54 / 154
叔母
しおりを挟む
「謝ることではないわ、私もますますお会いしたかったわ」
「スノー様から見て、母はどんな人でしたか?」
「お優しい方でした、よく3人で喫茶店に行ったりしました」
スノーはもしかしたら、トイズはマリエルから、私の話を聞いていたことがあったのかもしれないと思った。
「私も母と行ったことがありました」
「ダリア、今度行ってみましょうよ。スノー様、お店を覚えているかしら?」
「はい、マキシムや、ロコン、後はパーデュラスにも行ったことがありました」
「まあまあ、全部行ってみましょうよ」
「そうだな」
二人は嬉しそうに、微笑んでおり、スノーも叔母のことで隠すようなことはないのだが、ホッとした。
「やはり、スノーは記憶力がいいな」
「そうですかね?でも人から思い出しているだけです」
「なるほど、そういった回路になっているのか」
リアンスは少々焦ったが、改めて感心したように、スノーを見ながら言った。
「いや、スノー様が言えば説得力がありますから、きっと友人だったのでしょう。是非、一緒にとお誘いしたいところですが、難しいですよね」
「はい、会話もなかなか難しい状態ですので、申し訳ございません」
「いいえ、無理を言いました」
そして、オスレ伯爵家への訪問は思わぬ形で、穏やかに終わった。
帰りの馬車でリアンスとスノーは解放された気持ちにもなったが、マリエル様とも会っていたことに驚いた。
「まさかまた見覚えのある人が現れるとはな、何かあるのではないかと焦ってしまったが」
「申し訳ありません、ただ驚いてしまって…」
「いや、知らなかったなら、驚いて当然だろう」
「マリー様がダリア様のお母様だったとは思いませんでして」
全く二人が繋がっていなかった。顔を見るまで、マリエルという名前を聞いてもスノーには分からなかっただろう。
「ダリアは、完全にトイズ様に似ているからな」
「マリー様は、色味は私と同じだったんです。叔母が二人が並ぶと親子みたいだと言っていて、さすがにあの場では言えませんでしたけど」
「ああ…今は口に出したくない話だな。娘は…スノーも気付いたよな?」
心構えとして、知識として、近親婚でどんな不調が現れるかということを、二人は調べているので、過敏になっている。
「耳ですよね、色眼鏡で見てしまっているだけかもしれませんが」
「それもある。私たちが言うことではないから、医師が判断するだろう」
「そうですね。マリー様のことは叔母に話が出来れば、良かったんですけど」
離縁と死去がどのような時間軸か詳しく分からないが、心を壊したオリラは、もしかしたらマリエルの葬儀にも、行っていないのかもしれない。
「難しいのか?」
「リアンス様はどこまでご存知ですか」
「おそらく全て知っている」
スノーを調べた際にリーター子爵家のことを含めて、報告書を呼んでいる。
「それなら話が早いです。時間のある時に会いには行っているのですが…前は本当に、快活で明るい人だったんです」
「仲が良かったんだな」
「叔母は私が蔑ろにされていることを、気付いていたんだと思います。だから、話したように会いに来て、遊びに行こうと連れ出してくれていたのです」
「妹君は?付いて行くと言い出しそうだが?」
「叔母は母の様に穏やかではないので、レピアは毛嫌いしていたんです」
だからこそ、オリラと過ごす時間がスノーは好きだった。
「叔母さまに会いに行って、マリー様の話をしてみます」
「反応はあるのか?」
「あっても謝るばかりですね、それでも顔を見たいので、通っているのです。申し訳ないのですが、婚約などの話はタブーなので、話すことは出来ません」
「話さなくていい」
心を壊しているのに、自分のことでなくても、連想するような話をして、フラッシュバックする可能性もある。
スノーは、次の休みにリーター子爵家を訪れていた。
「スノー様から見て、母はどんな人でしたか?」
「お優しい方でした、よく3人で喫茶店に行ったりしました」
スノーはもしかしたら、トイズはマリエルから、私の話を聞いていたことがあったのかもしれないと思った。
「私も母と行ったことがありました」
「ダリア、今度行ってみましょうよ。スノー様、お店を覚えているかしら?」
「はい、マキシムや、ロコン、後はパーデュラスにも行ったことがありました」
「まあまあ、全部行ってみましょうよ」
「そうだな」
二人は嬉しそうに、微笑んでおり、スノーも叔母のことで隠すようなことはないのだが、ホッとした。
「やはり、スノーは記憶力がいいな」
「そうですかね?でも人から思い出しているだけです」
「なるほど、そういった回路になっているのか」
リアンスは少々焦ったが、改めて感心したように、スノーを見ながら言った。
「いや、スノー様が言えば説得力がありますから、きっと友人だったのでしょう。是非、一緒にとお誘いしたいところですが、難しいですよね」
「はい、会話もなかなか難しい状態ですので、申し訳ございません」
「いいえ、無理を言いました」
そして、オスレ伯爵家への訪問は思わぬ形で、穏やかに終わった。
帰りの馬車でリアンスとスノーは解放された気持ちにもなったが、マリエル様とも会っていたことに驚いた。
「まさかまた見覚えのある人が現れるとはな、何かあるのではないかと焦ってしまったが」
「申し訳ありません、ただ驚いてしまって…」
「いや、知らなかったなら、驚いて当然だろう」
「マリー様がダリア様のお母様だったとは思いませんでして」
全く二人が繋がっていなかった。顔を見るまで、マリエルという名前を聞いてもスノーには分からなかっただろう。
「ダリアは、完全にトイズ様に似ているからな」
「マリー様は、色味は私と同じだったんです。叔母が二人が並ぶと親子みたいだと言っていて、さすがにあの場では言えませんでしたけど」
「ああ…今は口に出したくない話だな。娘は…スノーも気付いたよな?」
心構えとして、知識として、近親婚でどんな不調が現れるかということを、二人は調べているので、過敏になっている。
「耳ですよね、色眼鏡で見てしまっているだけかもしれませんが」
「それもある。私たちが言うことではないから、医師が判断するだろう」
「そうですね。マリー様のことは叔母に話が出来れば、良かったんですけど」
離縁と死去がどのような時間軸か詳しく分からないが、心を壊したオリラは、もしかしたらマリエルの葬儀にも、行っていないのかもしれない。
「難しいのか?」
「リアンス様はどこまでご存知ですか」
「おそらく全て知っている」
スノーを調べた際にリーター子爵家のことを含めて、報告書を呼んでいる。
「それなら話が早いです。時間のある時に会いには行っているのですが…前は本当に、快活で明るい人だったんです」
「仲が良かったんだな」
「叔母は私が蔑ろにされていることを、気付いていたんだと思います。だから、話したように会いに来て、遊びに行こうと連れ出してくれていたのです」
「妹君は?付いて行くと言い出しそうだが?」
「叔母は母の様に穏やかではないので、レピアは毛嫌いしていたんです」
だからこそ、オリラと過ごす時間がスノーは好きだった。
「叔母さまに会いに行って、マリー様の話をしてみます」
「反応はあるのか?」
「あっても謝るばかりですね、それでも顔を見たいので、通っているのです。申し訳ないのですが、婚約などの話はタブーなので、話すことは出来ません」
「話さなくていい」
心を壊しているのに、自分のことでなくても、連想するような話をして、フラッシュバックする可能性もある。
スノーは、次の休みにリーター子爵家を訪れていた。
1,495
お気に入りに追加
2,847
あなたにおすすめの小説
将来の義理の娘に夫を寝取られた
無味無臭(不定期更新)
恋愛
死んだはずの私は、過去に戻ったらしい。
伯爵家の一人娘として、15歳で公爵家に嫁いだ。
優しい夫と可愛い息子に恵まれた。
そんな息子も伯爵家の令嬢と結婚したので私達夫婦は隠居することにした。
しかし幸せな隠居生活は突然終わりを告げた。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
糾弾された直後に幸せになるのは 構いませんよね?だって私もう用済み悪役令嬢ですから
無味無臭(不定期更新)
恋愛
男爵令嬢リリーを虐めた罪で糾弾された公爵令嬢レジーナ。
しかしその直後に隣国の王子と結婚する。
「どうして貴女が幸せ掴んでるの?!」
焦る男爵令嬢と驚く攻略対象達にレジーナは言い放つ。
「役目を果たしたんだから幸せになっても構いませんよね?」
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる