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第22話
召喚姫10(アザンゼル王国)
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「こちらの国の方はどのくらい魔力を持つ方がいるんですか?」
「基本的にはほぼ全員持っています。持っていないのは他国の方や、他国の方同士との間に生まれた子などでしょうか?勿論、迫害されるようなことはありませんし、ただ当国としてはとても珍しいとされます」
「えっ!じゃあ、先程の王太子様ともう一人の方も?」
「はい、お持ちです」
レイ・スズキの野望は既婚者だと聞く前に、打ち砕かれた。
「もしこの国で私と結婚したいという人が現れても、魔力があったら、子どもは持てないということですか」
「ええ、難しいでしょう」
正確に言えば、子どもはおろか、結婚もエメラルダ王国では難しいが、説明する必要はないだろう。
「聖女なのに?」
「ええ、あなたは不思議に出来ております。受け入れる器は無いが、魔力は使えるそうですね」
セナリアンは、おそらく持って生まれるものではなく、外部魔力を吸収して、一時的に利用するというものだろうと考えている。
ゆえに本人は自覚もなく、どうやっているのかも説明が出来ない。
だが、魅了を持っていたことは事実で、ギフトと言われればそれまでだが、器がないのに、どうやって維持しているのか、不可解なことも多かった。
「はい、だから魔力というものもあるとばかり。器というのは?」
「説明不足でした、当国では女性の持つ、受け入れる魔力のことを器と言います」
「努力や勉強で持つことは可能なんですか」
「不可能でしょう。持って生まれたものですので、あなたにはそれがないのです。勿論、性行為を行わなければ大丈夫ですが」
「性行為が全てでは無いと思いますけど、愛し合っていても、その器がないってなったら別れるんですか」
いくら好かれても、引き裂かれてしまうというのか。レイ・スズキは魅了を封じているはずが、自身は愛される存在だと信じている。
「それでも愛し合いたいということでなければ、そうなるかもしれませんね」
「難しい国なんですね」
「閉鎖的に思われるかもしれませんが、当国では魔力の恩恵を受けているので、子どもの頃から当たり前にこのことを学ぶのです。勿論、あなたのように他国の方の受け入れもしております。ゆえに説明に上がった次第でございます」
「あっ、アザンゼル王国?ではどうなんでしょうか?」
「私としては、魔力のない方との関係をお勧めします」
アザンゼル王国も召喚をしたくらいなので、魔力のある者はいる。
その者と関係を持つことは、何が起こるか分からないため、お勧めは出来ない。アザンゼル王国にも伝える予定である。
「何か他に質問はありますか」
「…えっと、もし、してしまったらどうなるのでしょう?」
求めあってしまうこともあるかもしれないと、一応聞いてみることにした。
「あなたの場合はどうなるか分かりませんので、しないことが自分も守るためでもあるのです。薬物のようなものですから、快楽のために壊れていく女性もおります」
「…怖いですね」
「学んでいるはずなのに、理解していないものが過ちを犯すのです」
レイ・スズキはリスルート殿下に、とりあえずアザンゼル王国に帰って考えてみたいと言い、理論上は元の世界に戻すこともセナリアンには可能だと分かったが、強く戻りたいということもなさそうだった。
魔術師のスピナがレイ・スズキを部屋に送ることになった。
「ご納得いただけましたか」
「…はい、そうですね」
「公爵家の彼をを気にしてらしたようですが?」
「あっ、かっこいいなと思っていただけです」
さすがにこの国で初めての聖女として崇められて、マージナル様と結婚したいと思っていたとは言えなかった。
「彼は私の遠縁なのです」
「そう、だったんですね」
「既婚者で二人の子持ちですよ」
「そうだったんですか!お恥ずかしいです」
「人気がありましたからね、無理もないと思います」
これで終わりだと思ったが、翌日、新たな事実が判明するのだった。
「基本的にはほぼ全員持っています。持っていないのは他国の方や、他国の方同士との間に生まれた子などでしょうか?勿論、迫害されるようなことはありませんし、ただ当国としてはとても珍しいとされます」
「えっ!じゃあ、先程の王太子様ともう一人の方も?」
「はい、お持ちです」
レイ・スズキの野望は既婚者だと聞く前に、打ち砕かれた。
「もしこの国で私と結婚したいという人が現れても、魔力があったら、子どもは持てないということですか」
「ええ、難しいでしょう」
正確に言えば、子どもはおろか、結婚もエメラルダ王国では難しいが、説明する必要はないだろう。
「聖女なのに?」
「ええ、あなたは不思議に出来ております。受け入れる器は無いが、魔力は使えるそうですね」
セナリアンは、おそらく持って生まれるものではなく、外部魔力を吸収して、一時的に利用するというものだろうと考えている。
ゆえに本人は自覚もなく、どうやっているのかも説明が出来ない。
だが、魅了を持っていたことは事実で、ギフトと言われればそれまでだが、器がないのに、どうやって維持しているのか、不可解なことも多かった。
「はい、だから魔力というものもあるとばかり。器というのは?」
「説明不足でした、当国では女性の持つ、受け入れる魔力のことを器と言います」
「努力や勉強で持つことは可能なんですか」
「不可能でしょう。持って生まれたものですので、あなたにはそれがないのです。勿論、性行為を行わなければ大丈夫ですが」
「性行為が全てでは無いと思いますけど、愛し合っていても、その器がないってなったら別れるんですか」
いくら好かれても、引き裂かれてしまうというのか。レイ・スズキは魅了を封じているはずが、自身は愛される存在だと信じている。
「それでも愛し合いたいということでなければ、そうなるかもしれませんね」
「難しい国なんですね」
「閉鎖的に思われるかもしれませんが、当国では魔力の恩恵を受けているので、子どもの頃から当たり前にこのことを学ぶのです。勿論、あなたのように他国の方の受け入れもしております。ゆえに説明に上がった次第でございます」
「あっ、アザンゼル王国?ではどうなんでしょうか?」
「私としては、魔力のない方との関係をお勧めします」
アザンゼル王国も召喚をしたくらいなので、魔力のある者はいる。
その者と関係を持つことは、何が起こるか分からないため、お勧めは出来ない。アザンゼル王国にも伝える予定である。
「何か他に質問はありますか」
「…えっと、もし、してしまったらどうなるのでしょう?」
求めあってしまうこともあるかもしれないと、一応聞いてみることにした。
「あなたの場合はどうなるか分かりませんので、しないことが自分も守るためでもあるのです。薬物のようなものですから、快楽のために壊れていく女性もおります」
「…怖いですね」
「学んでいるはずなのに、理解していないものが過ちを犯すのです」
レイ・スズキはリスルート殿下に、とりあえずアザンゼル王国に帰って考えてみたいと言い、理論上は元の世界に戻すこともセナリアンには可能だと分かったが、強く戻りたいということもなさそうだった。
魔術師のスピナがレイ・スズキを部屋に送ることになった。
「ご納得いただけましたか」
「…はい、そうですね」
「公爵家の彼をを気にしてらしたようですが?」
「あっ、かっこいいなと思っていただけです」
さすがにこの国で初めての聖女として崇められて、マージナル様と結婚したいと思っていたとは言えなかった。
「彼は私の遠縁なのです」
「そう、だったんですね」
「既婚者で二人の子持ちですよ」
「そうだったんですか!お恥ずかしいです」
「人気がありましたからね、無理もないと思います」
これで終わりだと思ったが、翌日、新たな事実が判明するのだった。
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