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もう二度と
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「出て行きたいなら、出て行くと言い…頭を冷やせ」
「本当に出て行くわよ!もう知らないわよ!」
オリーはいきり立ったまま出て行き、近くに実家も友人の家もあるので、行き先はある。今はアデルを静かに過ごさせたい。
アデルに部屋の外から声を掛けて、手紙の保管と、オリーが話にならないから、言い合いになって出て行ったから、もう騒がしくしないからと言った。
「分かった…大丈夫?」
アデルは涙声だった。
「大丈夫だよ、何を言っても話を聞き入れる気がなくてね」
「ちょっと聞こえていたよ」
「ごめんな」
「ううん、お母さん、ミファラさん、僕のこと愛していたって…ずっと謝ってる」
ミファラの手紙はアデルが今何をしているか、どんなことに興味があるかだったり、私は何をしているかが書いてあったり、そして捨てたことへの謝罪と、会いたい、愛していると必ず書いてあった。
持っている絵本の名前や、小説の名前が書いてあり、嬉しくなった。
「そうか…もう少し大きくなったら会わせようと思っていたんだが…遅かったな。生きている間に会わせてやれなくて、すまなかった」
「父さんのせいじゃないよ」
「ご飯になったら声を掛けるから、ゆっくり読んだらいい」
「ありがとう」
オリーは夜になっても帰って来なかったが、姉の友人であるエルサがやって来た。
「オリー、家にいるから。迎えに来る気はないわよね?」
「ないね、話を聞き入れる気のない彼女と話したくない」
「私も最初はトップスが悪いと思ったけど、ミファラさん亡くなったのね…それを悪く言われたら、私もどうかと思ったわ」
エルサも事情はちゃんと正確に知っており、オリーがあることないことを言っても、鵜呑みはしていない。
「ああ、そうだ。彼女を悪くばかり言って、アデルにも元々ありもしないことを吹き込んでいた」
「そう…なのね、あなたたちがいなくて、不安になったのよ」
「不安になって、あんな風に責めるなら、おかしいよ」
「今日は面倒みるから」
「すまないな」
オリーはそれからも友人の家に行き、悪口をまき散らしていた。
その後は自身の実家におり、謝罪して迎えに来ないと許さないと言っているようで、迎えに行く気にはなれなかった。
「父さん、前に言っていた王都の学校に行ってもいいかな?」
「え?行かないと言っていたのに、どうしたんだ?」
「あれは母さんが行くなって…それでもいいかと思っていたんだ」
「そうだったのか」
「語学の勉強をしてみたいんだ」
「そうか…」
ミファラの影響だと思ったが、アデルは賢いから、王都の学校に行けばいいと思っていた。貴族が通うような学校ではなく、選択できる科目の多い学校だった。
「行ったらいい」
「うん、ありがとう。手紙、まだまだ沢山あって、戻るね」
そう言ったアデルは嬉しそうだった。
オリーが戻らない間に、学校に通うための手続きを行った。このままというわけにはいかないので、オリーに話をするために実家に会いに行った。
「そんなの許さないわ」
「子どもの未来を閉ざすことが親のすることか?」
「それは…」
互いの両親も同席しているので、口ごもっている。
「母さん、僕、頑張りたいんだ」
「別に勉強なんてどこでも出来るでしょう!私が育てたのよ!」
「育ててもらったことには感謝するけど、いない人の悪口を言う母さんは本当に嫌だったよ」
アデルは母親だと思って慕ってはいた、だが産んだ母は番に見初められて、一緒に暮らせなくなったと聞かされた時に、ホッとした。オリーの悪口ばかり言う姿が、この人が親だと思うと嫌だったからだ。
血の繋がりがないと思えば、楽になれた。
「本当に出て行くわよ!もう知らないわよ!」
オリーはいきり立ったまま出て行き、近くに実家も友人の家もあるので、行き先はある。今はアデルを静かに過ごさせたい。
アデルに部屋の外から声を掛けて、手紙の保管と、オリーが話にならないから、言い合いになって出て行ったから、もう騒がしくしないからと言った。
「分かった…大丈夫?」
アデルは涙声だった。
「大丈夫だよ、何を言っても話を聞き入れる気がなくてね」
「ちょっと聞こえていたよ」
「ごめんな」
「ううん、お母さん、ミファラさん、僕のこと愛していたって…ずっと謝ってる」
ミファラの手紙はアデルが今何をしているか、どんなことに興味があるかだったり、私は何をしているかが書いてあったり、そして捨てたことへの謝罪と、会いたい、愛していると必ず書いてあった。
持っている絵本の名前や、小説の名前が書いてあり、嬉しくなった。
「そうか…もう少し大きくなったら会わせようと思っていたんだが…遅かったな。生きている間に会わせてやれなくて、すまなかった」
「父さんのせいじゃないよ」
「ご飯になったら声を掛けるから、ゆっくり読んだらいい」
「ありがとう」
オリーは夜になっても帰って来なかったが、姉の友人であるエルサがやって来た。
「オリー、家にいるから。迎えに来る気はないわよね?」
「ないね、話を聞き入れる気のない彼女と話したくない」
「私も最初はトップスが悪いと思ったけど、ミファラさん亡くなったのね…それを悪く言われたら、私もどうかと思ったわ」
エルサも事情はちゃんと正確に知っており、オリーがあることないことを言っても、鵜呑みはしていない。
「ああ、そうだ。彼女を悪くばかり言って、アデルにも元々ありもしないことを吹き込んでいた」
「そう…なのね、あなたたちがいなくて、不安になったのよ」
「不安になって、あんな風に責めるなら、おかしいよ」
「今日は面倒みるから」
「すまないな」
オリーはそれからも友人の家に行き、悪口をまき散らしていた。
その後は自身の実家におり、謝罪して迎えに来ないと許さないと言っているようで、迎えに行く気にはなれなかった。
「父さん、前に言っていた王都の学校に行ってもいいかな?」
「え?行かないと言っていたのに、どうしたんだ?」
「あれは母さんが行くなって…それでもいいかと思っていたんだ」
「そうだったのか」
「語学の勉強をしてみたいんだ」
「そうか…」
ミファラの影響だと思ったが、アデルは賢いから、王都の学校に行けばいいと思っていた。貴族が通うような学校ではなく、選択できる科目の多い学校だった。
「行ったらいい」
「うん、ありがとう。手紙、まだまだ沢山あって、戻るね」
そう言ったアデルは嬉しそうだった。
オリーが戻らない間に、学校に通うための手続きを行った。このままというわけにはいかないので、オリーに話をするために実家に会いに行った。
「そんなの許さないわ」
「子どもの未来を閉ざすことが親のすることか?」
「それは…」
互いの両親も同席しているので、口ごもっている。
「母さん、僕、頑張りたいんだ」
「別に勉強なんてどこでも出来るでしょう!私が育てたのよ!」
「育ててもらったことには感謝するけど、いない人の悪口を言う母さんは本当に嫌だったよ」
アデルは母親だと思って慕ってはいた、だが産んだ母は番に見初められて、一緒に暮らせなくなったと聞かされた時に、ホッとした。オリーの悪口ばかり言う姿が、この人が親だと思うと嫌だったからだ。
血の繋がりがないと思えば、楽になれた。
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