【完結】あの子の代わり

野村にれ

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理不尽な家族

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「ベルアンジュ!どうして、キャリーヌに酷いことを言うんだ!」
「何の話でしょうか」
「キャリーヌに婚約者が出来たことを自慢したんだろう?お前はベルーナが嫁げなくなったからで、選ばれたわけでもないくせに」
「自慢ではないので、自慢などしておりません」
「うるさい!」
「金輪際、キャリーヌの前でするな!分かったな!」

 父が帰って行ったと思ったら、今度は母が訪れる。

「あなたはどうして、キャリーヌにどうして優しく出来ないの?キャリーヌは病気なのよ?気持ちを考えることも出来ないの?」
「はあ…」

 キャリーヌは発作が起きた際は、ベットで安静にしていることもあるが、ずっと伏せっているわけではない。

「キャリーヌも健康だったら、すぐに婚約者が出来たのに、王族にだってなれたかもしれないのに」
「そんなに縁談があったのですか」
「え?」

 ベルアンジュは自分には幼い頃に何度かあったそうだが、キャリーヌに一度でも縁談の話が来たなどとは聞いたことがなかった。

 病気だからと諦めたのなら、今の姿を許せるかは別だが、婚約者に過剰になっている理由なのかとは思うことは出来る。

「当たり前でしょう、泣く泣くお断りするしかなかったの。健康だったら今頃は…」
「王族の婚約者、だったのですか?」
「王家からも縁談があったかもしれないってことよ」
「はあ」

 実際に合ったわけではない、もしかしたらなんて、夢見がちな親ならば考えることなのかもしれない。そして、そんなことを言われて育ったからこそ、今のキャリーヌが出来上がったのだろう。

「私が健康に産んであげられなかったからとでも言いたいの?」
「そんなこと言ってはないではありませんか」

 母が帰って行けば、今度は兄だった。

「キャリーヌに婚約者のことを自慢しているようだな」
「していません」
「嘘付け!婚約者が、婚約者がと言って来るとキャリーヌは泣いていたのだぞ?」
「はあ…私に婚約者がいることが問題なら、お兄様が解消をして来てください」
「何だと!」
「いなくなれば、キャリーヌの気持ちも収まるでしょう?」
「そんな言い方をするから、キャリーヌは傷付くんだ!」
「では、キャリーヌに近付かないように言ってください」

 キャリーヌの言うことは嘘でも肯定する両親と兄に、どうしてそんなことを言うのかと怒られるように、うんざりするようになった。

「ルイフォード様って、私が好みなんですって」
「良かったわね」

 そう言いながらも、私もマリクワン侯爵家に行っても、時折、お茶をするくらいで会うことがないのに、一体どこで会ったのだろうか?

 ルイフォードはトアリ伯爵家に来ることはない。ただキャリーヌは気分転換だと出掛けているので、その際に会ったのかもしれない。

「お姉様、悔しいでしょう?」
「…」
「でも、私が可愛いのは事実なんだから、仕方のないことなのよ?」

 気管支喘息は肥満になってはならないので、キャリーヌは痩せ型で、幼い顔立ちはしているが、贔屓目に見れないことを除いても、私と同じ可もなく不可もない顔立ちだと思う。

 両親の溺愛英才教育におかげで、自信に繋がったのだろうが、滑稽な気持ちしか抱けなかった。

 だが、そんな日々が続けば、キャリーヌもだが、両親と兄に怒鳴られることにも辟易していたベルアンジュは、両親に代わって貰えないか聞くことにした。

 その間にベルーナが回復したら、私でもキャリーヌでもバスチャン伯爵家に言われれば、代わることになるだろうから、私である必要もない。

 キャリーヌが捨てられたら、面白いのにと思っている自分もいる。そのくらい思っても、神様がいたとしても、許してくれるだろう。
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