31 / 73
終わりの後2
しおりを挟む
「いえ、それは…私が書いたものではありません。きっとベルアンジュが、私たちを陥れようとしたのです」
「そうですわ!」
「そうよ!そうよ!」
ベントルは何も言わないが、ずっとニヤニヤとした顔を崩さない。
「そうか、だがな、すでに王家に渡っておる」
「は?王家…どうして」
「証拠だよ、ベルアンジュへの虐待に、マリクワン侯爵家への詐欺行為、名誉棄損。正当な罰が下されるだろう」
その言葉にさすがにベントルもニヤついた顔を、驚いた顔に変えた。
「ですから、ベルアンジュがやったことで」
「自分で自分を虐待するのか?」
「それは誤解です」
「ここへ来ての言動を見れば、どう見ても事実だろう」
「いや、それは動揺しておりまして、大事な娘が亡くなったのです。驚くではありませんか」
「ふざけるな!」
「落ち着いてください、ちょっとした行き違いではありませんか」
チェイスの矛盾だらけの言い訳に、その場しのぎでしかない発言に、ソファに座っていたラオルス公爵もいよいよ腰を上げた。
「私が証言しますから、心配いりません」
「ラ、ラオルス公爵っ!」
「っえ」
「ラオルス公爵…」
皆、周りを見ることが出来ないのか、ラオルス公爵がいることにすら気付いていなかった。
「いえ、ラオルス公爵様、これは誤解で」
「どこが誤解だ、亡くなった娘に対する態度ではないだろう!」
「いえ、連絡を寄こさないから、ちょっと怒ってしまっただけで」
「私は関係ないわ!」
ラオルス公爵の登場に、急に責任転嫁したのはキャリーヌだった。
「君の手紙もきちんと渡してある」
「っな!私は関係ないわ!姉妹なんだから、冗談よ、通じるはずでしょう?」
「そんなはずないだろう?ベルアンジュはマリクワン侯爵家の人間なんだから、絶対に許すことはない」
「はあ?私は、私は」
ラオルス公爵の存在と、イサードの迫力に、チェイスのように墓穴を掘りたくない、キャリーヌはどう答えればいいか分からず、言葉に詰まった。
「ルイフォードと結婚するという妄言も、名誉棄損として報告している。手紙にも書いてあったな、気色の悪い娘だ!吐き気がする!お前が侯爵家の嫁になどなれるわけがないだろう!」
「っな!私はオーバス侯爵家に嫁ぐんだから!」
キャリーヌはまだ家族にも友人だと言い、話していなかったが、馬鹿にされて、ついにアデュエルのことを初めて口に出した。
「私はオーバス侯爵とは知り合いだが?」
「え?アデュエルよ、私の恋人なんだから」
「アデュエル?」
イサードは調べさせていたので、知っていたが、知らない振りをすると、ラオルス公爵が答えた。
「ああ、前侯爵の縁切りしてある子どもだろう?」
「縁切りしても、関係ないわ」
「関係あるよ、彼は男爵家の人間だ。侯爵家に知られたら、そちらからも訴えられるぞ?そんなお金が、ソアリ伯爵家にあるのか?」
「っな!そんなはずないわ、縁が切れても侯爵家は、侯爵家なんだから!」
キャリーヌはきちんとアデュエルから境遇は聞いていたが、前侯爵の子どもなんだから、侯爵家の権利があると、縁を切っていると言っても、聞く耳を持たなかった。
両親と兄はルイフォードに、次はキャリーヌが嫁ぐと思っていたが、キャリーヌは次に結婚するのは、私などという発言を今日はしていなかった。
「訴えられてもいいなら、言い続ければいい。もしかしたら、あちらは準備をしているかもしれないな」
「キャリーヌ、あなた騙されたんじゃないの?そうでしょう?」
窮地に陥っている上に、さらに訴えられては堪らないとノーマが声を上げた。
「そんなはずないわ、彼は私を愛しているの!」
アデュエルに盲目的になっているキャリーヌには、騙されてはいないのだが、騙されたと認めることは出来なかった。
「そうですわ!」
「そうよ!そうよ!」
ベントルは何も言わないが、ずっとニヤニヤとした顔を崩さない。
「そうか、だがな、すでに王家に渡っておる」
「は?王家…どうして」
「証拠だよ、ベルアンジュへの虐待に、マリクワン侯爵家への詐欺行為、名誉棄損。正当な罰が下されるだろう」
その言葉にさすがにベントルもニヤついた顔を、驚いた顔に変えた。
「ですから、ベルアンジュがやったことで」
「自分で自分を虐待するのか?」
「それは誤解です」
「ここへ来ての言動を見れば、どう見ても事実だろう」
「いや、それは動揺しておりまして、大事な娘が亡くなったのです。驚くではありませんか」
「ふざけるな!」
「落ち着いてください、ちょっとした行き違いではありませんか」
チェイスの矛盾だらけの言い訳に、その場しのぎでしかない発言に、ソファに座っていたラオルス公爵もいよいよ腰を上げた。
「私が証言しますから、心配いりません」
「ラ、ラオルス公爵っ!」
「っえ」
「ラオルス公爵…」
皆、周りを見ることが出来ないのか、ラオルス公爵がいることにすら気付いていなかった。
「いえ、ラオルス公爵様、これは誤解で」
「どこが誤解だ、亡くなった娘に対する態度ではないだろう!」
「いえ、連絡を寄こさないから、ちょっと怒ってしまっただけで」
「私は関係ないわ!」
ラオルス公爵の登場に、急に責任転嫁したのはキャリーヌだった。
「君の手紙もきちんと渡してある」
「っな!私は関係ないわ!姉妹なんだから、冗談よ、通じるはずでしょう?」
「そんなはずないだろう?ベルアンジュはマリクワン侯爵家の人間なんだから、絶対に許すことはない」
「はあ?私は、私は」
ラオルス公爵の存在と、イサードの迫力に、チェイスのように墓穴を掘りたくない、キャリーヌはどう答えればいいか分からず、言葉に詰まった。
「ルイフォードと結婚するという妄言も、名誉棄損として報告している。手紙にも書いてあったな、気色の悪い娘だ!吐き気がする!お前が侯爵家の嫁になどなれるわけがないだろう!」
「っな!私はオーバス侯爵家に嫁ぐんだから!」
キャリーヌはまだ家族にも友人だと言い、話していなかったが、馬鹿にされて、ついにアデュエルのことを初めて口に出した。
「私はオーバス侯爵とは知り合いだが?」
「え?アデュエルよ、私の恋人なんだから」
「アデュエル?」
イサードは調べさせていたので、知っていたが、知らない振りをすると、ラオルス公爵が答えた。
「ああ、前侯爵の縁切りしてある子どもだろう?」
「縁切りしても、関係ないわ」
「関係あるよ、彼は男爵家の人間だ。侯爵家に知られたら、そちらからも訴えられるぞ?そんなお金が、ソアリ伯爵家にあるのか?」
「っな!そんなはずないわ、縁が切れても侯爵家は、侯爵家なんだから!」
キャリーヌはきちんとアデュエルから境遇は聞いていたが、前侯爵の子どもなんだから、侯爵家の権利があると、縁を切っていると言っても、聞く耳を持たなかった。
両親と兄はルイフォードに、次はキャリーヌが嫁ぐと思っていたが、キャリーヌは次に結婚するのは、私などという発言を今日はしていなかった。
「訴えられてもいいなら、言い続ければいい。もしかしたら、あちらは準備をしているかもしれないな」
「キャリーヌ、あなた騙されたんじゃないの?そうでしょう?」
窮地に陥っている上に、さらに訴えられては堪らないとノーマが声を上げた。
「そんなはずないわ、彼は私を愛しているの!」
アデュエルに盲目的になっているキャリーヌには、騙されてはいないのだが、騙されたと認めることは出来なかった。
2,424
お気に入りに追加
4,046
あなたにおすすめの小説
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
うーん、別に……
柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」
と、言われても。
「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……
あれ?婚約者、要る?
とりあえず、長編にしてみました。
結末にもやっとされたら、申し訳ありません。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
誤字を訂正しました。
現在、番外編を掲載しています。
仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。
後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。
☆☆辺境合宿編をはじめました。
ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。
辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。
☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます!
☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。
よろしくお願いいたします。
俺たちの関係に名前はない~複数に犯されるのが好きな1人のネコと3人のタチの恋模様
はむはむ
BL
一人相手では興奮できないユウキは、高校からの友人であるヨシユキ、トウマ、シゲルの3人に犯される「ツキイチ会」で3年間性欲を発散させてきた。言葉責めで執着心を煽られ、見られながら犯されることに悦ぶユウキにそれぞれの愛で執着する攻め視点と、3人から愛と精液を受けまくる受け視点から描きます
ハッピーエンド確約
ユウキ(20) 淫乱受け・総受け
見られながら、複数のオトコに犯されるのが好き
初恋の彼氏とは普通すぎるセックスが理由で別れている
ヨシユキ(20) 攻め1
ユウキと同じ大学に通う
イラマチオ好き
シゲル(20) 攻め2
意識があまりない状態で犯す性癖を持つ(睡姦など)
資産家の息子でツキイチ会の場所提供者
トウマ(20) 攻め3
医大生
彼女はいるものの、ユウキの穴とメスイキ・射精管理に執着中
射精管理、小スカなどが入るページには先に注意書きを入れます
地雷の方は飛ばしてください!
下記ご理解いただける方でお願いいたしますm(_ _)m
※ 合意による複数プレイ
※ イラマチオ標準装備
※ BLはファンタジー
【BL・R18】可愛い弟に拘束されているのは何ででしょうか…?
梅花
BL
伯爵家長男の俺は、弟が大好き。プラチナブロンドの髪や青色の瞳。見た目もさることながら、性格も良くて俺を『にーに』なんて呼んだりしてさ。
ても、そんな弟が成人を迎えたある日…俺は…
基本、R18のため、描写ありと思ってください。
特に告知はしません。
短編になる予定です。地雷にはお気をつけください!
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
【完結】愛する人にはいつだって捨てられる運命だから
SKYTRICK
BL
凶悪自由人豪商攻め×苦労人猫化貧乏受け
※一言でも感想嬉しいです!
孤児のミカはヒルトマン男爵家のローレンツ子息に拾われ彼の使用人として十年を過ごしていた。ローレンツの愛を受け止め、秘密の恋人関係を結んだミカだが、十八歳の誕生日に彼に告げられる。
——「ルイーザと腹の子をお前は殺そうとしたのか?」
ローレンツの新しい恋人であるルイーザは妊娠していた上に、彼女を毒殺しようとした罪まで着せられてしまうミカ。愛した男に裏切られ、屋敷からも追い出されてしまうミカだが、行く当てはない。
ただの人間ではなく、弱ったら黒猫に変化する体質のミカは雪の吹き荒れる冬を駆けていく。狩猟区に迷い込んだ黒猫のミカに、突然矢が放たれる。
——あぁ、ここで死ぬんだ……。
——『黒猫、死ぬのか?』
安堵にも似た諦念に包まれながら意識を失いかけるミカを抱いたのは、凶悪と名高い豪商のライハルトだった。
☆3/10J庭で同人誌にしました。通販しています。
婚約破棄されました。あとは知りません
天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。
皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。
聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。
「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」
その時…
----------------------
初めての婚約破棄ざまぁものです。
---------------------------
お気に入り登録200突破ありがとうございます。
-------------------------------
【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる