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第19話

綻びのない国なんてない13(ノイザール王国)

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「国王陛下、きちんとお伝えした方がいいです。彼女の今後のためにも」
「ああ、そうだな。ロッパー子爵令嬢」

 陛下がチュリルを見る視線は、いつもなら尊敬するような、喜びに満ちた表情だったはずが、今日は違った。

「私は君を魅了もあってか、過剰に評価し過ぎたようだ。王太子の婚約者に据える考えは改める。無意識とはいえ、私以外にも掛った者も多くいる、反省をするように」
「そんな…待ってください」

 陛下だけが頼りだったチュリルには絶望的な言葉だっただろう。陛下が評価してくれていたからこそ、皆に馴れ馴れしい振る舞いが許されていたのだ。

「君は申し訳なかったと反省してすべきだろう」
「王太子様まで…酷い、私のせいじゃないのに」
「このまま魅了で操って、国を乱せば、それこそ死罪ですよ?早く分かって良かったと思うべきではありませんか?それともあなたはそれが理想とでもおっしゃるの?」
「そ、そんなことは考えていません」
「では、良かったと思えばいいではありませんか」
「…はい」

 学園でも話をしていると意思を通そうとして、臭くなることもあって、信者はほぼいなくなっており、最近ではお似合いだと言われることもなくなっていた。

 魅了は無意識だったために公表はされなかったが、全属性持ちだということは有名になっていたので、鑑定で光属性は本当に消えており、再度鑑定の結果、光属性はなかったとされた。

 チュリルも自身で公表することは自由だと言われたが、魅了はイメージが悪い、私に操られたと知られたら怒る人もいるかもしれないと話すことは出来なかった。

 それでも五つの属性も珍しいことは事実だが、いないわけではない。十分私は魅力的だと思っていたが、臭いことで周りは離れて魅了が薄れた状況で、セナリアンが王宮と、学園に魅了の解除を行ったおかげで、どうしてあんなにお似合いだと思えたのかという者も多かった。

 チュリルは自身のせいではなく、誤りだったことを武器に、悲劇のヒロインの様に、落ち込んで見せるようになった。

「全属性持ちではなかったから」
「…五属性も凄いよ」
「でも、やっぱり全属性とは違うわよね」
「…そうかもね」

「やっぱり私では無理だったのね」
「…殿下が慕ってらっしゃいますからね」
「最初から私が入る隙なんて無かったんだわ」
「…そうですね」

 違う、そんなことない、チュリルは何も変わらない、王太子に相応しいのはチュリルだと言って欲しいのに、誰も言ってくれない。

 前ならば、周りがチュリルが言って欲しい言葉を言ってくれていたが、もう意思を通す魅了が効かないので、ただの子爵令嬢でしかない。

 王太子と公爵令嬢の婚約はようやく結ばれ、公爵令嬢は属性は水だけだが、魔力量が多い。

 チュリルの価値を下げたおかげもあり、二人の婚約は同世代にも祝福され、いくら全属性持ち、いや五属性持ちでも、子爵令嬢では分不相応だったという流れになってしまい、チュリルも陛下も認めたとなれば、もう意見を申せる立場でも家でもない。

 親も全属性持ちではなかったのだからと納得していたが、チュリルは光属性を失ったせいだと憎み、陛下の後押しもあったおかげで、自身の意見を話すばかりで、強化するような鍛錬をすることもなかった。

 子爵家も全属性持ちということで陞爵したため、男爵家に戻ることも決まり、家族からもしっかりしろと、褒め称えられるだけではなくなった。 

 チュリルが気持ちを切り替えらるかは、彼女次第だろう。

 魅了を封じた書類を作って置かなければならないため、魔法省に戻ったセナリアンとイヴァン。

「ありがとう、感謝する」
「魅了を封じることはイヴァンにも出来るのだから、私がいなくても良かったんじゃない?本当に会わなくて良かったの?」
「セナがいたから冷静になれた。まだ元気そうだったから、いつか手紙でも書いてみるよ」

 もう自身の国ではないという感覚なのか、確執は根深いのかもしれないが、そう言ったイヴァンの顔は晴れやかであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お気に入りに入れていただいている皆様、誠にありがとうございました。

ノイザール王国編はこれで終わりとさせていただきます。
明日からは閑話を投稿させていただきます。

そして、また清書出来ましたら、順次投稿させていただきます。

よろしくお願いいたします。
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