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聞取

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「そうなりますよね…詳しい事情は話せませんが、ランドマーク侯爵家が最適だったからと答えるしかないです」
「そうか…」
「申し訳ありません」
「いや、構わない」

 そのやり取りで、リアンスはランドマーク侯爵家に話を聞きに行くことを決め、スノーに追及することはしなかった。

 気まずそうなスノーの空気を変えようと、追加のコーヒーを持って来させると、スノーは給仕を目で追っていた。

「今の給仕に何かあるのか?知り合いということはないだろう?」
「いっ、いえ、新しい方だなと思っただけです」
「そうか」

 スノーと別れて、ランドマーク侯爵家に手紙を書き、会うことになった。対応してくれたのは、一番会いたかったアンリ・ランドマーク前侯爵夫人だった。

「ローザ公爵家の方が、スノーについて、どのようなご用件でしょうか」

 手紙にはスノー・レリリス伯爵令嬢のことで、話を聞きたいと書いた。だからこそ、前侯爵夫人が対応することになったのだろう。

「私はスノー・レリリス伯爵令嬢と婚約をしたいと思っています」
「あの子は、伯爵家ですよ」

 そう言った口調は、たかが伯爵家という含みもあった。

「理解しています。ですが、彼女は優秀です。ランドマーク侯爵家のおかげでもあるでしょう。夫人も教育をされたのですよね」
「そうですが…それでも、あの子はレリリス伯爵令嬢です」
「そう言って聞かせたのですか?」

 アンリは表情は変えなかったが、じっとリアンスを見つめた。

「悪いことではないでしょう?侯爵家で過ごしたからと、侯爵家の人間だと思ったら、可哀想ではありませんか?」

 確かに他家に預けられて、調子に乗るような令嬢だったら、そうだろう。

「確かにそうかもしれませんが、彼女は驕るような質ではありません。違いますか?」
「それでもです。まさかランドマーク侯爵家の養子にして、そちらに嫁がせようと思ってらっしゃるのですか」
「いいえ、私は話を聞きたいと手紙に書いたはずです。そのような願いは当主でもない私に、そのような権限はありません」

 そう思われてしまうのではないかと思っていたが、嫡男というだけで、当主でもない私が他家に養子などと言えるはずがない。

「さようでございますね」
「夫人はスノー嬢は、公爵家に相応しくないと思いますか?爵位の差があると苦労すると、スノー嬢にお教えになられていますよね?」
「ええ、今は昔より、随分と寛容にはなっているそうですが、根本は間違っているとは思いませんわ。苦労するのは嫁いだ方になることに変わりはないでしょう?」
「それは変わらない部分ですね、でも私はスノー嬢が気に入り、彼女ならば、公爵家でもやっていけると思っています」

 社交が得意ではないと言っていたが、だからパーティーなどに参加せずにいる。彼女も言っていたが、慣れるしかない場所で、今までランドマーク侯爵家にいたこともあり、勝手に参加することは出来なかっただろう。

「彼女が夫人と同じ公爵令嬢だったら、素直に喜べますか?」
「爵位が同じですから、問題はないと判断すると思います」
「夫人にとって、スノー嬢はどういう評価ですか?教育された方に聞いてみたかったのです」

 今日聞きたいことの一つでもあった。公爵令嬢で、侯爵夫人となった、夫人は血の繋がらない孫・スノーをどう評価していたのか。

「悪くはないと思いますが、それでも爵位はどうにかなるものではありませんから」
「夫人はスノー嬢が嫌いなわけではないのですね」
「っな、そうです。嫌うようなことは、ありません」

 言葉に詰まり焦る姿に、リアンスはスノーを嫌っている可能性もあると思ったが、そうではないのだと実感した。
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