それはきっと、気の迷い。

葉津緒

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珠紀くんは
最近あまり見かけないけど、頑張って躾けられてるって崇悦から聞きました。
やっぱりスパルタだったのかな。

寮の部屋も今は別々でクラスも違っちゃったから会う機会も無くなったし。


「睦実には二度と近付かせないから、気にするな」


と崇悦に言われたけど。
すごく賑やかな人だったせいか全然会えないのも少し淋しい気がします。
でも、同じ学校にいるんだからきっとまた会う事もあるよね。

皆様も大好きな珠紀くんに早くまた会いたいですよね?
って崇悦を除く生徒会の役員さま方に尋ねたら、何故か視線をそらされ曖昧な返事しか貰えませんでした。


「?」

(珠紀の事は)
(正直もうどーでも良いやー)
(それより今はむしろ)
(…………)



「睦実、ちょっと来い」

「どうしたの崇悦、うわっ!? ……っ……ハァ、んん。チュク……ふぁ……やだ待っ、やあぁぁん」


放課後の生徒会室。
机に向かい、黙々と仕事をしていた崇悦がいきなり話し掛けてきた。
と思ったら、あっという間に膝の上に抱き抱えられ激しくキスをされる。
背中に回された手がいやらしい動きで、腰や脇腹・下半身にも触れてくる。

ついには役員の皆様が見ている前だというのに、下着の中にまで手を入れられてしまい――


「ハァハァ、ゃ……ぁ、うにゃあァんっ」



 ゴクリッ



「忘れるなお前たち。これは俺のモノだ。間違っても睦実に手を出そうなんて思うなよ?」

「!!」


崇悦の手に出してしまった僕の精液を舐めながら、そう命令する帝王。
わざわざ皆様に見せびらかすよう、ゆっくりと美味しそうに舌なめずりまでするのは止めて欲しいです。
そう言いたいのに、ハァハァと息があがって頭もぼーっとするし身体にも力が入りません。崇悦にもたれるようにしがみつくのがやっとです。


「フ、気持ち良かったか睦実? 急に悪かったな。続きは二人っきりの方がいいだろ?」

「ん……。たか……えつ、好き」


いつもの甘い崇悦の声と、頭を優しく撫でられる気持ち良さに思わずフニャリと笑ってしまいました。
途端、周りから息を呑むような音と


「くっ!」


と悔しがってるみたいな声が聞こえたけど、気のせいだよね。



 ***



そうして


崇悦に抱き抱えられたまま生徒会室奥の仮眠室へ行き、二人でシャワーを浴びながらまたえっちな事をされちゃったり。

行為の際、漏れ聞こえてしまった僕の声に、役員の皆様方が自身のあらぬ場所を押さえながら心底悔しがっていたとか。

僕が疲れて眠ってしまった後。
生徒会室へ一人戻った帝王を恨めしげに眺める役員様達の姿に、崇悦の笑いがしばらく止まなかったなんて。


……僕が18才になって崇悦と結婚する頃には、全部どうでも良いような、ただ懐かしいだけの思い出(笑い)話になっているのかな。
それまでもう少し時間があるけれど、今はこの学園で頑張っていこうと思います。

だからお願いです。
ようやく落ち着いた毎日が、崇悦との幸せな学園生活が、どうぞこのまま何事もなく穏やかに続きますように。

え、あれ? ――続くよね?




【END】
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