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第7話

悪魔でもかまわない4(イバンナ王国)

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 時は戻り、王宮に行く前のモンフィルダー伯爵家。セナリアンは静かにアガットの目の前に座り、真っ直ぐ目を見つめた。

「これからも抱え続けるのですか?あなたには想ってくれる家族がいる。事実を話してください」
「…っ」
「アガット?まだ何かあるのか」

 セナリアンは黙って見つめている。

「ごめんなさい、嘘を付きました。手紙の差出人の名前は書いてありました。申し訳ございません」

 アガットに届いた手紙の差出人はジニー・イッツ。実は封筒には名前が書いてあった、敢えてワトンには見せなかった。

「知り合いだったのかしら?」
「いえ、話したことはありませんが、名前と顔は分かります」

 ジニーの方もアガットを人となりを見ており、好感を持っていた。だからこそ、手紙の最後には、あなた様もくれぐれも気を付けて欲しいと書いてあったのだ。

「誰にも相談できなかった。殻弾みな行動を取って、私の家族、ジニーさんの家族まで危険に晒すわけにはいかないと…」
「事実を」
「っ、はい、それは建前…です。でも拘束されていたなんて知らなかった。ジニーは解雇になるだろうと、盗んだ物が戻らなければ、国外追放だと聞いていたんです。ここから離れた方がいいのではないかと浅はかに考えて、なのに自害したと、殺したに決まっています。私が手遅れにしたんです、ごめんなさい、ごめんなさい、私は助けられたかもしれないのに。彼女は助けようとしてくれたのに、あああああ」

 手紙が届いた頃、ジニーは既に拘束されてはいたが、まだ生きていたのだ。ジニーがネックレスを盗んだことは、アガットは王宮のメイドの話から知った。でも保身から何も出来ず、それなのに自分だけ助かろうなんて、正直に話せなかったと、泣きながら謝罪した。

「自らの意思で話してくれて、ありがとうございます」
「わ、私は…」
「あなたが動けば助けられたかもしれない、それは分かりません。でもあなたのせいで、ジニーさんが殺されたわけではありません。これは動かない事実です。一生後悔するもいい、私はあなたがジニーさんを忘れないことが、あなたにできる唯一のことだと思います」

 手紙の字は美しいとは呼べない、書きなぐった字だったが、そこからは恐怖から震えてうまく書けなかったことが読み取れ、セナリアンは涙を流した。そして何度もおぞましい、おぞましいと書かれていた。


 そして前王と対峙している、現在。

「王太子が見られて口封じしたと言うのか!」
「ええ、何の罪もない一人、さらに念のためでしょうね、その者の家族が、娘の事件を苦に自害したと見せかけて、両親と妹も殺されていました。妹はまだ八歳でした」
「自害したのかもしれないじゃないか」

 これはまだアガットには伝えていなかったが、ジニーの家族も全員殺されていた。

「いいえ、ジニーさんは王太子が、家族は王太子の側近によって家に火を放たれていました。証拠も出します。この国は人の命は平等としていますね?なのに、なぜ?」
「…」
「そして現在、同様に脅威にさらされている者がいるのです。このことを隠蔽するためには、また王太子は同じことを繰り返す。そしてまた知る者が出たら?そんな者が王族だと?愚かとしか言いようがない!」

 セナリアンはさすがに語尾を強め、凍えるほどの殺気を放った。

「そんなことはさせられない、私から息子に話し、判断させる」
「分かりました、ただし全員で話してください。外には漏れないように術を掛けて、見張らせてもらいます」
「ああ、分かった」
「あと私のことは、私がこの国を去った時点で話せなくなりますので、ご注意を」
「どういうことだ」
「私は魔術師です。私自身も恐ろしいですが、腐った王宮なんて一瞬で消せてしまうのです。最初からなかったかのようにね?」
「悪魔…」
「悪魔でもかまわないのですよ、罪のない命が救えるのならば。ですので、あなたにお渡しするのは鑑定書のみです。愚かなことをしようとした時点で、どうなるかは、想像力に任せます」
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