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愛してはいけない人
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ミクサーの配慮不足により、距離を取って見守ることを周知させ、レイラは妊娠八ヶ月となった。
「そろそろ、子どもの物を用意するために、妊娠を伝えてもいいだろうか」
「公になりますか」
「皆に知らせるということではないが…何かあるのか?」
「妹には生まれるまで、伝えないで欲しいのです」
既に伝えていると思っていたので驚いたが、キア皇国に来てしまうのではないかと、危惧しているのかもしれない。
「だが、いいのか?」
「はい、あの子は心配するでしょうから。必要な方には伝えて貰って構いません」
「分かった、皇太子夫妻には伝えることになるが、口止めをしておく」
「よろしくお願いいたします」
皇太子夫妻も伝え、狂気の時に授かった子だと正直に話したが、それでも子どもは宝だと喜んでくれた。夫妻にはまだ子どもは出来ていない。
そして母国には生まれるまで知らせないで欲しいとお願いをした。
「なぜだ?」
「レイラも母君も、獣人の番でした。ですので、妹君をキア皇国に入れたくないようです。心配して来てしまっては、無意味になります」
可能性はないとは言えない。体の不自由ではない妹が来る方がいい、だが、これまでやって来たという話は聞いていなかった。
レンバー伯爵家は、獣人があからさまにいる場には行かないようにしていた。第二の被害者を出さない、人に出来る唯一のことだったのだろう。
それでもレイラは襲われることはなかったが、見付かってしまった。獣人のいる邸で大丈夫かと思ったが、使用人への徹底周知させて、距離を置いて接してはいるが、嫌悪するようなことはなかったという。
「そうか…そういうことならフルヴィア、黙っておいてくれるか」
「ええ、構いませんが…でも生まれて会いたいと思われたら?」
「その時は、我々が向こうに行くようにします。ただレイラには馬車は非常に辛いようで…」
「狭いからな」
「休みながらと言っても、それも不特定多数の人に会うことになりますので」
「何かいい手を考えなくてはならぬな」
折角、レンバー伯爵家を守るという約束をしたのに、キア皇国で何かあれば意味がない。レイラも責任を感じて、また家族を壊されては堪らない。
「公爵、もし可能ならレイラ夫人にお会いできないかしら?勿論、私が伺うわ」
フルヴィアは未だ妊娠出来ず、番でないことから大目に見られてはいるが、側妃を娶る可能性はどんどん迫っており、焦る気持ちはある。だが、どうにかしてひとりだけでも産まなくては意味がない。
レイラが羨ましいと思わないと言えば嘘になるが、フルヴィアにとってレイラは妬む相手ではない。ただ人であるレイラに妊娠の話を聞きたかった。
「聞いてみます。随分、穏やかに過ごしておりますので」
商会を呼んだりもしたが、レイラには知らない人には会うのは控えたいと断られた。道中で景色を見ることもせず、その後は邸に籠っているのだ。外の世界の獣人には会いたくないだろう。
浮かれていて忘れていたが、彼女にとってはここは憎しみと恐怖の存在なのだ。医師だけは人であることもあったが、受け入れているようで、見付けておいて良かったと心から思った。
一部の者にしか知らせず、口止めもしたため洩れることはなく、妊娠は順調に進んでいた。
「フルヴィア皇太子妃が、会いたいと言っているんだが、どうだろうか?」
「あまり親しくはないのですが」
「お祝いと、もしかしたら子どもが出来ない不安があるのかもしれない。それで話を聞きたいのかもしれない」
「お祝い?」
「ああ、とても喜んでらした」
そしてレイラから了承を貰い、フルヴィアに邸に来て貰うことになった。
「そろそろ、子どもの物を用意するために、妊娠を伝えてもいいだろうか」
「公になりますか」
「皆に知らせるということではないが…何かあるのか?」
「妹には生まれるまで、伝えないで欲しいのです」
既に伝えていると思っていたので驚いたが、キア皇国に来てしまうのではないかと、危惧しているのかもしれない。
「だが、いいのか?」
「はい、あの子は心配するでしょうから。必要な方には伝えて貰って構いません」
「分かった、皇太子夫妻には伝えることになるが、口止めをしておく」
「よろしくお願いいたします」
皇太子夫妻も伝え、狂気の時に授かった子だと正直に話したが、それでも子どもは宝だと喜んでくれた。夫妻にはまだ子どもは出来ていない。
そして母国には生まれるまで知らせないで欲しいとお願いをした。
「なぜだ?」
「レイラも母君も、獣人の番でした。ですので、妹君をキア皇国に入れたくないようです。心配して来てしまっては、無意味になります」
可能性はないとは言えない。体の不自由ではない妹が来る方がいい、だが、これまでやって来たという話は聞いていなかった。
レンバー伯爵家は、獣人があからさまにいる場には行かないようにしていた。第二の被害者を出さない、人に出来る唯一のことだったのだろう。
それでもレイラは襲われることはなかったが、見付かってしまった。獣人のいる邸で大丈夫かと思ったが、使用人への徹底周知させて、距離を置いて接してはいるが、嫌悪するようなことはなかったという。
「そうか…そういうことならフルヴィア、黙っておいてくれるか」
「ええ、構いませんが…でも生まれて会いたいと思われたら?」
「その時は、我々が向こうに行くようにします。ただレイラには馬車は非常に辛いようで…」
「狭いからな」
「休みながらと言っても、それも不特定多数の人に会うことになりますので」
「何かいい手を考えなくてはならぬな」
折角、レンバー伯爵家を守るという約束をしたのに、キア皇国で何かあれば意味がない。レイラも責任を感じて、また家族を壊されては堪らない。
「公爵、もし可能ならレイラ夫人にお会いできないかしら?勿論、私が伺うわ」
フルヴィアは未だ妊娠出来ず、番でないことから大目に見られてはいるが、側妃を娶る可能性はどんどん迫っており、焦る気持ちはある。だが、どうにかしてひとりだけでも産まなくては意味がない。
レイラが羨ましいと思わないと言えば嘘になるが、フルヴィアにとってレイラは妬む相手ではない。ただ人であるレイラに妊娠の話を聞きたかった。
「聞いてみます。随分、穏やかに過ごしておりますので」
商会を呼んだりもしたが、レイラには知らない人には会うのは控えたいと断られた。道中で景色を見ることもせず、その後は邸に籠っているのだ。外の世界の獣人には会いたくないだろう。
浮かれていて忘れていたが、彼女にとってはここは憎しみと恐怖の存在なのだ。医師だけは人であることもあったが、受け入れているようで、見付けておいて良かったと心から思った。
一部の者にしか知らせず、口止めもしたため洩れることはなく、妊娠は順調に進んでいた。
「フルヴィア皇太子妃が、会いたいと言っているんだが、どうだろうか?」
「あまり親しくはないのですが」
「お祝いと、もしかしたら子どもが出来ない不安があるのかもしれない。それで話を聞きたいのかもしれない」
「お祝い?」
「ああ、とても喜んでらした」
そしてレイラから了承を貰い、フルヴィアに邸に来て貰うことになった。
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