幼なじみ祭

葉津緒

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番外編(おまけ、小ネタ)

悪意の裏側

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※本編終了間際、風紀副委員長の登場時に一瞬だけ出てくる、アオに悪意の視線を向けていた『人物』視点になります。




 ***



幼稚園の頃の礼音くんはとても可愛くてキラキラと輝いていて、本物の天使様みたいに見えた。
だけど一つ上の『アオ』という何の取り柄もない見栄えも普通な奴に、何故か礼音くんは夢中だった。
いつもアオばかりを見て、後を追いかけて、アオだけに笑いかけて。
僕と一緒に遊んでいても僕がどんなに話しかけても少しも楽しそうじゃなくて、すぐにアオのところへ行ってしまう。
他にもアオを追いかけてる子たちが沢山いたが、あいつのどこが良いのか僕には全く理解出来なかった。

ある日熱を出して幼稚園を休むと、そのまま別の幼稚園に行くことになりそれっきり礼音くんには会えなくなった。
悲しくて悔しくて散々泣き喚いたけれど、幼い子供にはどうすることも出来なくて。何度も夢に見るくらいずっと礼音くんに会いたかったのに、叶わないままで。
……多分あれは、僕の初恋だったんじゃないかと思う。


だけど何年も経って諦めかけていた頃、いきなり礼音くんが僕の目の前に現れたんだ。
全寮制の高校で、時期外れな転校生として注目されていた生徒。変なボサボサ頭と瓶底メガネで変装していたから気付けなかったけど。素顔を見れたおかげでようやく分かった。礼音くんだ!
幼稚園の頃の天使様がそのまま成長されてますます美しく輝いていた。ああ、やっと再会出来たんだ。

なのにその直後、礼音くんはまた僕の前から消えてしまった。
原因は『アオ』だ。平凡過ぎて気付かなかったけどあいつも同じ学園にいたらしい。何故か同じ一年生として、しかも礼音くんの寮の同部屋にだ。
そのアオが突然訳の分からない理由で礼音くんを悪者に仕立てやがった。礼音くんが嘘をついて皆を騙してたとか、そのせいであいつが死にかけたとか。

いや絶対違う。もしかするとアオが洗脳のような真似を何かしたんじゃないだろうか。それまであいつを嫌っていた筈の生徒会役員や風紀委員長なども、急に態度を変えてチヤホヤし始めたんだ。逆にそれまで大切に扱っていた礼音くんへの対応は信じられないほど酷いものに変わったし。
こんなの絶対におかしいだろ。

とにかくそのせいで礼音くんは違う高校へと追い出されてしまった。
なんて話だふざけるな、僕の礼音くんを返せ!



「調子に乗りやがって。礼音くんがあんなことになったのは全部アイツのせいだ。アイツだけは絶対に許さない、必ず思い知らせてやるからな。待っていろよアオ……!」


.
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