「平凡な365日」番外編

葉津緒

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非凡な365日

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「くそっ、ふざけんなよアイツ!」


ハァハァと息を切らし走り回る俺の手には、新聞部発行の学園新聞。
その一面にはやたら大きく俺の写真と去年の体育祭ん時に仮装したアザラシ姿の写真、関連記事が掲載されている。

思わずそれをぐしゃぐしゃに握り締め、チッと舌打ちをする。
まったく何だって俺がこんな目にあわなきゃなんねーんだよ。

そもそもアイツ――ってのは、俺の大恩人が束ねるチームの情報屋なんだけど。この学園では理事長と学校医を除いて、唯一俺の素顔を知ってる奴なんだが。
新聞部員の立場を利用し、去年は俺の正体がバレないよう裏で色々やってくれてたってーのに。
それが何で急にこんな真似を……。


「アザラシ君!」
「見~っけ!」

「うわっ!?」


最悪だ、生徒会のドッペルに捕まるなんて。しかも「逃げらんないように♪」と手錠までつけられ、そのまま生徒会室へ俺を連行。
つか、何でこいつら普通にそんな物を持ってんだ。

……あの野郎、絶対後で覚えてろよ。



 ***



「それで、学園新聞に書かれているように貴方が本物のアザラシ君なのですか?」


俺は今、生徒会室の豪華なソファーに座らされている。両隣には双子書記、真向かいのソファーに副会長とチャラ男会計。補佐の転入生と俺様バ会長は少し離れた(多分会長の机?)席からこちらの様子を窺っている。
バカップルよろしく転入生は会長の膝の上に座り、会長はニヤニヤしながらその腰に腕を回しているんだが。……こいつら何考えてんだ生徒会室で。やっぱ本物の馬鹿だな。

ちなみに手錠は部屋に入ってすぐ外された。あ、擦れて跡ついてんじゃねーか。くそドッペルめ。

苛々のせいで軽く頭痛もするが、とりあえず今は副会長の質問に答えないと。
幸い俺の素顔に関してはバレてないようだし。ここはいつも通り根暗で真面目が取り柄のダサい平凡眼鏡になりきろう。


「い、いいえ、もちろん違いま」

「もぉ副会長ってば、うたぐり深~い。絶対そうだよ、だってアザラシ君めちゃくちゃ足速いし」
「僕ら捕まえるの大変だったんだから。ね、アザラシ君?」


話に割り込むんじゃねーよドッペル。

.
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