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第48話 シオンVSケルベロス

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「本当にやらないといけないのか?」

シオンとケルベロスは向かい合う。

『そうだ。我に力を示してみよ。』

ケルベロスの魔力がみるみると膨れ上がる。

もう言葉はいらないと態度で示すケルベロス。

我を超えてみせろ、そう言っているようだった。

「こ、これがケルさんの力⋯なんて暴力的なんだ⋯」

『この程度で驚いてどうするシオン。』

ケルベロス3つの首のうち、左の首が口を大きく開いた。

『耐えてみせよ。キャノンボール。』

ただの魔力の塊なのだろう。

圧縮された高濃度の魔力弾が高速でシオンに向け放たれた。

「くっ、これはよけたらまずい!」

シオンは神弒でキャノンボールを斬り裂く。

避けたらタマモに直撃していたからだ。

『ほう、なんだその剣は。禍々しいな。いつの間にそんなものを手に入れたのだ?冥界にそんなものはなかったと思うのだ。』

「これは元々はプロメテウスの剣なんだ。冥界で力を蓄え、神殺しの剣、神弒という銘の剣になっている。」

『そんなことがあったのだな。やるではないか。魔法をも斬り裂くなど初めて聞いたのだ。』

さらに魔力を膨れ上がらせるケルベロス。

『どんどん行くのだ。耐えろよシオン。キャノンボール!』

先程のように単発ではなく3つの首が交互にキャノンボールを放ってくる。

「んな、連射できるのか!」

シオンは神弒を使い全てのキャノンボールを斬り裂いていく。

斬り裂く度に神弒が熱くなり刀身が赤くなる。

何発繰り出したのだろうか、絶え間ないキャノンボールの嵐が止まった。

『なかなかやるな。全て斬りおったではないか。』

あれだけの魔力弾を繰り出すも平然としているケルベロス。

「涼しい顔してるなケルさん。これで全力なわけないよな?」

『ははは、シオンも余裕そうではないか。我は準備運動にもなっておらぬのだ。ではそろそろ準備運動と行こう。』

ケルベロスは魔力を全員に纏わせた。

巨体とは思えないスピードでシオンに向かってくる。

前足、尻尾、3つの首、全て使いシオンに襲いかかる。

シオンも魔力を体に纏わせ対抗する。

シオンは前足での攻撃をかわし、ケルベロスの胴を斬付ける。

「なっ、なんて硬いんだ!神弒の刃が通らない!」

『やるではないか。我に一撃でも攻撃を与えたのはシオンが初めてなのだ。』

「それは嬉しいんだが、全く効いていないんじゃないか?」

『ははは、いくらそ剣が強かろうと、シオンが剣の力を引き出していないのではないか?その剣の内包する力をつかえば、我なんて一撃で真っ二つなのだ。』

「なんだって?俺がまだ神弒を使いこなせていないってことなのか?」

ケルベロスの言葉に驚きを隠せないでいるシオン。

『我の魔力を斬って、さらに力を貯めているのに気づいていないなか?』

ふと神弒に目を配らせると、刀身が赤く輝いている。

『その色が我の魔力の色であろう。その貯めた魔力はどうするのだ?』

ケルベロスに聞かれるが、シオンもどうすればいいのかわからない。

「どうって言われてもな⋯」

『そんなんじゃ我を倒すことはできないのだ。魔力だけ多くても意味が無いのだ。使いこなせと言っておいたであろう。何をしていたのだ?』

言い終わると、また前足でシオンを攻撃してくる。

3つの首と前足を巧みに使った攻撃でシオンは防戦一方だ。



「ふははははは、ケルベロスに勝てるものなど存在しないのだ!そしてケルベロスを従える私こそが最強!ゼウスもそのうち私が下してくれよう!全ての頂点に立つのは私だ!」

ハーデスが高らかに笑っている。

「プロメテウスよ、あんなことを言われているがどうするのじゃ?妾たち4人でハーデスを殺るか?」

「まだいい。ハーデスを倒したとしてもケルベロスを何とか出来なかったら、結局は全滅だ。」

「私もシオンのおかげで強くなれた気がしたが⋯相変わらずケルベロスは見ているだけで寒気が止まらないな⋯」

「自分は初めて見ましたが⋯あれはやばいでやすね。」

4人はシオンとケルベロスの戦いを見守っている。



『どうしたシオン。魔法を斬るだけしかできないのか?我を斬って見せるのだ。』

「くっ、俺にケルさんを斬れって⋯そんなの無理だろ。」

『情けないな。ちょっとは戦えるように成長しているようだが⋯期待外れだな。そんなんでは冥界を統べることなど到底無理なのだ。ハーデスにも勝てぬ。』

ケルベロスは攻撃パターンを変えてきた。

その巨体からは考えられないほどのスピードで動きながら、口から魔法も放ってきたのだ。

『我はまだまだ全力など出してないのだ。こんなので苦戦してどうする。』

どうやっても攻撃に転ずることが出来なくて焦るシオン。

「くっ、どうすれば!ぐはっっっ!」

一瞬の隙を取られ、魔法がシオンに直撃する。

『どうしたシオン。そんなんではいつまで経っても我には勝てないのだ。』

ケルベロスは追い打ちをせずにシオンが立ち上がるのを待つ。

「何をしているケルベロス!早くトドメを刺せ!オリュンポスの神々に逆らった罰を与えよ!」

ケルベロスは冷ややかな目でハーデスを見下ろす。

黙っていろとでも言わんばかりの目をしている。




「はぁ、はぁ、どうすれば⋯まだ刀身が赤い⋯ケルさんの魔力がここにあるのか⋯ん?この感じ⋯そうか!」

シオンはゆっくりと立ち上がった。

「そうか。これは魔力なんだ⋯」

シオンは両手で神弒を握る。

亡者の力を取り込んだ時のように、刀身にあるケルベロスの魔力を自分のものにするように取り込む。

「うおおおおおおお!」

ケルベロスの魔力が流れ込んでくる。

冥界に来て初めて感じた暖かい魔力と似ているが、攻撃的な魔力がシオンの身体を侵食する。

冥界、ひいては天界も含めても最強の存在のケルベロス。

その魔力がシオンに直接流れ込む。

身体が内側から爆発しそうな程の魔力の奔流。

シオンは雄叫びを上げながらケルベロスの魔力を抑え込む。

「はあああああああああ!」

シオンの身体にケルベロスの魔力が馴染んでくる。

「はぁっ!」

赤かった神弒の刀身が虹色に輝き始めた。

シオンが纏う魔力も虹色に輝いている。

『素晴らしいのだシオン!完全にモノにしたのだな。その力で我を斬れ!』

「行くぞケルさん。覚悟しろ。」

シオンは神弒を横凪に振るった。

虹色の剣閃が煌めいた。

煌めいた直後、ケルベロスの身体を通り抜けていく。

『良くやったシオン。これで我は解放されたのだ。』



「な、何が起こったのじゃ?」

タマモは事の経緯が分からず混乱している。

「俺にもなんのことか分からないんだが⋯」

タマモ以外もみんな混乱している。



「ケルさん、これでいいのか?」

『バッチリなのだ。これで我を縛り付ける鎖は無くなった。シオンが斬ってくれたのだ。』

「これのおかげさ。」

シオンはケルベロスに貰った最後の玉を見せる。

『うむ、よく気がついたのだ。』

玉は効力を無くしたのか、ただの石になっていた。




「何をしているケルベロス!私の言うことが聞けないのか!お前は私の命令に逆らえないようになっているんだぞ!」

『ハーデスよ、その命令はもう聞けぬな。お得意の強制魔法を使ってみるがいいのだ。』

ハーデスは首飾りに魔力を流し、ケルベロスに強制魔法を強いることで従わせていたのだ。

冥府の鎖。

これによってケルベロスはハーデスに従わざるを得ず、ハーデスの召喚魔法以外では冥府の門から動くことができない。

「なぜだ、なぜ私の言うことを聞かないのだ!」

『今見ていたであろう。我の鎖をシオンが断ち切ったのだ。ようやくだ。どれほどの時間、我は縛られていたのであろうか。』

シオンは虹色の魔力を纏ったままハーデスと向き合った。

「ハーデス、覚悟はいいか?この剣は神殺しの剣と言われているんだ。この神弒でお前を斬る。」

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