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第19話
綻びのない国なんてない7(ノイザール王国)
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「初めまして、チュリル・ロッパーです。魔法省の方なんて緊張します。お手柔らかにお願いします」
「話を聞くだけですから、お座りください」
部屋にはセナリアンとイヴァン、チュリルに、宰相が同席することになった。
「男女平等、爵位だけで判断するのではなく、自分の能力で評価された方がいいと訴えているのですよね?」
「はい、その方がいいと思いませんか」
「優秀な人材ならばそうですね」
「そうですよね!良かった」
チュリルはセナリアンに満面の笑みを向け、ふふふと言いながら嬉しそうにしている。魔法省にも認められたなんて、思っているのだろうとイヴァンは思っていた。
「あとは好きな相手と爵位に関係なく結婚する方がいい、でしたか?」
「好きな方と結婚できないなんて不幸です!そう思いませんか」
チェリルは両手を重ねて、うるうるとした瞳で、セナリアンを見ており、イヴァンはセナリアンの表情が崩れないのはやはり貴族令嬢だなと感心していた。
「好きだという気持ちだけあればいいのかしら?」
「はい!それがあれば、きっとお互いのために頑張れます」
「それはお互いが想いあっている場合よね?片方が想っているだけではなく」
「はい!もちろんです」
恋愛結婚したいと言い、王太子には好きな相手がいるなら、自分は身を引くつもりだと言いようにも聞こえるが、セナリアンは心眼を使わずとも表情から察するに、そうではないことがありありと分かる。
「で、あなたはどうしたいの?」
「国王陛下は私と王太子様が結婚して欲しいとおっしゃって、私もお受けしようと思っています」
はあ?と声に出さなかったのは、こういった自分は特別だからという類の人間に出くわすからであろう。
「まあ、自分は当てはまらないということを言いたいのね?」
「ち、違います。だって、好きな方と結婚です」
「あなたが、でしょう?」
どう考えても自分だけにしか利がない、しかも私が好きだからいいんですという健気なタイプにも見えない。愛されないわけがないというよりは、きっと愛するようになると信じているように見える。
「確かに、王太子様が今は私より好きな方がいるのは分かっています。でも国王陛下が願われているのです。だから受け入れて下されば…」
「それは好きな方との結婚ではなく、真反対の政略結婚でしょう?」
「違います!私を見て下されば、好きな方との結婚です」
「今でも見てはもらえているのではありませんか」
「もっと深くです。色んなことを知り合えば、良いところが分かって来るはずです」
やっぱりとしか思えない、とても自分の都合の良い解釈に、物語が出来上がっているのだろう。正直、魅了が無意識に使われているのは分かっている。イヴァンにも事前調べの段階で話してある。
無意識なので強いものではなく、多少の好意がないと掛からない類のものだ。
封じるのは容易だが、陛下と約束したので、まだ封じないでおくが、関わらなければ消えていく、依存するほどのものではない。
エメラルダでは、魅了は若さをすり減らして作るとされている。いつ発現して使っているのかが分からないが、可能性を考えれば早めに対処した方がいい。魅了も全員が分かるわけではない、不快感で感じたり、目に見えたりとさまざまである。
光魔法に付随していると考えるのが一般的だ。封じてしまえば、光は消える可能性が高い。
そして、様子を見ても分かるように、おそらく王太子には散々掛けたのだろう、だが一切の好意がないせいか、他に想い人がいるせいか、全く掛かっていなかった。
陛下は掛かっていないとは言えない状況だった。好意を持つという点では掛かっていないが、お互いの利のために、過信しているという点では掛かっている。
「話を聞くだけですから、お座りください」
部屋にはセナリアンとイヴァン、チュリルに、宰相が同席することになった。
「男女平等、爵位だけで判断するのではなく、自分の能力で評価された方がいいと訴えているのですよね?」
「はい、その方がいいと思いませんか」
「優秀な人材ならばそうですね」
「そうですよね!良かった」
チュリルはセナリアンに満面の笑みを向け、ふふふと言いながら嬉しそうにしている。魔法省にも認められたなんて、思っているのだろうとイヴァンは思っていた。
「あとは好きな相手と爵位に関係なく結婚する方がいい、でしたか?」
「好きな方と結婚できないなんて不幸です!そう思いませんか」
チェリルは両手を重ねて、うるうるとした瞳で、セナリアンを見ており、イヴァンはセナリアンの表情が崩れないのはやはり貴族令嬢だなと感心していた。
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「それはお互いが想いあっている場合よね?片方が想っているだけではなく」
「はい!もちろんです」
恋愛結婚したいと言い、王太子には好きな相手がいるなら、自分は身を引くつもりだと言いようにも聞こえるが、セナリアンは心眼を使わずとも表情から察するに、そうではないことがありありと分かる。
「で、あなたはどうしたいの?」
「国王陛下は私と王太子様が結婚して欲しいとおっしゃって、私もお受けしようと思っています」
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「あなたが、でしょう?」
どう考えても自分だけにしか利がない、しかも私が好きだからいいんですという健気なタイプにも見えない。愛されないわけがないというよりは、きっと愛するようになると信じているように見える。
「確かに、王太子様が今は私より好きな方がいるのは分かっています。でも国王陛下が願われているのです。だから受け入れて下されば…」
「それは好きな方との結婚ではなく、真反対の政略結婚でしょう?」
「違います!私を見て下されば、好きな方との結婚です」
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やっぱりとしか思えない、とても自分の都合の良い解釈に、物語が出来上がっているのだろう。正直、魅了が無意識に使われているのは分かっている。イヴァンにも事前調べの段階で話してある。
無意識なので強いものではなく、多少の好意がないと掛からない類のものだ。
封じるのは容易だが、陛下と約束したので、まだ封じないでおくが、関わらなければ消えていく、依存するほどのものではない。
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そして、様子を見ても分かるように、おそらく王太子には散々掛けたのだろう、だが一切の好意がないせいか、他に想い人がいるせいか、全く掛かっていなかった。
陛下は掛かっていないとは言えない状況だった。好意を持つという点では掛かっていないが、お互いの利のために、過信しているという点では掛かっている。
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