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第3話
身勝手な想いは暴力となる3(ヨバス王国)
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王族を欺く行為を行ったと、リザコット伯爵家に不敬罪が適用された。子どもが生まれれば露見した罪であること、ゆえに極刑は免れたが、慰謝料に加え、伯爵家の爵位と領地は没収。父親の役職は解かれ、平民となった。
ケイティはリザコット伯爵夫妻の長女として生まれたが、弟が生まれると嫡男ということで、とても喜んでいたのを覚えている。それから手のかからない姉という立ち位置になり、両親も使用人も弟優先。すっかり必要ないのだと思うようになった。
一つ年下のエイベル王太子殿下に憧れを持つも、真面目以外に取柄もないことも自身も分かっていた。そんなことないと唆し、捌け口として利用するために、関係を迫ったのがマシックだった。二人は親の居ぬ間にこっそり行為を重ねていた。そしてケイティは避妊薬を飲んでいることで、マシックの子は授からないと思っていた。
マシックはケイティの体は素晴らしい、一度抱いたら忘れられなくなると褒め称えた。その言葉を鵜呑みにしたケイティは王太子も私を抱けば虜になり、両親も褒めてくれるのではないかと思い込むようになった。王宮での夜会ではどうやったら、人目に付かず王太子の部屋に行けるかを念入りに調べた。
そしてあの日、友人の邸に泊まることになったと両親に言って、夜会を抜け出し、誰もいない王太子の部屋に忍び込み、ひたすら待ち続けた。
酔っぱらって帰って来た王太子がベットで寝息を立て始めると、マシックの持っていた興奮作用のある薬を王太子の口に流し込んだ。薬が効き始めたのか、暑い、暑いと服を脱ぎ始めたので、自分も服を脱いで跨ったのだ。
翌朝、王太子は目覚めると頭痛と吐気と、さらには横の女に戦慄した。何も覚えていなかったが、事後のような状況に困惑していると、ケイティも私も酔ってしまって、申し訳ありませんでしたと慌てて帰った。
王太子に呼び出されることを期待した。忘れられなくなっているに違いないと思っていたからだ。でももしかしたら誑かしたと呼び出されるかもしれないということも考えた。しかし何ヶ月経っても音沙汰は無かった。
ケイティは月のものが不順であった。さすがに前がいつだったか分からないことに気付き、王太子の子どもだと思った。この計画の前からマシックとは会わないようにし、避妊薬も止めていたのだ。
母親に相談し、診察を受けた。生理不順だと言うと、お腹の具合から妊娠二、三ヶ月くらいだろうと診断された。間違いなく王太子の子どもだと確信に変わった。両親に実は夜会で酔っぱらった王太子に誘われて、憧れていたので関係を持ったことを打ち明けた。
両親は何てことを始めは言っていたが、父はお互い婚約者はいないのだから、責任を取って貰おうと切り替えた。まさか娘が他の男と関係を持っているとは思っていなかったからだ。そして陛下に直談判したのだ。
どうやって部屋に入ったのか聞かれて、酔った王太子に誘われて、こっそり入ったと嘘を付いた。妊娠している私に怖いものはもうなかった。
でも婚約すら決まらなかった。父に言っても騒ぐことはお前のためにならないと、子どもがいるのに、どうしてと思いながら、王太子の元へ押し掛けて、お腹が痛いと嘘を付くと離宮で手厚く看病してもらえた。このまま居座ればいい、お腹も出てくれば父親だと実感するはずだと信じていた。
しかし、翌日呼び出され、事態は一変した。妊娠五ヶ月だという、そして相手も分かっていると、五ヶ月が正しければ今度は間違いなくマシックの子だ。父のことも家のことももう何も考えられなかった。
セナリアンは出る幕は無かったですねと言い、令嬢の行った行為は暴力だが、本当に殿下の子だと思っていたのであろうと、あとベットは下に人が入れないようにした方がいいと帰って行った。
ベットの下だったのかと、背筋が凍った。
月に二~三度、アイルッツ国王陛下とセナリアンは報告し合う定例会を行っている。ヨバス王国の処罰については確認せぬまま、戻っていたため、その後の報告を受けていた。
「エイベル殿下の今後を考えると妥当なところでしょうね、ただ令嬢の家は地獄でしょうね、思い込みって怖いですね」
「ああ、不敬罪でも処分としないところが甘いようにも感じるが、生きて苦しめと言われているようなものだからな。イリジム王を怒らせた罪は重いさ」
イリジム陛下は周りの意見を聞くのはもちろんのこと、自ら意見を求めて助けを請うことも厭わず、尚且つ聞き上手で、尊敬している臣下は多い。そんな王家を陥れるなど、周りが黙っていないだろう。
「お礼の酒が届いた、持って帰るように」
「ありがとうございます」
「令嬢は出産したら修道院に行く予定だそうだ、そこでも地獄だろうがな。子どもは父親の家が援助することになった。まだ従兄妹で良かったな、シャーロット・マクレガー様の時代に実の兄妹の事案もあったそうじゃないか」
「ええ、恐ろしいことです。私が弟を襲うようなものでしょう?気持ち悪い」
「そなたが襲うのか?」
「ノエルが私を襲うなんて出来ないでしょう?あの子は本能的に私を怖いと思っていますから」
「それはいい心がけだな」
「ええ、大事なことですわ」
ケイティはリザコット伯爵夫妻の長女として生まれたが、弟が生まれると嫡男ということで、とても喜んでいたのを覚えている。それから手のかからない姉という立ち位置になり、両親も使用人も弟優先。すっかり必要ないのだと思うようになった。
一つ年下のエイベル王太子殿下に憧れを持つも、真面目以外に取柄もないことも自身も分かっていた。そんなことないと唆し、捌け口として利用するために、関係を迫ったのがマシックだった。二人は親の居ぬ間にこっそり行為を重ねていた。そしてケイティは避妊薬を飲んでいることで、マシックの子は授からないと思っていた。
マシックはケイティの体は素晴らしい、一度抱いたら忘れられなくなると褒め称えた。その言葉を鵜呑みにしたケイティは王太子も私を抱けば虜になり、両親も褒めてくれるのではないかと思い込むようになった。王宮での夜会ではどうやったら、人目に付かず王太子の部屋に行けるかを念入りに調べた。
そしてあの日、友人の邸に泊まることになったと両親に言って、夜会を抜け出し、誰もいない王太子の部屋に忍び込み、ひたすら待ち続けた。
酔っぱらって帰って来た王太子がベットで寝息を立て始めると、マシックの持っていた興奮作用のある薬を王太子の口に流し込んだ。薬が効き始めたのか、暑い、暑いと服を脱ぎ始めたので、自分も服を脱いで跨ったのだ。
翌朝、王太子は目覚めると頭痛と吐気と、さらには横の女に戦慄した。何も覚えていなかったが、事後のような状況に困惑していると、ケイティも私も酔ってしまって、申し訳ありませんでしたと慌てて帰った。
王太子に呼び出されることを期待した。忘れられなくなっているに違いないと思っていたからだ。でももしかしたら誑かしたと呼び出されるかもしれないということも考えた。しかし何ヶ月経っても音沙汰は無かった。
ケイティは月のものが不順であった。さすがに前がいつだったか分からないことに気付き、王太子の子どもだと思った。この計画の前からマシックとは会わないようにし、避妊薬も止めていたのだ。
母親に相談し、診察を受けた。生理不順だと言うと、お腹の具合から妊娠二、三ヶ月くらいだろうと診断された。間違いなく王太子の子どもだと確信に変わった。両親に実は夜会で酔っぱらった王太子に誘われて、憧れていたので関係を持ったことを打ち明けた。
両親は何てことを始めは言っていたが、父はお互い婚約者はいないのだから、責任を取って貰おうと切り替えた。まさか娘が他の男と関係を持っているとは思っていなかったからだ。そして陛下に直談判したのだ。
どうやって部屋に入ったのか聞かれて、酔った王太子に誘われて、こっそり入ったと嘘を付いた。妊娠している私に怖いものはもうなかった。
でも婚約すら決まらなかった。父に言っても騒ぐことはお前のためにならないと、子どもがいるのに、どうしてと思いながら、王太子の元へ押し掛けて、お腹が痛いと嘘を付くと離宮で手厚く看病してもらえた。このまま居座ればいい、お腹も出てくれば父親だと実感するはずだと信じていた。
しかし、翌日呼び出され、事態は一変した。妊娠五ヶ月だという、そして相手も分かっていると、五ヶ月が正しければ今度は間違いなくマシックの子だ。父のことも家のことももう何も考えられなかった。
セナリアンは出る幕は無かったですねと言い、令嬢の行った行為は暴力だが、本当に殿下の子だと思っていたのであろうと、あとベットは下に人が入れないようにした方がいいと帰って行った。
ベットの下だったのかと、背筋が凍った。
月に二~三度、アイルッツ国王陛下とセナリアンは報告し合う定例会を行っている。ヨバス王国の処罰については確認せぬまま、戻っていたため、その後の報告を受けていた。
「エイベル殿下の今後を考えると妥当なところでしょうね、ただ令嬢の家は地獄でしょうね、思い込みって怖いですね」
「ああ、不敬罪でも処分としないところが甘いようにも感じるが、生きて苦しめと言われているようなものだからな。イリジム王を怒らせた罪は重いさ」
イリジム陛下は周りの意見を聞くのはもちろんのこと、自ら意見を求めて助けを請うことも厭わず、尚且つ聞き上手で、尊敬している臣下は多い。そんな王家を陥れるなど、周りが黙っていないだろう。
「お礼の酒が届いた、持って帰るように」
「ありがとうございます」
「令嬢は出産したら修道院に行く予定だそうだ、そこでも地獄だろうがな。子どもは父親の家が援助することになった。まだ従兄妹で良かったな、シャーロット・マクレガー様の時代に実の兄妹の事案もあったそうじゃないか」
「ええ、恐ろしいことです。私が弟を襲うようなものでしょう?気持ち悪い」
「そなたが襲うのか?」
「ノエルが私を襲うなんて出来ないでしょう?あの子は本能的に私を怖いと思っていますから」
「それはいい心がけだな」
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