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調査1
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「ああ、だが時間も経っている。事実だとしても証拠が見付かるかも分からない。だが私も妻もトイズとマリエルを知る身としては、黙ってはおられず、調査に手を貸すことにした。それでトーサムに話をしに来たのだ」
「私も調べます、手伝わせてください」
ダリアの手伝いは正直、助かる。証拠が見付けられるかもしれない。だがもしリリーだとしたら、危険を伴う可能性がある。
「私の一存では決められないから、確認する。まだ誰にも話さないで欲しい、トーサムも。いいか?」
「「はい」」
ダリアとトーサムは強く頷いた。ローザ公爵が一存で決められないということは、王家が関わっているということを意味している。
「マリエルの日記はないの?」
「母は日記は残していません」
「手紙は?」
「手紙…探してみます。妻にもまだ言ってはならないのですよね?」
「そうね、まだ言わないで欲しいわ」
「承知しました、適当な理由を考えて、探してみます」
いずれメリーアンには伝えるとしても、もし一緒に探して、証拠が見付かりでもしたら、まだ調査を開始したばかりの今では、まだ早いだろう。
ヒューナは難しいかもしれないが、まずは色眼鏡で見ずに、何が起こったのか、見定めなければならない。
「何か見付かったら、ローザ公爵家に連絡してくれ」
「承知しました」
ヒューナは偲ぶ会をしたいと言って、ビュータ伯爵家の茶会の出席者を教えて貰った。そして、バークスはビュータ伯爵家の使用人を調べることにした。
特にリサナ・ビュータはとても責任を感じており、マリエルが嫌がらせを受けいたということを聞いたことはないかと聞いてみた。
「直接聞いたことはありませんが、あったかもしれません」
「なぜそう思うの?」
「実は、オスレ伯爵家にお伺いし、マリエル様が手紙を持って来られて、受け取る際に躊躇されて、お顔を曇らせたことがあったのです」
「手紙…」
あの中の手紙だったのかもしれない。
「聞いたの?」
「どなたからなのかと聞きました。ですが、母よ、小言が書いてあるのと笑ってらっしゃいました。でもマリエル様のご家族は仲が良かったですから。それで、言いたくない相手なのかと思いまして…それ以上は聞けませんでした」
「相手に心当たりはあるの?」
「それが…オリラ・リーター様ではないかと、コンガル侯爵家に離縁された方です」
「誰がそう言ったの?」
オリラのことは知らないが、状況から判断して、あり得ないことだ。
リアンスとスノーの婚約も、内々にしか発表していないので、リサナは知らずに話しているのだろう。
「誰が…それは」
「分からないの?」
「確か、キハナ・ドリーマス様です」
キハナ・ドリーマス子爵夫人、あの日の出席者の中にもいた。
「そうです、あの方から聞きました。コンガル侯爵家に離縁されて、子爵家に引き籠って、お幸せなマリエル様が憎いのではないかと」
「オリラ様とマリエルは仲が良かったの?」
「学園の頃は、よく一緒にいたと思います」
「それなのに?」
「キハナが言うには、だからこそだと、コンガル侯爵家に嫁いで離縁されて、伯爵家に嫁いだマリエルを下に見ていた、それなのに離縁されて、それが恨みになったと」
「そう…」
もしオリラだったとしたら、幸せなマリエルが憎く、嫌がらせの手紙を送り、事故で亡くなったことで、責任を感じて今も引き籠っているということになる。傍から見れば筋は通るのかもしれない。
だが、手紙を姪に託すなんてことはしない。自分を裁いて欲しいのだとしても、マリエルに憎しみを持つという点がどうしても腑に落ちない。
「ですが、どうしてそんなことを?」
「嫌がらせを受けていたという噂を聞いたのよ、それで間違っても、そんな相手を偲ぶ会には呼びたくないでしょう?」
「そうですね」
「私も調べます、手伝わせてください」
ダリアの手伝いは正直、助かる。証拠が見付けられるかもしれない。だがもしリリーだとしたら、危険を伴う可能性がある。
「私の一存では決められないから、確認する。まだ誰にも話さないで欲しい、トーサムも。いいか?」
「「はい」」
ダリアとトーサムは強く頷いた。ローザ公爵が一存で決められないということは、王家が関わっているということを意味している。
「マリエルの日記はないの?」
「母は日記は残していません」
「手紙は?」
「手紙…探してみます。妻にもまだ言ってはならないのですよね?」
「そうね、まだ言わないで欲しいわ」
「承知しました、適当な理由を考えて、探してみます」
いずれメリーアンには伝えるとしても、もし一緒に探して、証拠が見付かりでもしたら、まだ調査を開始したばかりの今では、まだ早いだろう。
ヒューナは難しいかもしれないが、まずは色眼鏡で見ずに、何が起こったのか、見定めなければならない。
「何か見付かったら、ローザ公爵家に連絡してくれ」
「承知しました」
ヒューナは偲ぶ会をしたいと言って、ビュータ伯爵家の茶会の出席者を教えて貰った。そして、バークスはビュータ伯爵家の使用人を調べることにした。
特にリサナ・ビュータはとても責任を感じており、マリエルが嫌がらせを受けいたということを聞いたことはないかと聞いてみた。
「直接聞いたことはありませんが、あったかもしれません」
「なぜそう思うの?」
「実は、オスレ伯爵家にお伺いし、マリエル様が手紙を持って来られて、受け取る際に躊躇されて、お顔を曇らせたことがあったのです」
「手紙…」
あの中の手紙だったのかもしれない。
「聞いたの?」
「どなたからなのかと聞きました。ですが、母よ、小言が書いてあるのと笑ってらっしゃいました。でもマリエル様のご家族は仲が良かったですから。それで、言いたくない相手なのかと思いまして…それ以上は聞けませんでした」
「相手に心当たりはあるの?」
「それが…オリラ・リーター様ではないかと、コンガル侯爵家に離縁された方です」
「誰がそう言ったの?」
オリラのことは知らないが、状況から判断して、あり得ないことだ。
リアンスとスノーの婚約も、内々にしか発表していないので、リサナは知らずに話しているのだろう。
「誰が…それは」
「分からないの?」
「確か、キハナ・ドリーマス様です」
キハナ・ドリーマス子爵夫人、あの日の出席者の中にもいた。
「そうです、あの方から聞きました。コンガル侯爵家に離縁されて、子爵家に引き籠って、お幸せなマリエル様が憎いのではないかと」
「オリラ様とマリエルは仲が良かったの?」
「学園の頃は、よく一緒にいたと思います」
「それなのに?」
「キハナが言うには、だからこそだと、コンガル侯爵家に嫁いで離縁されて、伯爵家に嫁いだマリエルを下に見ていた、それなのに離縁されて、それが恨みになったと」
「そう…」
もしオリラだったとしたら、幸せなマリエルが憎く、嫌がらせの手紙を送り、事故で亡くなったことで、責任を感じて今も引き籠っているということになる。傍から見れば筋は通るのかもしれない。
だが、手紙を姪に託すなんてことはしない。自分を裁いて欲しいのだとしても、マリエルに憎しみを持つという点がどうしても腑に落ちない。
「ですが、どうしてそんなことを?」
「嫌がらせを受けていたという噂を聞いたのよ、それで間違っても、そんな相手を偲ぶ会には呼びたくないでしょう?」
「そうですね」
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