幼なじみ祭

葉津緒

文字の大きさ
上 下
7 / 26

しおりを挟む
「てめえ……ふざけんなチビガキ、誰が嫁だ! アオは俺の可愛い可愛い若奥さんになって、恥ずかしがりながらも毎朝『行ってらっしゃいのチュー』をしてくれる予定なんだよ。昼は手作りの愛妻弁当、夜はアオ自身を美味しく頂いちゃうからな。どうだ羨ましいだろ」

「い、行ってらっしゃいの……夜はアオ自身を美味しく……ゴクリッ……って、う、羨ましくねーし! だったら俺なんか」



礼音と健斗の口喧嘩(妄想自慢?)に、あぜんとする一同。
むしろよっぽど仲が良いのでは、とも思える光景に渦中のアオはぐったりしながら既視感を覚えた。
そういえば昔、幼稚園でこんなやりとりを毎日見ていたような――。


『アオちゃんは僕のなの!』

『違うよ、アオちゃんは僕のだもん。大人になったら結婚して、ずうっと二人で一緒にいるんだから。ね、アオちゃん』

『そんなの絶対だめ、アオちゃんは僕と一緒に遊ぶの! お前なんか嫌い、アオちゃんから離れてよ!』

『うるさい、お前こそあっち行けばチビ!』


まだ幼い頃の可愛い健斗くんの姿が脳裏に浮かぶ。
アオを取り合ってする口喧嘩の相手は、同じ幼稚園で一つ年下だった子。

当時から二人はよく、こんな風に騒いでいたっけ。名前は確か――
そこまで考えて、はっと思い当たる。


「え? あの、もしかして礼音くんって……おーちゃん?」

「俺のことやっと思い出してくれたんだな、アオ!」

「ふん、やっぱお前かよ糞チビ。しつこくアオに付き纏いやがって。つか何だそのだせー姿」

「チビじゃねー! ていうかお前、お邪魔虫『けんと』だな。また俺のアオにちょっかい出しやがって……せっかく俺が変装までしてアオを独り占めしてたのに!」


「変装?」と信者たちが声に出す暇もなく、礼音は自分の頭にあったモジャモジャな毛と、ぐるぐるの瓶底眼鏡を外した。
中から現れたのは、ふわふわの金髪と美少女のような愛くるしい素顔。
予想外の可愛さに目を丸くする親衛隊・不良・ヒラ風紀委員たち。
対照的に「げっ」と不快感を示したのは、転入生信者である筈の美形たちだった。


「れ、礼音、お前マジで幼稚園の時の」

「いつも私たち、いえアオ君の後ばかり追ってきた」

「くそ生意気な」「『おーちゃん』だったの!?」

「……その金髪、顔……間違い、ない」


転入生の正体に愕然とする生徒会役員の面々。
アオは、口ぶりから『おーちゃん』を知る彼らの様子に疑問を抱く。



「おい礼音、一体どういうことだ。今まで我々にアオの居場所を仄めかし、まるで貴様がアオの近親者かそれに近い存在であるが如き振る舞いを……まさか騙していたのか!?」

.
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

処理中です...