68 / 73
お花畑に住めなくなった家族5
しおりを挟む
キャリーヌの妊娠は進み、医療刑務所のため食事は制限されているので、適度に太っているのだが、自分の体がままならないことに荒れており、苦しい、お腹がすいたなどと呼び出すので、問題児となっていた。
「いい加減にしなさい!」
看護師に、医師に、看守に、誰かに怒鳴られている。今日は看護師である。
「私は妊婦なのよ!」
「妊婦の前にあなたは罪人ですよ、反省していないのですか!」
「はあ?」
「陛下に盾突くのような者は、まともではないわ」
生まれてくる子どもも、あなたが母親だなんて不幸だと言いたかったが、医療従事者として控えることにした。
「っな!」
「事実でしょう?罪人が妊娠するなんて前代未聞ですよ」
「私が魅力的だから」
「はあ…相手が誰かも分からないのに?」
皆、子どもの父親は孤児の傭兵だと聞いており、名前も国も事実を言っているとは限らない。今回は傭兵として来ただけで、いつもは違うという可能性すらある。
それでも本気で想い合う者もいるだろうが、何も言わずに別の国に行ったということは、無料の娼婦くらいの扱いだったのだろうと思っている。
相手も罪人だと知っていたら、使い捨てにしてもいいと判断したのかもしれない。
「知っているわ!カイザーは貴族なのよ!」
キャリーヌの中で、出生が不明な精悍な顔立ちの男性は貴族という認識である。今まですり寄っていた相手がそうであっただけで、素朴な顔立ちの男性をただ見てなかっただけなのだが、見た目が全てである。
カイザーはそうだったら面白いなと答えていたのだが、キャリーヌは絶対にそうだと思い込んだ。だから子どもが出来ていると言われた時は、ノーマに言われていたことを思い出しはしたが、これでこんな国を出て、良い生活が出来ると思った。
監視がいたのにどうして関係を持つことが出来たのかは、夜中に暗闇に紛れて抜け出したからであった。喘息も空気が良いせいが、発作が起こることはなかった。
皆疲れているので、夜は眠っており、気付いている者もいたが、関わりたくないので、黙認されていた。うるさく、迷惑なので、ここより辛い場所に移動になって欲しいという思いもあった。
そして、たまたま集落で出会うことになったのが、カイザーであった。
のどかな場での労働刑ということで、キャリーヌは罪人という感覚が薄れていた。
しかも、持病は気を付ければ出産は出来ると言われて、こんなことならアデュエルとマックスとも、子どもを作れば良かったとすら思っていた。
アデュエルは避妊をしており、マックスは孕んでいたら面白いという質だったので違ったが、キャリーヌは妊娠することはなかった。
「あなたが労働刑だとは知っているのでしょう?」
「ええ、来ないのは私がここにいることを知らないからよ!」
間違いなく使い捨てにされたということだろう、相手もいくら無料だとしても、こんな者を相手にしたものだと思った。
まさか子どもが出来たなんて、一生知らないままとなるだろう。
事実を言っても受け入れないことから、希望を持たせて無事に出産させるべきだろう。どちらにしても出産すれば、また労働刑を今度は刑務所で受けることになる。
今後、行動は制限されて、二度と子どもを作るようなことは出来ない。刑期が終わるまで、探しに行くことも出来ない。
「問い合わせれば、分かるはずよ…いつか来るといいわね」
「絶対に来るわ!」
妊娠は順調であるために、どんどん出産の日は迫っていた。
カイザーは探す手立てもないので、見付かるはずもなく、どうして会いに来てくれないのかと嘆いていた。
「いい加減にしなさい!」
看護師に、医師に、看守に、誰かに怒鳴られている。今日は看護師である。
「私は妊婦なのよ!」
「妊婦の前にあなたは罪人ですよ、反省していないのですか!」
「はあ?」
「陛下に盾突くのような者は、まともではないわ」
生まれてくる子どもも、あなたが母親だなんて不幸だと言いたかったが、医療従事者として控えることにした。
「っな!」
「事実でしょう?罪人が妊娠するなんて前代未聞ですよ」
「私が魅力的だから」
「はあ…相手が誰かも分からないのに?」
皆、子どもの父親は孤児の傭兵だと聞いており、名前も国も事実を言っているとは限らない。今回は傭兵として来ただけで、いつもは違うという可能性すらある。
それでも本気で想い合う者もいるだろうが、何も言わずに別の国に行ったということは、無料の娼婦くらいの扱いだったのだろうと思っている。
相手も罪人だと知っていたら、使い捨てにしてもいいと判断したのかもしれない。
「知っているわ!カイザーは貴族なのよ!」
キャリーヌの中で、出生が不明な精悍な顔立ちの男性は貴族という認識である。今まですり寄っていた相手がそうであっただけで、素朴な顔立ちの男性をただ見てなかっただけなのだが、見た目が全てである。
カイザーはそうだったら面白いなと答えていたのだが、キャリーヌは絶対にそうだと思い込んだ。だから子どもが出来ていると言われた時は、ノーマに言われていたことを思い出しはしたが、これでこんな国を出て、良い生活が出来ると思った。
監視がいたのにどうして関係を持つことが出来たのかは、夜中に暗闇に紛れて抜け出したからであった。喘息も空気が良いせいが、発作が起こることはなかった。
皆疲れているので、夜は眠っており、気付いている者もいたが、関わりたくないので、黙認されていた。うるさく、迷惑なので、ここより辛い場所に移動になって欲しいという思いもあった。
そして、たまたま集落で出会うことになったのが、カイザーであった。
のどかな場での労働刑ということで、キャリーヌは罪人という感覚が薄れていた。
しかも、持病は気を付ければ出産は出来ると言われて、こんなことならアデュエルとマックスとも、子どもを作れば良かったとすら思っていた。
アデュエルは避妊をしており、マックスは孕んでいたら面白いという質だったので違ったが、キャリーヌは妊娠することはなかった。
「あなたが労働刑だとは知っているのでしょう?」
「ええ、来ないのは私がここにいることを知らないからよ!」
間違いなく使い捨てにされたということだろう、相手もいくら無料だとしても、こんな者を相手にしたものだと思った。
まさか子どもが出来たなんて、一生知らないままとなるだろう。
事実を言っても受け入れないことから、希望を持たせて無事に出産させるべきだろう。どちらにしても出産すれば、また労働刑を今度は刑務所で受けることになる。
今後、行動は制限されて、二度と子どもを作るようなことは出来ない。刑期が終わるまで、探しに行くことも出来ない。
「問い合わせれば、分かるはずよ…いつか来るといいわね」
「絶対に来るわ!」
妊娠は順調であるために、どんどん出産の日は迫っていた。
カイザーは探す手立てもないので、見付かるはずもなく、どうして会いに来てくれないのかと嘆いていた。
2,078
お気に入りに追加
4,047
あなたにおすすめの小説
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
謝罪のあと
基本二度寝
恋愛
王太子の婚約破棄騒動は、男爵令嬢の魅了魔法の発覚で終わりを告げた。
王族は揃いも揃って魅了魔法に操られていた。
公にできる話ではない。
下手をすれば、国が乗っ取られていたかもしれない。
男爵令嬢が執着したのが、王族の地位でも、金でもなく王太子個人だったからまだよかった。
愚かな王太子の姿を目の当たりにしていた自国の貴族には、口外せぬように箝口令を敷いた。
他国には、魅了にかかった事実は知られていない。
大きな被害はなかった。
いや、大きな被害を受けた令嬢はいた。
王太子の元婚約者だった、公爵令嬢だ。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる