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もう二度と

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「番がいるのに、気に入るはずがないでしょう?」
「いい女なのに、勿体ない」
「ご自身の愛人でも当てがう気ですか?アグリーンですか?カサリーですか?」
「っな」
「公爵夫人は務まりませんので、お断りします。お帰りだ」

 自分の愛人も令嬢だと偽って潜り込ませようとしていた。

 その後は大人しくしていたが、ミファラが出掛けるのを待ち構えていたようで、文具店で声を掛けて来た。

「ミファラ・ダーロスだな。話をしたい、ついて来い」

 ぼんやりしているミファラに、付いていたメイドが間に入った。

「どちら様ですか?」
「使用人風情が出て来るな」
「では私が、ワツアイド侯爵家の三男です。あなたは伯爵家ですよね?」

 パズラー伯爵が邸の辺りを、うろついているのは分かっていたので、シュアンはジアン・ワツアイドを護衛に付けていた。

「私は当主だ!」
「では父に話をしましょう」
「っな、ちょっと話をしようとしただけじゃないか」
「あなたにそのような権利があるのですか?」
「じゃあ、ダーロス男爵家に話してやる。いいのか?」
「何の話ですか?」

 ミファラがパズラー伯爵に問いかけた。

「ほら、実家を守りたければ言うことを聞けばいいんだ」
「実家?私に実家はありません」
「強がりはよせ、男爵家などどうにでもなるのだぞ?」
「よろしいのではりませんか」

 ダロース男爵家ではなかったのかと焦ったが、調査書にはそう書いてあったはずだ。その割にはミファラに焦る様子も、狼狽える様子もない。

 まるで何も感じていないような顔をしている。

「どうなって知らないからな?いいのか?」
「あなたの方が、どうなってもいいと言うことですね?ロークロア公爵にも、父にも伝えておきます」
「ちょっと、待て」

 目の前にミファラだけがいるわけではないのに、脅していることがお粗末過ぎる。

「いいえ、しっかりお伝えすべきでしょう」
「私はまだ若い公爵には女性が必要だろう?何が悪い?」
「これ以上は自分の愛人を使って、公爵家を乗っ取ろうとしたと、陛下にもお伝えしなくてはならなくなります」

 驚愕の表情をして、慌ててパズラー伯爵は去って行った。

 ミファラは首を傾けて、レターセットを選び始め、皆はそれをも見守って、公爵邸に戻った。パズラー伯爵は自ら落ちていくか、落ちなければ落とされるだろう。

 ミファラは気にしていない様子だったと聞いていたが、シュアンを訪ねて来た。

「奥様を娶られるのですか」
「ち、違う。あれは誤解だ」
「でもあの男が言っていましたよ、女性が必要だろうと、要らないのですか?」
「大丈夫だ、君が心配することはない」

 パズラー伯爵は余計なことをしかしないとは思っていたが、レターセットを買いに行くミファラを止めることは出来ない。

「私は結局、何になったのですか?パロトンですか?愛人ですか?娼婦ですか?」
「…それは、表向きは愛人ということに、させて貰った。実際は違うと分かっている。気分を悪くしたら、すまない」

 シュアンは恐る恐る言い、頭を下げた。

「愛人ですか…じゃあ、男女の関係?そういったことはしなくていいのですか?」
「っな」
「娼婦じゃないからいいのかな?」
「何を言っているんだ…?」

 シュアンはミファラと体の関係を持てるとは思っていない。そんなことをすれば、ミファラは本当に絶望して、亡くなってしまうのではないかと思っていたからだ。

「担当の方がいるのですか?」
「そんな者はいない…」
「公爵様はそういうことはしたくないのですね」
「し、したいよ!でもあなた以外とはしたくないんだ…」
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