているとだけ」
「そう」
「そんな…でも一度もそんなこと」

 リサナは友人であるオパールから、そんな話を聞いてはいなかった。ただの子爵令嬢だと思っていた。

「ええ、オリラは立場を弁えて、実父には頼らないようにしていたそうですから」
「オパールがオリラのせいだと、だから私は!」
「オリラが目的だった?」
「マリエル様も気に食わなかった、でもオリラのせいだと思っていたから」
「ある意味そうではあるわね。だって実の娘が心を壊されたのよ?怒って当然じゃない?違う?」

 その言葉に夫妻にも子供がいるため、何も答えることは出来なかった。

「あなたのご友人であるオパールも、爵位のことで嫌がらせをして追い出したのですから、それを聞いたランドマーク侯爵の怒りを買って、落ちぶれたのです。自業自得でしょう」
「そんな…」
「で、媚薬は自分で用意したの?」
「私は、やっていません」
「そう、素直に話さないなら騎士団に預けるわ。嫌でも話すことになるでしょう」

 騎士団員二名が拘束に動こうとすると、リサナは慌てて話し始めた。

「待ってください!貰ったのです…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...