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第49話 神継

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「ま、待て、そんなことをしたら冥界が崩壊するぞ!封印している様々な怪物が目を覚ます!ゼウスに逆らった愚かな神々もだ!」

ハーデスは焦る。

壊れる。これまでの全てが。

壊される。道連れで転生してきたような元人間に。

「ハーデス、覚悟しろ。お前は何もしなかった。こんな何も無い世界で何をしていた?ただ役割をこなして過ごすだけの何が楽しいんだ?」

「何を言っている!!それがゼウスの決めたことだ!この私はそれに従い、全ての世界の秩序を守っているんだ!」

ハーデス必死の形相で説明する。

「冥界を楽しくだと?なんの意味がある!魂を浄化させ、世界を円滑に回すだけなのだ!役割以外のことの何が必要だというのだ!」

ハーデスの魔力が膨れ上がる。

「お前らに何がわかるのだ!どれだけの時間をここで過ごしていると思ってるのだ!変える必要も変わる必要もない!お前らみたいな異分子は私が直々に殺してくれる!」

闇よりも黒い魔力に覆われるハーデス。

魔力が形取り、ハーデスの背に三対六枚の漆黒の翼が生える。

「この私の真の力を見せてやろう!ゼウスでさえ恐れる私の力をな!」

さらに魔力は一対の漆黒の剣を作り出す。

それを逆手に握りシオンたちに吶喊してきた。

「滅しろぉぉおおおおお!」

目にも止まらぬ速さでシオンの横を通り過ぎる。

「そんな攻撃きかないな。」

虹色の魔力を纏うシオンにはその刃が届かない。

「馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!元人間如きにいいいいいい!」

なりふり構わず剣を振り回してくるハーデス。

シオンはそれを的確に捌いていく。

「お前は弱い。タナトスと同じだ。ただ速いだけ。なんの技もない。」

シオンはハーデスの腹に膝を叩き込む。

「ぐああああああ!」

「お前みたいな弱い神に冥界を統べるなど無理だ。冥界の王には俺がなろう。」

「やめろ、やめろやめろやめろおおおおお!」

シオンは神弒を構えた。

「終わりだハーデス。」

虹色の魔力を剣の柄に全て注ぎ込む。

悲鳴のような甲高い音を鳴らす神弒。

「神弒よ!全てを斬り裂け!」

縦に一閃。

光を超える速さでそれはハーデスを突き抜けた。

誰の目にも止まらぬスピードで。

「はは、はははははは!何をしたのだ!私は⋯」

消える翼と剣。

「何故だ、何故、私の魔力が⋯貴様!何をした!」

「斬った、お前の全てを。殺しはしない。お前は神のままだが、権能を失ったんだ。」

ワナワナと震えるハーデス。

「馬鹿なこと言うな!そんなことをしたら冥界がどうなるか⋯お前にはわからんだろう!」

「ハーデスが冥界の王でなくて、何か変わるのか?お前は何をしているんだ?ただそこにいるだけの存在しかいないなんて、冥界の住人は全員死んでるも同然じゃないのか?」

「お前に何がわかると言うのだ!そうやって神々は永遠の時を過ごすものなのだ!そう決められているのだ!」

シオンは溜め息を吐く。

「それなら誰がやっても同じだろう。だから俺がやる。まだクライム・キャニオンの1部しか見てないが、冥界の全てを、天界すらも変えてやる。」

ハーデスの胸から漆黒の玉がゆっくりと出てくる。

「んな!こ、これは神継⋯?私は生きているのに何故なんだ!」

「何故なんだろうな。死んだも同然だからじゃないか?何もしなければ死んでるも同然だろ。」

ゆらゆらとシオンに漆黒の玉が近づいてくる。

「これを俺が取り込めば⋯俺が冥王なのか?」

『そうなのだ。今のシオンならば簡単に取り込めるだろう。次の神と認められなければ神継は発動しないのだ。』

「わかったケルさん。これで約束を果たせる。」

『よくやったのだ。シオンならばやり遂げると信じていたのだ。』

漆黒の玉を掴み、胸に押し込む。

「うお、これが⋯神の力⋯」

「いいのかシオン?お前は神になりたくなかったんじゃないのか?」

プロメテウスが問いかけた。

「仕方ないじゃないか。誰もやりたくないんだからな。プロメテウスはゼウスから神継しないとだろ?それなら俺がやるしかないさ。」




こうして俺は冥界の王に、冥王シオンとして君臨することになった。

すぐさま冥界を変えることなど出来はしない。

元冥王ハーデスに役割を与え、冥界を新しく生まれ変わらす為に協力してもらっている。

もちろんタナトスとヒュプノスにもだ。

他の冥界の神々も俺の部下になっている。

冥界が落ち着き次第、プロメテウスと仲間と共に天界に乗り込む予定になっている。



「なぁケルさん、冥府の門はどうするんだ?」

『心配には及ばん。私にも部下はいるのだ。今はオルトロスという2つ首の犬が守っておるのだ。あやつも暇をしているだろうから、丁度いいのだ。』

「それならまだまだ一緒に居られるな!」

『うむ、そうなのだ。しかしこの大きさでは一緒には過ごしにくかろう。しばし待つのだ。』

「大きさを変えられるのか?」

『今見せてやる。変化!』

ケルベロスは光に包まれた。

光が収まると⋯

「シオン、これでバッチリなのだ。」
「シオン!やっと会えたな!」
「シオーン!私にもハグして!」

「お、女の子?ケルさん?」

「うむ!」
「おう!」
「うん!」

「ど、どういうこと?」

「これから楽しくなるのだ!」
「たくさん遊ぼうぜ!」
「いっぱいくっつく!」

「ははは、よくわかんないが楽しそうだ!」



~完~
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みんなの感想(3件)

なつめぐ
2024.05.26 なつめぐ

やるじゃんユース

音無響一
2024.05.26 音無響一

お褒めのお言葉ありがとうございます!
楽しんで頂けたなら幸いです!

解除
Nagi
2024.05.12 Nagi

今後、シオンと矢場が遭遇することはあるんだろうか…気になります。
現世でも転生先でも人から好かれるとは世の中不公平ですね…

音無響一
2024.05.12 音無響一

お読み頂きありがとうございます。
2人が今後どうなるのか、そこがポイントのひとつに今後なってくるんだと思います。
その話はいつになるのか…私もわかりません!
完結まで頑張って書きます!

解除
ueda19551221
2024.05.06 ueda19551221

続きが気になるので更新楽しみです!

音無響一
2024.05.12 音無響一

いつもお読み頂きありがとうございます。
今度も面白くなるように頑張ります!

解除

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