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第12話
親と子8
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セナリアンは定例会で報告を行い、陛下は親子鑑定の状況が気になっていた。エメラルダでも依頼した者がいると聞いている。
「不正以外は概ね順調です」
「やはり不正が多いのか」
「はい、新しいことは浸透するまでにチャンスですからね、ただの紙きれにお金払って情けないです。許可のない国でも、うちの国は独自に行えるという謳い文句で行われて、魔法省で処罰することになりました」
「罰則はやっぱり魔法省でとなるのだな」
「ええ、相手が魔術師だと百パーセントですね!そうでなくても、ほぼ送り返されて来ます」
「罰則は聞いてもいいのか?」
「ええ、秘匿する気は無いですから。踊れダンス玉とおしゃべりヘドロちゃんです」
「は?」「えっ?」
いつもは冷静なクーリットまでも声を出し、失礼しましたと謝罪した。
「踊れダンス玉は、玉の中で一日十六時間踊り続けるものです。ダンスが上手くなって困る人なんていないでしょう?ひとつのダンスだと、そのダンスに罰のイメージが付くといけませんから、様々なダンスを盛り込みました」
「確かに犯罪には生かせそうにないな」
「あと八時間で食事・排泄、残った時間が睡眠です」
「なるほど、食事・排泄を長引かせると、睡眠が減るのか」
「ええ、最初はやる者もいるでしょうけど、いずれ気付くでしょうから。寝るのも玉の中なので、十六時間経たないと寝れません。臭いのは嫌なので、奇麗にしてから寝させます」
「魔法省ならではであるな」
「ええ、あそこなら管理は容易いですから」
「もう一つのは?」
これですとセナリアンの掌にのる正しく手乗りヘドロ。べっちょりとしていて、深い緑色で目と口のようなものがある。なんかこっち見ている。
「おしゃべりヘドロちゃんです」
『コンニチハ、ワタシハ、ヒトノキモチガワカラナイ、ザイニン。ツミブカキ、ザイニンデス』
非常に機械的で信用できない声色で、本当にそう思っているのかと思わせる。
「ヘドロちゃんを口から飲みます、すると悪意を感じたり、生活魔法以外を使おうとすると、静止させて喋ります」
「おお…悪の実かな?」
悪の実はイバンナ王国でも使われた、シャーロット・マクレガーが考案した怒りや嫉み、殺生などの負の感情を読み取り、体内で育てる実である。育ち切ってしまうと死に至る。
「はい、負の感情はそうです。まずヘドロちゃんの年数を決めて、その間に発動しなければ、消えます。でも発動すれば、また一年と伸びていく。一年我慢すればなんて考えも、また一年伸びていく、更生するための試験みたいなものです」
「執行猶予にも似ておるな」
「はい、でも死にませんからね!あとは父を参考にしたのです」
「ミミスを?」
さすがにタヌキでもないのに、ついにミミスはヘドロまで格下げされてしまったのではないかと不安になった。
「父はお祖父さまとお祖母さまにいつも怒られてて、謝らないんです」
「あれはまだ怒られておるのか」
「はい、お祖父さまとお祖母さまは父が話し出すと、眉間に皺を寄せて、疑いの目をしています」
「ミミス…」
「なので、実は反省もしていない、そういった目で見られることを知るべきだと思って。そうじゃない、違うんだと心から思えればいいなと」
「ほお…ミミスはできるのかの?」
「父はできないでしょうね。お祖父さまとお祖母さまは、諦めてああなったんだと思います。謝らない、反省しないヘドロちゃんを作って父に飲ませたら、お祖父さまとお祖母さまの前で毎日ヘドロちゃんを出しますよ」
評価が酷い!しかしおそらく事実であろうことも知っている。
ミミスは悪事を働くわけではないのだが、陛下もルージエ侯爵夫妻が、迷惑を掛けて申し訳ないと謝っているのを何度も見掛けている。
「でもヘドロちゃんは、ダンス玉で更生していれば、全員ではない予定です」
「ダンスを踊り、ヘドロが出るなんてなれば、再犯は防げそうではあるな」
「そうだといいのですけどね」
今でも不正はあるが、他の犯罪もあるもので、許容範囲だろうというところで落ち着いている。ちなみに再犯は二人だけである。
この罰則、とても気に入られて、他の罪の者にも採用されることとなった。
「不正以外は概ね順調です」
「やはり不正が多いのか」
「はい、新しいことは浸透するまでにチャンスですからね、ただの紙きれにお金払って情けないです。許可のない国でも、うちの国は独自に行えるという謳い文句で行われて、魔法省で処罰することになりました」
「罰則はやっぱり魔法省でとなるのだな」
「ええ、相手が魔術師だと百パーセントですね!そうでなくても、ほぼ送り返されて来ます」
「罰則は聞いてもいいのか?」
「ええ、秘匿する気は無いですから。踊れダンス玉とおしゃべりヘドロちゃんです」
「は?」「えっ?」
いつもは冷静なクーリットまでも声を出し、失礼しましたと謝罪した。
「踊れダンス玉は、玉の中で一日十六時間踊り続けるものです。ダンスが上手くなって困る人なんていないでしょう?ひとつのダンスだと、そのダンスに罰のイメージが付くといけませんから、様々なダンスを盛り込みました」
「確かに犯罪には生かせそうにないな」
「あと八時間で食事・排泄、残った時間が睡眠です」
「なるほど、食事・排泄を長引かせると、睡眠が減るのか」
「ええ、最初はやる者もいるでしょうけど、いずれ気付くでしょうから。寝るのも玉の中なので、十六時間経たないと寝れません。臭いのは嫌なので、奇麗にしてから寝させます」
「魔法省ならではであるな」
「ええ、あそこなら管理は容易いですから」
「もう一つのは?」
これですとセナリアンの掌にのる正しく手乗りヘドロ。べっちょりとしていて、深い緑色で目と口のようなものがある。なんかこっち見ている。
「おしゃべりヘドロちゃんです」
『コンニチハ、ワタシハ、ヒトノキモチガワカラナイ、ザイニン。ツミブカキ、ザイニンデス』
非常に機械的で信用できない声色で、本当にそう思っているのかと思わせる。
「ヘドロちゃんを口から飲みます、すると悪意を感じたり、生活魔法以外を使おうとすると、静止させて喋ります」
「おお…悪の実かな?」
悪の実はイバンナ王国でも使われた、シャーロット・マクレガーが考案した怒りや嫉み、殺生などの負の感情を読み取り、体内で育てる実である。育ち切ってしまうと死に至る。
「はい、負の感情はそうです。まずヘドロちゃんの年数を決めて、その間に発動しなければ、消えます。でも発動すれば、また一年と伸びていく。一年我慢すればなんて考えも、また一年伸びていく、更生するための試験みたいなものです」
「執行猶予にも似ておるな」
「はい、でも死にませんからね!あとは父を参考にしたのです」
「ミミスを?」
さすがにタヌキでもないのに、ついにミミスはヘドロまで格下げされてしまったのではないかと不安になった。
「父はお祖父さまとお祖母さまにいつも怒られてて、謝らないんです」
「あれはまだ怒られておるのか」
「はい、お祖父さまとお祖母さまは父が話し出すと、眉間に皺を寄せて、疑いの目をしています」
「ミミス…」
「なので、実は反省もしていない、そういった目で見られることを知るべきだと思って。そうじゃない、違うんだと心から思えればいいなと」
「ほお…ミミスはできるのかの?」
「父はできないでしょうね。お祖父さまとお祖母さまは、諦めてああなったんだと思います。謝らない、反省しないヘドロちゃんを作って父に飲ませたら、お祖父さまとお祖母さまの前で毎日ヘドロちゃんを出しますよ」
評価が酷い!しかしおそらく事実であろうことも知っている。
ミミスは悪事を働くわけではないのだが、陛下もルージエ侯爵夫妻が、迷惑を掛けて申し訳ないと謝っているのを何度も見掛けている。
「でもヘドロちゃんは、ダンス玉で更生していれば、全員ではない予定です」
「ダンスを踊り、ヘドロが出るなんてなれば、再犯は防げそうではあるな」
「そうだといいのですけどね」
今でも不正はあるが、他の犯罪もあるもので、許容範囲だろうというところで落ち着いている。ちなみに再犯は二人だけである。
この罰則、とても気に入られて、他の罪の者にも採用されることとなった。
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