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愛してはいけない人
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レイラの出産予定日まで一ヶ月を切ると、重そうな体とは裏腹に、さらに穏やかな表情で、毎日を過ごすようになった。
再び訪れたフルヴィアは、まさに母親という顔に驚いた。
「また穏やかな表情になったのは、お腹の子のおかげね」
「えっ」
「ふふふ、まだ分かっていないの?レイラ夫人は、お腹の子のおかげで、穏やかな気持ちになれたのよ」
レイナは不思議そうに、首を傾げている。
「んもう!私は母親ではないけど、そのくらいは分かるわ」
「違うと、思います」
「認めたくないのは分かっているわ」
レイラは獣人を憎んでいる、被害者としては複雑な気持ちなのだろう。許されないと思っているのかもしれないが、表情が幸せだと物語っている。
妹君に知らせないのも、番のこともあるが、獣人の子どもを産むことで、妹君に軽蔑されると思っているのかもしれないと、フルヴィアは考えていた。
「やっと母と弟と、父にも会えるのが楽しみなだけです。確かに妊娠のおかげではあるかもしれませんけど」
ご両親も弟君もこの世にはいない、まるで死んでしまうような言い方だ。
「…ど、どういう意味?」
まさか子どもには罪はないけど、産んだら、獣人の子を孕んだ罪とでも言って、自害でもするつもりなのか。
病んでいるとは言っていたが、私は授かれないというのに、折角授かった子どもはどうするのか。いくら辛い思いをしたとしても、許せることではない。
「子どもを産んだら、死ぬつもりとでも言うの?そんなこと許さないわよ、その子はどうするの!」
「仕方のないことです、皇太子妃様はご存知でしょう?」
「な、何を?」
「私が体が不自由で子どもは産めないことを。王宮でも言ったはずです」
確かにそう言っていた、それでもいいとクノルはレイラを求めたのだ。狂気がなければ、二人は触れ合うことすらなかった関係だった。でも実際はさすが番というべきか、たった一回で妊娠した。
「でもその子は…」
「妊娠は可能だったようです、ここまで大きくなるまでは不安でしたけど」
「だったら」
「私はあの男に腹部を踏み付けられて、出産には耐えられないと診断されています。ですから、この子は私の命と引き換えとなるはずです。ご存知でしょう?」
「私はっ、知らないわ」
知らない、そんなこと知らない。可能性の話ではないのか、耐えられない?嘘よ。
「そうなのですか、ご存知のはずですが…いえ、私のことなんて知りませんよね、申し訳ございません」
「そんなことはない、わ。本当なの…?」
「はい、主治医にそう診断されております。事件の際に王家にも提出しております」
事件の詳細は途中から辛くて、読むのを止めていた。
「獣人の子は丈夫だそうですから、無事なのかもしれませんね」
「医師に診てもらっていたのでしょう?」
「はい、いくら医師でも、言わなければ分からなかったのでしょうね」
「意図的に言わなかったの?」
「はい、王宮に診断書を提出していましたから、知っているのかもしれないとは考えました。ですが、医師は止める気配もなく、邸の者もおめでたいと扱っていましたから、ああ、私の死はめでたいのだと思うことにしました」
部屋の隅にいた使用人は漏れ出そうな声を、掌で必死に抑えた。
「正直、堕胎しても、私が生きていたかは分かりません」
「公爵は知らないのよね…」
「知らないのでしょうね、知っていたら産んでくれなどとは言えないでしょう。いえ、子どもが欲しいから、そう言ったのかもしれませんけど」
「そんなことは、絶対にあり得ないわ!あなたは死ぬっていうの…」
フルヴィアの連れて来た侍女と護衛も、絶句しており、声が出ない。
再び訪れたフルヴィアは、まさに母親という顔に驚いた。
「また穏やかな表情になったのは、お腹の子のおかげね」
「えっ」
「ふふふ、まだ分かっていないの?レイラ夫人は、お腹の子のおかげで、穏やかな気持ちになれたのよ」
レイナは不思議そうに、首を傾げている。
「んもう!私は母親ではないけど、そのくらいは分かるわ」
「違うと、思います」
「認めたくないのは分かっているわ」
レイラは獣人を憎んでいる、被害者としては複雑な気持ちなのだろう。許されないと思っているのかもしれないが、表情が幸せだと物語っている。
妹君に知らせないのも、番のこともあるが、獣人の子どもを産むことで、妹君に軽蔑されると思っているのかもしれないと、フルヴィアは考えていた。
「やっと母と弟と、父にも会えるのが楽しみなだけです。確かに妊娠のおかげではあるかもしれませんけど」
ご両親も弟君もこの世にはいない、まるで死んでしまうような言い方だ。
「…ど、どういう意味?」
まさか子どもには罪はないけど、産んだら、獣人の子を孕んだ罪とでも言って、自害でもするつもりなのか。
病んでいるとは言っていたが、私は授かれないというのに、折角授かった子どもはどうするのか。いくら辛い思いをしたとしても、許せることではない。
「子どもを産んだら、死ぬつもりとでも言うの?そんなこと許さないわよ、その子はどうするの!」
「仕方のないことです、皇太子妃様はご存知でしょう?」
「な、何を?」
「私が体が不自由で子どもは産めないことを。王宮でも言ったはずです」
確かにそう言っていた、それでもいいとクノルはレイラを求めたのだ。狂気がなければ、二人は触れ合うことすらなかった関係だった。でも実際はさすが番というべきか、たった一回で妊娠した。
「でもその子は…」
「妊娠は可能だったようです、ここまで大きくなるまでは不安でしたけど」
「だったら」
「私はあの男に腹部を踏み付けられて、出産には耐えられないと診断されています。ですから、この子は私の命と引き換えとなるはずです。ご存知でしょう?」
「私はっ、知らないわ」
知らない、そんなこと知らない。可能性の話ではないのか、耐えられない?嘘よ。
「そうなのですか、ご存知のはずですが…いえ、私のことなんて知りませんよね、申し訳ございません」
「そんなことはない、わ。本当なの…?」
「はい、主治医にそう診断されております。事件の際に王家にも提出しております」
事件の詳細は途中から辛くて、読むのを止めていた。
「獣人の子は丈夫だそうですから、無事なのかもしれませんね」
「医師に診てもらっていたのでしょう?」
「はい、いくら医師でも、言わなければ分からなかったのでしょうね」
「意図的に言わなかったの?」
「はい、王宮に診断書を提出していましたから、知っているのかもしれないとは考えました。ですが、医師は止める気配もなく、邸の者もおめでたいと扱っていましたから、ああ、私の死はめでたいのだと思うことにしました」
部屋の隅にいた使用人は漏れ出そうな声を、掌で必死に抑えた。
「正直、堕胎しても、私が生きていたかは分かりません」
「公爵は知らないのよね…」
「知らないのでしょうね、知っていたら産んでくれなどとは言えないでしょう。いえ、子どもが欲しいから、そう言ったのかもしれませんけど」
「そんなことは、絶対にあり得ないわ!あなたは死ぬっていうの…」
フルヴィアの連れて来た侍女と護衛も、絶句しており、声が出ない。
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