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両親
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「ありますよ、少しお待ちください」
ダリアは立ち上がって、部屋を出て行った。
「スノー様、お知り合いってことはないわよね?」
「失礼しました。ですが、写真を見たりすると、思いがけないご両親の記憶を思い出せるのではないかと思いまして」
少し苦しい言い訳かとも思ったが、トイズも思い出して貰えないことは悲しいと思ってしまった。
しばらくして、ダリアがアルバムを持って、戻って来た。
「あまりないのですが…」
「いえ」
「スノー様は、ダリアが写真を見ることで、ご両親のことを思い出せるのではないかと思ったそうよ!」
「ああ、確かにあまり見ることはありませんでした」
ダリアはアルバムを開いて、ブロンドの女性を指差した。
「これが母です」
「え」
思いもよらない声が出てしまい、ハッとして掌で押さえた。だが、ダリアもメリーアンも、スノーの特技を知っている。
「知っているのですか…?いつ?母は私が7歳の時に亡くなっています」
「えっと…」
「記憶にあるということですよね?」
リアンスはスノーの慌てる様子に、ダリアとメリーアンに何か関係があるのではないかと、どうしようかと思ったが、その前にスノーが答えた。
「叔母です。友人だったはずです。マリー様ではありませんか?」
コンガル侯爵家に嫁ぎ、心を壊し、今も子爵家に籠っている母・ファイラの妹・オリラである。当たり前だが、祖母は伯爵家に嫁いだ母よりも、絶対に辛い思いをすることになると、強く伯母の婚約に酷く反対した。
だが舞い上がっていたオリラは、聞く耳を持たなかった。
子爵家で不自由なく育っていたオリラは、高位貴族への恐怖を祖母がいくら話しても、理解していなかった。
二年後に離縁した際に、祖母はやはりと思ったが、心を壊した様子に、ただただ後悔することしか出来なかった。
このことは、オリラの父であるオブレオも心を痛めて、コンガル侯爵家との関係を断ち切ったくらいである。
その後に、コンガル侯爵家はランドマーク侯爵家に謝罪をしたが、謝罪をする相手が違うと、今も関係は良くないままである。
「はい、マリエルです」
「そうでしたか…叔母がマリー様と呼んでいたので」
「叔母様というのは?」
「オリラ・リーターです」
「リーター子爵家の…」
「はい、今は心を壊していますが、幼い頃は連れ歩いてくれたこともありまして、その際に何度かお会いしたことがあります」
オリラの事情を知っているかは分からなかったが、伝えて置こうと思った。
「リーター家の方と、友人だったとは知りませんでした」
「私も詳しいことは知りませんでした。お顔とマリー様ということだけしか」
「そうでしたか…」
「まさかお母様だとは思っておりませんで、妙な声を出して、失礼しました」
トイズのように黙って堪えることが、突然だったので、出来なかった。
「いえ、まさかあなたの口からマリー様と聞くとは思いませんでしたので、問い詰めるようなことをして申し訳ありません」
「まさか、スノー様と繋がっていたなんてね。驚きね」
メリーアンは朗らかに、ダリアに話し掛けた。
「ああ、たまには見てみるものだな」
「そうよ!スノー様が来てくれると、いつも驚くことが起こるわね」
「申し訳ありません」
もっと驚くような事実を抱えているのかもしれないと思い、スノーは酷く疲れた気になった。だが、まさかあのマリー様がダリア様の母親だったとは思わなかった。
トイズよりも先にマリエルに会っていたことに、ただ驚いた。
以前からオスレ伯爵家に縁があったようだ。
スノーはマリエルと、同じ色味を持っていたことから、オリラからまるで親子のようだと言われていたが、相応しい話ではないと思い、口を噤んだ。
ダリアは立ち上がって、部屋を出て行った。
「スノー様、お知り合いってことはないわよね?」
「失礼しました。ですが、写真を見たりすると、思いがけないご両親の記憶を思い出せるのではないかと思いまして」
少し苦しい言い訳かとも思ったが、トイズも思い出して貰えないことは悲しいと思ってしまった。
しばらくして、ダリアがアルバムを持って、戻って来た。
「あまりないのですが…」
「いえ」
「スノー様は、ダリアが写真を見ることで、ご両親のことを思い出せるのではないかと思ったそうよ!」
「ああ、確かにあまり見ることはありませんでした」
ダリアはアルバムを開いて、ブロンドの女性を指差した。
「これが母です」
「え」
思いもよらない声が出てしまい、ハッとして掌で押さえた。だが、ダリアもメリーアンも、スノーの特技を知っている。
「知っているのですか…?いつ?母は私が7歳の時に亡くなっています」
「えっと…」
「記憶にあるということですよね?」
リアンスはスノーの慌てる様子に、ダリアとメリーアンに何か関係があるのではないかと、どうしようかと思ったが、その前にスノーが答えた。
「叔母です。友人だったはずです。マリー様ではありませんか?」
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だが舞い上がっていたオリラは、聞く耳を持たなかった。
子爵家で不自由なく育っていたオリラは、高位貴族への恐怖を祖母がいくら話しても、理解していなかった。
二年後に離縁した際に、祖母はやはりと思ったが、心を壊した様子に、ただただ後悔することしか出来なかった。
このことは、オリラの父であるオブレオも心を痛めて、コンガル侯爵家との関係を断ち切ったくらいである。
その後に、コンガル侯爵家はランドマーク侯爵家に謝罪をしたが、謝罪をする相手が違うと、今も関係は良くないままである。
「はい、マリエルです」
「そうでしたか…叔母がマリー様と呼んでいたので」
「叔母様というのは?」
「オリラ・リーターです」
「リーター子爵家の…」
「はい、今は心を壊していますが、幼い頃は連れ歩いてくれたこともありまして、その際に何度かお会いしたことがあります」
オリラの事情を知っているかは分からなかったが、伝えて置こうと思った。
「リーター家の方と、友人だったとは知りませんでした」
「私も詳しいことは知りませんでした。お顔とマリー様ということだけしか」
「そうでしたか…」
「まさかお母様だとは思っておりませんで、妙な声を出して、失礼しました」
トイズのように黙って堪えることが、突然だったので、出来なかった。
「いえ、まさかあなたの口からマリー様と聞くとは思いませんでしたので、問い詰めるようなことをして申し訳ありません」
「まさか、スノー様と繋がっていたなんてね。驚きね」
メリーアンは朗らかに、ダリアに話し掛けた。
「ああ、たまには見てみるものだな」
「そうよ!スノー様が来てくれると、いつも驚くことが起こるわね」
「申し訳ありません」
もっと驚くような事実を抱えているのかもしれないと思い、スノーは酷く疲れた気になった。だが、まさかあのマリー様がダリア様の母親だったとは思わなかった。
トイズよりも先にマリエルに会っていたことに、ただ驚いた。
以前からオスレ伯爵家に縁があったようだ。
スノーはマリエルと、同じ色味を持っていたことから、オリラからまるで親子のようだと言われていたが、相応しい話ではないと思い、口を噤んだ。
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