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戸惑
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「いわゆる興奮剤、麻薬みたいなものだよ」
「…ああ」
それならば、スノーも見たこともないが、聞いたことはある。
「まさか興味があるのか?」
リアンスは飲ませたい相手がいるのかと、焦った。
「危険なものだよ、使って襲ったり、既成事実を作ろうとしたり、意識が朦朧として、何も覚えていないということもある」
「覚えていない?」
「そうらしい、怖いだろう?」
「使おうと思ったことも、見たこともありません」
「それでいいと思う」
好きな相手がいるような素振りも、使うような女性でないと分かっているが、なぜそんなことを言い出したのだろうか。
「親子鑑定というのは、最近出来たのですか?」
「いや、20年前くらいから精度は下がるがあったらしい」
「そうなのですか?利用することは可能なんですか?」
「伝手があれば可能だろうな、今回も王妃陛下の伝手で、ランドマーク前侯爵が動いたそうだから。何か気になることがあるのか?」
「い、いえ」
答えが出るとは思えないことで、考えが纏まらない状態なだけである。
「それならいいが、何かあるなら言ってくれ」
「はい…」
「あと、ルミアーノ元王女に会うようなことはないと思うが、関わらない方がいい」
「え?」
「王女だったから関わることがあったが、唯一の王女なのだからと我儘で、王子殿下たちも助けになろうなんて考えもしなかった」
王子殿下と、ルミアーノは良好な関係とは言えなかった。
異母兄妹だから仕方ないと割り切ってはいたが、妹ですらないと分かってからは、良かったと思ったくらいだった。
「そうなのですか」
「ああ、これからは大人しくしていないと、修道院だからな。改善されるといいが、誰も娶ろうなんて思わないだろうな」
「そうですよね…修道院に行かれるのかと思っていました」
「勧めたそうだが、本人が嫌がったらしい。表に出れば、托卵だと言われるだろうに、王宮暮らしの弊害なのか、何を考えているのか…」
今まで守られる場所に居て、現実が見えていないだけなのかもしれない。
「ブロンドなんですよね?」
「え?ああ、憧れるよ」
「そうなのですか?」
「黒髪は鋭く、厳しくみられるんだ。だから、ダリアにメリーアン夫人と羨ましいと言っていたくらいだ」
トイズもダリアもブロンドだった、そしてルミアーノも、そして私も母も、珍しいことではない。それなのに、なぜこんなにも気になるのか。
「子どももブロンドがいいと言っていたよ。気持ちは分かるけど、元気であればいいだろうとは言ったんだけどね。どうもメリーアン夫人に御母上がずっとブロンドが良かったと言っていたようで、親子二代でブロンドに憧れがあったようでね」
「憧れが…」
「ユーフレット侯爵がブロンドなのですか?」
「いや、違うな」
トイズのブロンド…そう考えるべきなのだろうか、心を残したまま結婚させられ、厳しい環境にいたとしたら、元婚約者を思い出すことも多かったはずだ。
「そうですか、ああ…もしかしたら、ユーフレット侯爵夫人と元側妃は、境遇が似ていたのかもしれませんね。婚家で厳しい目に遭ったのではありませんか」
「それはあるかもしれないな…正直、仮初でも婚約の際に渋られた理由はユーフレット侯爵夫人のことだったからな」
「え?」
公爵家と侯爵家で、渋られた婚約だったとは思わなかった。
「正直、メリーアン夫人には悪いが、今でも評判は良くない。自分の世界で生きているような人なんだ、メリーアン夫人はまともなんだけどな…だから解消した時に、両親は喜んでいた」
「私の母も似たようなものだと思いますが…」
「いや」
「お調べでしょう?」
いくらランドマーク侯爵家で過ごしていたとしても、レリリス伯爵家のことを調べないはずがない。
「…ああ」
それならば、スノーも見たこともないが、聞いたことはある。
「まさか興味があるのか?」
リアンスは飲ませたい相手がいるのかと、焦った。
「危険なものだよ、使って襲ったり、既成事実を作ろうとしたり、意識が朦朧として、何も覚えていないということもある」
「覚えていない?」
「そうらしい、怖いだろう?」
「使おうと思ったことも、見たこともありません」
「それでいいと思う」
好きな相手がいるような素振りも、使うような女性でないと分かっているが、なぜそんなことを言い出したのだろうか。
「親子鑑定というのは、最近出来たのですか?」
「いや、20年前くらいから精度は下がるがあったらしい」
「そうなのですか?利用することは可能なんですか?」
「伝手があれば可能だろうな、今回も王妃陛下の伝手で、ランドマーク前侯爵が動いたそうだから。何か気になることがあるのか?」
「い、いえ」
答えが出るとは思えないことで、考えが纏まらない状態なだけである。
「それならいいが、何かあるなら言ってくれ」
「はい…」
「あと、ルミアーノ元王女に会うようなことはないと思うが、関わらない方がいい」
「え?」
「王女だったから関わることがあったが、唯一の王女なのだからと我儘で、王子殿下たちも助けになろうなんて考えもしなかった」
王子殿下と、ルミアーノは良好な関係とは言えなかった。
異母兄妹だから仕方ないと割り切ってはいたが、妹ですらないと分かってからは、良かったと思ったくらいだった。
「そうなのですか」
「ああ、これからは大人しくしていないと、修道院だからな。改善されるといいが、誰も娶ろうなんて思わないだろうな」
「そうですよね…修道院に行かれるのかと思っていました」
「勧めたそうだが、本人が嫌がったらしい。表に出れば、托卵だと言われるだろうに、王宮暮らしの弊害なのか、何を考えているのか…」
今まで守られる場所に居て、現実が見えていないだけなのかもしれない。
「ブロンドなんですよね?」
「え?ああ、憧れるよ」
「そうなのですか?」
「黒髪は鋭く、厳しくみられるんだ。だから、ダリアにメリーアン夫人と羨ましいと言っていたくらいだ」
トイズもダリアもブロンドだった、そしてルミアーノも、そして私も母も、珍しいことではない。それなのに、なぜこんなにも気になるのか。
「子どももブロンドがいいと言っていたよ。気持ちは分かるけど、元気であればいいだろうとは言ったんだけどね。どうもメリーアン夫人に御母上がずっとブロンドが良かったと言っていたようで、親子二代でブロンドに憧れがあったようでね」
「憧れが…」
「ユーフレット侯爵がブロンドなのですか?」
「いや、違うな」
トイズのブロンド…そう考えるべきなのだろうか、心を残したまま結婚させられ、厳しい環境にいたとしたら、元婚約者を思い出すことも多かったはずだ。
「そうですか、ああ…もしかしたら、ユーフレット侯爵夫人と元側妃は、境遇が似ていたのかもしれませんね。婚家で厳しい目に遭ったのではありませんか」
「それはあるかもしれないな…正直、仮初でも婚約の際に渋られた理由はユーフレット侯爵夫人のことだったからな」
「え?」
公爵家と侯爵家で、渋られた婚約だったとは思わなかった。
「正直、メリーアン夫人には悪いが、今でも評判は良くない。自分の世界で生きているような人なんだ、メリーアン夫人はまともなんだけどな…だから解消した時に、両親は喜んでいた」
「私の母も似たようなものだと思いますが…」
「いや」
「お調べでしょう?」
いくらランドマーク侯爵家で過ごしていたとしても、レリリス伯爵家のことを調べないはずがない。
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