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第18話
彼女の友人3
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「ハルリット・カイラン様?」
「はい、あっ、ノエルのお姉様!失礼しました、グロー様」
ハルリットは何度かノエルを通じて、セナリアンに会ったことがあるが、グロー公爵家に嫁がれてからは初めてであった。普段はそうは思わないが、時折緊張感のある方である。ノエルも本当に怖いのはリリアンネ王太子妃殿下ではなく、セナリアン姉様の方だと言っていた。
「いえいえ、セナリアンでいいですわ。今日はノエルと来たのだけど、お話はもうされたかしら?」
「いえ、まだです。是非にと思っておりました」
「まあ、それはノエルが喜ぶわ。私ね、実はアドノとリクア夫妻と友人で、あなたのお祖母様のリドーラ様ともお会いしたことあるの。素敵な方ですわよね」
セナリアンは片手を頬に当て、嬉しそうな表情をしている。
「そうでしたか、粗相がなかったらいいのですが…」
「ふふふ、豪胆さが良いところじゃない!」
「まあ、そうなんですけど、婆は今こそお転婆になるわって元気いっぱいなんです。父がやめてくれとよく叫んでおります」
「まあ、まあ、ふふふ。それは目に浮かぶようですわ。またリクアとお邪魔させてもらおうかしら」
「是非いらしてください。祖母も喜びます」
リクアが二人の様子を見ていると、ハルリットの顔がどんどん楽しくなっているのが分かる。セナリアンは令嬢の姿でも分け隔てることがないので、とても話しやすい人物である。そして、その様子をミディアーナが睨み付けており、本当に食いついたと、ほくそ笑んだ。
「そろそろね、カイラン様、ちょっと巻き込みますわ。いいところで、グローの名前を出していただける?」
「えっ、どういう…」
答えを貰う前にハルリットとセナリアンの間に、両手を組みながらミディアーナが入り込んだ。
「ハルリット様、今夜の思い出に踊って頂けませんか」
セナリアンを横から押し退け、セナリアンはクラっと体制を崩した振りをした。
ハルリットは慌てて手を貸そうと思ったが、セナリアンは目を見つめて軽く首を横に振り、おそらく何かする気なのだと思い当たった。先ほど、アドノ兄さんと友達だと言ったのは、このことも分かっていたのだろうと察し、手を引っ込めた。
「先ほど、お断りしたはずですが、聞こえていなかったのですか。そもそもあなたに名前を呼ばれる筋合いはありません」
「そんな、思ってもいない、悲しいこと言わないでくださいませ。私とハルリット様の仲ではありませんか」
「どんな仲だと言うのですか?」
「そんなぁ、言わせないでください」
何やらもじもじしながら、くねくねしており、セナリアンは隠す気もなく、本当に虫けらを見るような顔をしていた。
「誤解を招くような言い方は止めてください」
「誤解じゃありませんでしょう、踊りながらお話しましょう。きっと楽しいですわ」
「いいえ、先ほども断りましたが、再度、断固お断りします!楽しく話をしているのに、遮ってまでどういうつもりですか」
「そんな怒らないでください、素敵なお顔が台無しですわ。ふっ、お姉様、申し訳ありません。御年なのではないですかぁ」
ミディアーナはセナリアンを見て、にっこりと笑ったが、セナリアンは一切表情を変えず、どこに庇護欲があるのだと全く分からなかった。
「カイラン様、この方はお知り合い?」
「グロー様、巻き込んでしまい、申し訳ありません。知り合いではありません」
「いえ、ハルリット様のせいではないでしょう。あなたおいくつ?こんなことが許されるのは幼子と呼ばれる者だけですわよ?しかも、お姉様なんて呼ばれたら、アローラが怒ってしまうわ」
「グロー…こうしゃ…く…」
「はい、あっ、ノエルのお姉様!失礼しました、グロー様」
ハルリットは何度かノエルを通じて、セナリアンに会ったことがあるが、グロー公爵家に嫁がれてからは初めてであった。普段はそうは思わないが、時折緊張感のある方である。ノエルも本当に怖いのはリリアンネ王太子妃殿下ではなく、セナリアン姉様の方だと言っていた。
「いえいえ、セナリアンでいいですわ。今日はノエルと来たのだけど、お話はもうされたかしら?」
「いえ、まだです。是非にと思っておりました」
「まあ、それはノエルが喜ぶわ。私ね、実はアドノとリクア夫妻と友人で、あなたのお祖母様のリドーラ様ともお会いしたことあるの。素敵な方ですわよね」
セナリアンは片手を頬に当て、嬉しそうな表情をしている。
「そうでしたか、粗相がなかったらいいのですが…」
「ふふふ、豪胆さが良いところじゃない!」
「まあ、そうなんですけど、婆は今こそお転婆になるわって元気いっぱいなんです。父がやめてくれとよく叫んでおります」
「まあ、まあ、ふふふ。それは目に浮かぶようですわ。またリクアとお邪魔させてもらおうかしら」
「是非いらしてください。祖母も喜びます」
リクアが二人の様子を見ていると、ハルリットの顔がどんどん楽しくなっているのが分かる。セナリアンは令嬢の姿でも分け隔てることがないので、とても話しやすい人物である。そして、その様子をミディアーナが睨み付けており、本当に食いついたと、ほくそ笑んだ。
「そろそろね、カイラン様、ちょっと巻き込みますわ。いいところで、グローの名前を出していただける?」
「えっ、どういう…」
答えを貰う前にハルリットとセナリアンの間に、両手を組みながらミディアーナが入り込んだ。
「ハルリット様、今夜の思い出に踊って頂けませんか」
セナリアンを横から押し退け、セナリアンはクラっと体制を崩した振りをした。
ハルリットは慌てて手を貸そうと思ったが、セナリアンは目を見つめて軽く首を横に振り、おそらく何かする気なのだと思い当たった。先ほど、アドノ兄さんと友達だと言ったのは、このことも分かっていたのだろうと察し、手を引っ込めた。
「先ほど、お断りしたはずですが、聞こえていなかったのですか。そもそもあなたに名前を呼ばれる筋合いはありません」
「そんな、思ってもいない、悲しいこと言わないでくださいませ。私とハルリット様の仲ではありませんか」
「どんな仲だと言うのですか?」
「そんなぁ、言わせないでください」
何やらもじもじしながら、くねくねしており、セナリアンは隠す気もなく、本当に虫けらを見るような顔をしていた。
「誤解を招くような言い方は止めてください」
「誤解じゃありませんでしょう、踊りながらお話しましょう。きっと楽しいですわ」
「いいえ、先ほども断りましたが、再度、断固お断りします!楽しく話をしているのに、遮ってまでどういうつもりですか」
「そんな怒らないでください、素敵なお顔が台無しですわ。ふっ、お姉様、申し訳ありません。御年なのではないですかぁ」
ミディアーナはセナリアンを見て、にっこりと笑ったが、セナリアンは一切表情を変えず、どこに庇護欲があるのだと全く分からなかった。
「カイラン様、この方はお知り合い?」
「グロー様、巻き込んでしまい、申し訳ありません。知り合いではありません」
「いえ、ハルリット様のせいではないでしょう。あなたおいくつ?こんなことが許されるのは幼子と呼ばれる者だけですわよ?しかも、お姉様なんて呼ばれたら、アローラが怒ってしまうわ」
「グロー…こうしゃ…く…」
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