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結婚と子ども
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ルイフォードは結婚式の記憶だけで、生きていける…そんな気持ちになっていた。何があっても、短い時間でも、生きていく糧になる。
きっとあの日があったから、生きているんだと思う日が来るだろう。
結婚式はしたが、結婚の署名は提出しないまま、持ち帰っていた。
「結婚して貰えないだろうか」
結婚式の数日後、ルイフォードは改まって、ベルアンジュに問い掛けた。
「それは…」
「実は、ベルーナが私たちの子どもを妊娠した」
ベルアンジュは、ベルーナの手紙には何も書いておらず、きっと上手くいっていない、それでいいと思っていた。
「ベルアンジュには、複雑な思いをさせてしまうことも分かっている。だが、ベルーナはベルアンジュの子どもだと思うと、私の子どもと同じように、とても愛おしい。早くあなたに会わせたいと書いていた」
ベルーナから定期的に様子を送って貰っていた。
ベルアンジュの子どもではなかったら、お腹にいる以上、手放したくないと思ってしまったかもしれない。でも言い方は悪いが、ベルアンジュのためという使命感を強く感じているから、守って育てなければと思っていると書かれていた。
「ベルーナは大丈夫なのですか?」
「今のところ問題ないそうだ。実はもっと前から分かってはいた。だが安定期に入るまで、待っていた。そして、ベルアンジュに話すタイミングはベルーナから任されていたんだ、すまない」
「そうでしたか…子どもが…」
「ベルアンジュは望んでいなかったことは知っている。それでも、私は嬉しい…すまない」
ベルアンジュは卵子を採取する時に、ベルーナに無理をさせないで欲しい、痛いこと、悲しいこと、辛いことになるならば、すぐにやめて欲しいと、どうかお願いしますと、ベルーナの義姉になるリンダ医師に告げていた。
それをベルーナも、ベルーナからルイフォードも聞いていた。
「子どもが…それで結婚を?」
「それもある、父が隣国で産むのはベルーナだが、ベルアンジュと私の子どもだと鑑定して、こちらで受け入れるように動いている」
生まれたら親子鑑定をして、二人の実子と認める手続きを隣国で行って、母国に連れ帰るようにして貰う様に動いてくれている。
代わりに産むというのは少ないことだが、隣国ではない事例ではないそうだ。
「でも私の家族は、勝手に私に子どもを産ませて、キャリーヌをあなたに嫁がせようと企んでいます」
「ベルアンジュも知っていたのか?」
「え?ルイフォード様も?」
驚いたのはお互い様であった。
ベルアンジュは本人に言ったのかという恥ずかしい思いで、ルイフォードはベルアンジュにもふざけたことを、話していたのかという怒りであった。
「ああ、ベルアンジュの家族とは思いたくないほどに、恥ずかしげもなく、言っていた。話したこともないのに、信じられない」
「申し訳ありません」
ベルアンジュはさすがにルイフォードと接して、キャリーヌの全て嘘だったことには気付いていたので、頭を下げた。
「ベルアンジュが謝ることはない。申し訳ないが、父が調べ上げている」
「ええ、あの方達は貴族として残すべきではないでしょう」
「やはりベルアンジュも知っていたか、当たり前だよな」
「はい、あの家は家令に頼りきりです」
両親はバスチャン伯爵家に援助して貰っていることで分かるように、お金がない。領地経営はサインするだけで、家令がすべて任されており、かといって有能な家令という訳ではない。
「なくなってもいいか?」
「はい、薄情ですけど、他の方に任せた方がいいと思います」
「そうか…だからと言っては申し訳ないが、実家のことは考えなくていい。結婚の届けを出してもいいだろうか」
「はい…ありがとうございます」
「御礼を言うのは、私の方だ」
その日、ルイフォードとベルアンジュは、正式に夫婦となった。
きっとあの日があったから、生きているんだと思う日が来るだろう。
結婚式はしたが、結婚の署名は提出しないまま、持ち帰っていた。
「結婚して貰えないだろうか」
結婚式の数日後、ルイフォードは改まって、ベルアンジュに問い掛けた。
「それは…」
「実は、ベルーナが私たちの子どもを妊娠した」
ベルアンジュは、ベルーナの手紙には何も書いておらず、きっと上手くいっていない、それでいいと思っていた。
「ベルアンジュには、複雑な思いをさせてしまうことも分かっている。だが、ベルーナはベルアンジュの子どもだと思うと、私の子どもと同じように、とても愛おしい。早くあなたに会わせたいと書いていた」
ベルーナから定期的に様子を送って貰っていた。
ベルアンジュの子どもではなかったら、お腹にいる以上、手放したくないと思ってしまったかもしれない。でも言い方は悪いが、ベルアンジュのためという使命感を強く感じているから、守って育てなければと思っていると書かれていた。
「ベルーナは大丈夫なのですか?」
「今のところ問題ないそうだ。実はもっと前から分かってはいた。だが安定期に入るまで、待っていた。そして、ベルアンジュに話すタイミングはベルーナから任されていたんだ、すまない」
「そうでしたか…子どもが…」
「ベルアンジュは望んでいなかったことは知っている。それでも、私は嬉しい…すまない」
ベルアンジュは卵子を採取する時に、ベルーナに無理をさせないで欲しい、痛いこと、悲しいこと、辛いことになるならば、すぐにやめて欲しいと、どうかお願いしますと、ベルーナの義姉になるリンダ医師に告げていた。
それをベルーナも、ベルーナからルイフォードも聞いていた。
「子どもが…それで結婚を?」
「それもある、父が隣国で産むのはベルーナだが、ベルアンジュと私の子どもだと鑑定して、こちらで受け入れるように動いている」
生まれたら親子鑑定をして、二人の実子と認める手続きを隣国で行って、母国に連れ帰るようにして貰う様に動いてくれている。
代わりに産むというのは少ないことだが、隣国ではない事例ではないそうだ。
「でも私の家族は、勝手に私に子どもを産ませて、キャリーヌをあなたに嫁がせようと企んでいます」
「ベルアンジュも知っていたのか?」
「え?ルイフォード様も?」
驚いたのはお互い様であった。
ベルアンジュは本人に言ったのかという恥ずかしい思いで、ルイフォードはベルアンジュにもふざけたことを、話していたのかという怒りであった。
「ああ、ベルアンジュの家族とは思いたくないほどに、恥ずかしげもなく、言っていた。話したこともないのに、信じられない」
「申し訳ありません」
ベルアンジュはさすがにルイフォードと接して、キャリーヌの全て嘘だったことには気付いていたので、頭を下げた。
「ベルアンジュが謝ることはない。申し訳ないが、父が調べ上げている」
「ええ、あの方達は貴族として残すべきではないでしょう」
「やはりベルアンジュも知っていたか、当たり前だよな」
「はい、あの家は家令に頼りきりです」
両親はバスチャン伯爵家に援助して貰っていることで分かるように、お金がない。領地経営はサインするだけで、家令がすべて任されており、かといって有能な家令という訳ではない。
「なくなってもいいか?」
「はい、薄情ですけど、他の方に任せた方がいいと思います」
「そうか…だからと言っては申し訳ないが、実家のことは考えなくていい。結婚の届けを出してもいいだろうか」
「はい…ありがとうございます」
「御礼を言うのは、私の方だ」
その日、ルイフォードとベルアンジュは、正式に夫婦となった。
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