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第3章 魔大陸

119 勇者と魔大陸で全力マラソン

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俺達は魔大陸であろう場所をひたすら歩いている。

かれこれ3時間は休憩無しで歩いているのではないだろうか。

「レイ!歩いているなんて効率が悪いのだ!妾に乗って空からピューっと行くのだ!」

ヨウが手を広げて羽ばたく仕草をしながら声を掛けてきた。

ヨウの真似をしてリヴァちゃんも両手を広げ、2人で俺の周囲をクルクルと走り回っている。

可愛らしいんだが⋯

とても鬱陶しいな。

「それもいいんだが、ヨウだと速すぎて何があるか分からないだろ。何があるか確認しながら行きたいからな。急いではいるが、ここはゆっくり歩いていこう。」

「めんどくさいのだ!」

無視しよう。

今度はギャーギャー騒いでいるがとことん無視だ。

それにしても何も無いな。

魔族はこんなところで暮らしているのか。

とにかく何かあるまで歩き続けるしかあるまい。



「飽きたのだ!もう歩くのは嫌なのだ!」

本当にうるさいな。

「よしわかった。それなら走ろうじゃないか。」

「走る⋯⋯⋯歩くよりはマシかもしれんのだ。」

少し考えた後に了承したヨウ。

「我も!我も走ります!」

相変わらずヨウに同調するリヴァちゃん。

「御三方が走る⋯私は絶対に追いつけない⋯⋯⋯はっ!こ、これは⋯噂には聞いた事のある⋯⋯放置!こんな見知らぬ右も左も分からぬ土地で放置⋯あぁ、ゾクゾクしてきて⋯⋯はうっっ⋯」

どこでそんな噂を聞いたんだハーリル。

ハーリルだけはまともであって欲しかった⋯

いい加減に帰ってきなさい。



「ただ走るだけはつまらないと思うのだ!なので何かあるといいのだが⋯」

面白くする必要がないだろう。

何をしたいんだ?

「それならヨウ様、名案があります!」

「それなら言ってみるのだ!」

なんだか楽しそうだな。

魔大陸に飛ばされたと言うのに、悲観してる者が誰もいないのも面白い。

「はい!先に体力が無くなった者が負け!お仕置を受けられないっていうのはどうでしょうか!」

ん?

普通は負けたらお仕置なんじゃないなのか?

「ぬぬ!それでは負けたらお仕置もされず、ただただ悔しいだけではないか!」

「そうです!だから負けられないのです!」

何を言ってるのだこのドラゴン共は。

こいつらのお仕置はご褒美と同じ意味になってないか?

「んなっ!それでは私の負けが確定⋯お仕置はないけど放置され、さらに何もされず負けの烙印だけを背負うことになるのか⋯⋯⋯負け犬⋯なんて響きなのだろうか。私は犬⋯はうっっ⋯」

なんかどんどん酷くなってないか?

そっちに行ったらダメだハーリル。

早く帰ってきなさい。



「ハーリルは走らなくていいぞ。また俺が抱えていくからな。放っておくなんてしないぞ。」

目を見開きながら驚くハーリル。

「また抱えて貰える⋯恥ずかしいけど嬉しい⋯でも⋯⋯放置もされたいし犬にもなりたい⋯⋯⋯ああ、私はどうしたら⋯」

そろそろ本気で心配になってきたんだが⋯

「おいハーリル!しっかりしろ!」

俺はハーリルの肩を掴んで揺さぶる。

「はっ!わ、私は何を⋯」

「帰ってきたか。気を確かに持て。戻って来れなくなるぞ?」

ハーリルはキョロキョロと辺りを見渡すように何かを確認している。

そして首を傾げた。

「帰って?戻れなくなる?どういうことでしょうか?」

もうなんのことかも分からなくなっているのか?

これは非常にまずい。

首を傾げて不思議そうにする顔。

なんて可愛いんだ。

いや、今はハーリルの綺麗な顔に見惚れてる場合じゃない。

「いいかハーリル。これだけは言っておく。目覚めちゃダメだ。これだけは覚えておくんだ。」

「は、はぁ⋯よく分かりませんが、分かりました。目覚め?ないようにします。」

とりあえず釘を刺すことはできたかもしれないな。

ハーリルにはまともでいてもらわなければ困るんだ。

しっかりして欲しい。



「それじゃあ全速力で誰が1番長く走れるか勝負なのだ!」

「戦いならいざ知らず、体力勝負ならいくらヨウ様でも負けませんよ!」

ヨウとリヴァちゃんは火花を散らすように睨み合っている。

「お仕置を受けるのは妾じゃ!」

「我は負けません!勝ってお仕置を受けるのは我です!」

お仕置を受けたがる、勝ってお仕置を受ける⋯

2人ともおかしかことを言っているんだが、もう放っておこう。

「どうせ俺が勝つんだ。俺に負けたら2人ともお仕置なしだぞ?」

なんでこのおバカドラゴンズは驚愕の表情を浮かべてるんだ?

「レイは走ってもいいが、勝負には関係ないのだ!主人のレイに妾が勝てるわけなかろう!」

「そうです!ご主人様は勝負には関係ないのです!これはお仕置をかけた、ドラゴン同士の負けられない勝負なのです!」

「わ、わかった。じゃあ俺は2人に置いていかれないように頑張って走るな。」

ドラゴンズの圧に負けて、走ることだけになったな。



「それでは行くのだ!」

「スタートです!」

すごい勢いで走り出すドラゴンズ。

踏み込む強さと蹴り出す力で地面がひび割れ土煙が舞う。

障害物がほとんどないのでとんでもなく速い。

これは置いていかれるんじゃないか?

どっちも本気出しすぎだろ⋯

「ハーリル、これははぐれる可能性がある。今すぐ行くぞ!」

俺は急いでハーリルを横抱きにし走り出した。



しばらく全力で走るが、はぐれる心配はないのが分かった。

なぜなら遠くの方に土煙が見えるからだ。

俺は目の前で舞っている土煙を風魔法で晴らしながら進んだ。

全力で走りながら周りを見ていく。

こんなに走ってるのにまだまだ荒野のような大地が広がっている。

こんな不毛な大地しかないのだろうか。

住みにくいからオーティス大陸を狙っているのか?

分からないことだらけだな。

それにしてもあのドラゴンズはどこまで行くんだろうか⋯

もしかしてこの大陸を走破するつもりか?

それはそれで楽しいかもな。



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