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事実1
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「先程の方が置き去りの犯人です。老けてはいましたが、あの時の御者です」
「えっ、ええ!何で言わないのよ」
アンリは大きな声を上げ、馬車は一時停止して、『奥様、大丈夫ですか』と、護衛に声を掛けられるほどであった。
「繋がったではありませんか、トイズ様が頼んだのはあの方で、でもあの方はきっと何も知らないのです。私があの時の子だということも、ブロンドだと言っても、落ち着いていました」
スノーが酷く驚いたのは、自分を探していたのこともあるが、トーマが見覚えのある顔だったからだ。
「確かにそうだけど…でも」
「いいのです。あの置き去りの理由が明らかになれば、それでいいのです。ようやく、元の姿に戻る決心が付きました」
「捕まったらと思っていたの?」
「はい…トイズ様とカーラさんのおかげで、恐ろしい記憶ではなかったのですが、御者のことは怖かった…」
「スノー…」
「でも、トイズ様が指示したことだったらと思ったら、ショックではありましたが、良かったと思う自分もいたのです。しかも間違えられたのならば、私は関係ないかもしれない。そしてトーマさんで、ようやく全て繋がりました」
これであの日の誰か分からない人は、スノーの中から全員いなくなった。
「じゃあ、本当にトイズが…」
「そういうことでしょう。弁護士事務所は、次の休みでいいですか?」
「ええ、勿論よ。私が連絡しておきますから」
次の休みに、アンリだけでなく、オブレオも一緒にアンダーソン弁護士事務所に向かうことになった。
スノーの髪色は、元通りという訳ではないが、除去剤というものを使って、ブロンドと言って差し支えないほど、元の髪色の近い状態に戻っていた。
「久し振りに見たわね」
「はい、私もです」
「こうやって見ると、オブレオに似ているのね。やっぱり本来の色の方が似合うわ」
「まだ慣れませんけど、日に日に戻っております」
スノーとオブレオは、同じブロンドで、薄いブルーの瞳をしていた。母が同じブロンドを受け継いでおり、瞳の色は父のブルーだと思っていたが、オブレオも同じ色であった。
「アンリ様、ご無沙汰しております」
アンダーソン弁護士事務所に着くと、所長が直々に迎えにやって来て、所長にしてみれば、アンリは雲の上のような存在である。
「ええ、今日はお世話になるわね」
「パーシス・ダオラと申します」
小柄な男性が所長の横で、頭を下げた。
「あなたが!今日はよろしくお願いしますわね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
所長はオブレオに挨拶しており、スノーは弁護士事務所など初めて来たので、居たたまれない気持ちになっていた。
おそらく一番上等な部屋に通され、ダオラ弁護士を前に3人は腰を下ろした。
「こちらがカーラ様から預かった手紙です。お金は既にスノー様の口座を作ってあります」
「お金?」
「お金とはどういうことです?」
「はい、お金を一緒に預かっております。トイズ・オスレ様からもです」
「オスレ伯爵からも?」
「はい、トイズ・オスレ様からはスノー様が結婚する際にと言われておりました。もしも結婚しなかった場合は、25歳になる年に渡すようにと言われておりました。カーラ様はそちらに追加されたような形になります。こちらが預かり証です」
目の前に出された紙にはトイズ・オスレから3千万、カーラから100万と書かれていた。
「こんなお金を…」
「私に連絡がなかったのも、言われたから?」
「はい、ですが渡す際にはアンリ様にお話することになっておりました」
「そう…」
やはりいずれ全てが導かれるようになっていたのだと思った。
「えっ、ええ!何で言わないのよ」
アンリは大きな声を上げ、馬車は一時停止して、『奥様、大丈夫ですか』と、護衛に声を掛けられるほどであった。
「繋がったではありませんか、トイズ様が頼んだのはあの方で、でもあの方はきっと何も知らないのです。私があの時の子だということも、ブロンドだと言っても、落ち着いていました」
スノーが酷く驚いたのは、自分を探していたのこともあるが、トーマが見覚えのある顔だったからだ。
「確かにそうだけど…でも」
「いいのです。あの置き去りの理由が明らかになれば、それでいいのです。ようやく、元の姿に戻る決心が付きました」
「捕まったらと思っていたの?」
「はい…トイズ様とカーラさんのおかげで、恐ろしい記憶ではなかったのですが、御者のことは怖かった…」
「スノー…」
「でも、トイズ様が指示したことだったらと思ったら、ショックではありましたが、良かったと思う自分もいたのです。しかも間違えられたのならば、私は関係ないかもしれない。そしてトーマさんで、ようやく全て繋がりました」
これであの日の誰か分からない人は、スノーの中から全員いなくなった。
「じゃあ、本当にトイズが…」
「そういうことでしょう。弁護士事務所は、次の休みでいいですか?」
「ええ、勿論よ。私が連絡しておきますから」
次の休みに、アンリだけでなく、オブレオも一緒にアンダーソン弁護士事務所に向かうことになった。
スノーの髪色は、元通りという訳ではないが、除去剤というものを使って、ブロンドと言って差し支えないほど、元の髪色の近い状態に戻っていた。
「久し振りに見たわね」
「はい、私もです」
「こうやって見ると、オブレオに似ているのね。やっぱり本来の色の方が似合うわ」
「まだ慣れませんけど、日に日に戻っております」
スノーとオブレオは、同じブロンドで、薄いブルーの瞳をしていた。母が同じブロンドを受け継いでおり、瞳の色は父のブルーだと思っていたが、オブレオも同じ色であった。
「アンリ様、ご無沙汰しております」
アンダーソン弁護士事務所に着くと、所長が直々に迎えにやって来て、所長にしてみれば、アンリは雲の上のような存在である。
「ええ、今日はお世話になるわね」
「パーシス・ダオラと申します」
小柄な男性が所長の横で、頭を下げた。
「あなたが!今日はよろしくお願いしますわね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
所長はオブレオに挨拶しており、スノーは弁護士事務所など初めて来たので、居たたまれない気持ちになっていた。
おそらく一番上等な部屋に通され、ダオラ弁護士を前に3人は腰を下ろした。
「こちらがカーラ様から預かった手紙です。お金は既にスノー様の口座を作ってあります」
「お金?」
「お金とはどういうことです?」
「はい、お金を一緒に預かっております。トイズ・オスレ様からもです」
「オスレ伯爵からも?」
「はい、トイズ・オスレ様からはスノー様が結婚する際にと言われておりました。もしも結婚しなかった場合は、25歳になる年に渡すようにと言われておりました。カーラ様はそちらに追加されたような形になります。こちらが預かり証です」
目の前に出された紙にはトイズ・オスレから3千万、カーラから100万と書かれていた。
「こんなお金を…」
「私に連絡がなかったのも、言われたから?」
「はい、ですが渡す際にはアンリ様にお話することになっておりました」
「そう…」
やはりいずれ全てが導かれるようになっていたのだと思った。
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