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【番外編】逃亡わんわん
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もともと人のいない場所を選んで行動していたのは不幸中の幸いだった。
しかし、相手は全校生徒。
色めき立つ会長親衛隊をはじめ部費アップを狙う諸部員たち。
だがわんわん確保のスピードを最優先にした結果、手柄(謝礼)の独占は諦め、まず文化部が情報を収集し運動部が現場に駆けつける――という意外な連係プレーが誕生した。
これにより放送後まもなく、体力自慢のいかつい連中が雄叫びをあげ、集団でわんわんを追っかけ回し始めたのである。
「見つけたぞ、わんわん!」
「やった、これで部費アップだ」
「大人しくしろよ~」
「よし、捕まえろ!」
「ひいぃッ!?」
はたから見ればさながらリアル鬼ごっこ。
身の危険を感じたわんわんが、死に物狂いで逃亡するのも当たり前。
しかし火事場のなんとやら、意外にも逃げ足の速かったわんわん。まるで野生の動物かと思うほどに、走る走る。
「やややだぁぁぁ、こっち来るなーッ!」
「くっ、待てわんわん!」
「お、おい何か異常に足速くねーか、わんわん」
「もう駄目だ、筋肉が重くて走れねぇ……」
「ゼェハァ……わ、わんわん……うちの部に欲しい逸材だ!」
「な、何をぉ!? こっちだってわんわんがいれば全国制覇も夢じゃねーぞ!」
「うるせぇ、わんわんは俺らの部が頂くんだよっ」
「わんわん、お願いだからちょっと待ってくれ~!」
……という鬼側の声は耳に入らず、ひたすら逃げ続けるわんわん。
後日、壮絶なわんわん勧誘バトルが繰り広げられるのだがそれはまた別の話である。
さて。
主にごつくてむさ苦しい男子達に追い回され振り切りながらどんどん人のいない方へと向かった、わんわん。
結果、気付いたら鬱蒼と生い茂る森の中で迷子になっていた。
まったくもって会長のせいである。
「何で学校の敷地内に、こんなバカみたいに深~い森があるんだよ! 普通に熊とか出そうなんですけど!?」
と元気いっぱい賑やかに喚くわんわん。
だが、それも最初のうちだけ。
日が沈み辺りが真っ暗になる頃には、不安と恐怖でうずくまり、動けなくなっていた。
ざわざわざわ
「……っ……!」
ガサガサッ
「ひっ!?」
グエーグエーぎゃぎゃぎゃ
「な、何今の何今の何今のぉぉ!?」
風や木々、小動物(?)などの発する物音に怯え、ひたすら目と耳を塞ぐわんわん。
いっそやみくもに走ってでも逃げ出したいところだが、先程それが原因で木の根っこに躓き足をくじいたばかりである。
その上、夜になれば寮の明かりを頼りに帰れるだろうとの期待は既に外れていた。
人間の身長を遥かに越す樹木達に視界を遮られ、月の光すらほとんど届かないのだ。
しかも今は五月。
日中はともかく夜はまだかなり肌寒い季節である。
暗闇と孤独への不安、体力を消耗させる気温の低下が、次第にわんわんを弱らせていくのだった。
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しかし、相手は全校生徒。
色めき立つ会長親衛隊をはじめ部費アップを狙う諸部員たち。
だがわんわん確保のスピードを最優先にした結果、手柄(謝礼)の独占は諦め、まず文化部が情報を収集し運動部が現場に駆けつける――という意外な連係プレーが誕生した。
これにより放送後まもなく、体力自慢のいかつい連中が雄叫びをあげ、集団でわんわんを追っかけ回し始めたのである。
「見つけたぞ、わんわん!」
「やった、これで部費アップだ」
「大人しくしろよ~」
「よし、捕まえろ!」
「ひいぃッ!?」
はたから見ればさながらリアル鬼ごっこ。
身の危険を感じたわんわんが、死に物狂いで逃亡するのも当たり前。
しかし火事場のなんとやら、意外にも逃げ足の速かったわんわん。まるで野生の動物かと思うほどに、走る走る。
「やややだぁぁぁ、こっち来るなーッ!」
「くっ、待てわんわん!」
「お、おい何か異常に足速くねーか、わんわん」
「もう駄目だ、筋肉が重くて走れねぇ……」
「ゼェハァ……わ、わんわん……うちの部に欲しい逸材だ!」
「な、何をぉ!? こっちだってわんわんがいれば全国制覇も夢じゃねーぞ!」
「うるせぇ、わんわんは俺らの部が頂くんだよっ」
「わんわん、お願いだからちょっと待ってくれ~!」
……という鬼側の声は耳に入らず、ひたすら逃げ続けるわんわん。
後日、壮絶なわんわん勧誘バトルが繰り広げられるのだがそれはまた別の話である。
さて。
主にごつくてむさ苦しい男子達に追い回され振り切りながらどんどん人のいない方へと向かった、わんわん。
結果、気付いたら鬱蒼と生い茂る森の中で迷子になっていた。
まったくもって会長のせいである。
「何で学校の敷地内に、こんなバカみたいに深~い森があるんだよ! 普通に熊とか出そうなんですけど!?」
と元気いっぱい賑やかに喚くわんわん。
だが、それも最初のうちだけ。
日が沈み辺りが真っ暗になる頃には、不安と恐怖でうずくまり、動けなくなっていた。
ざわざわざわ
「……っ……!」
ガサガサッ
「ひっ!?」
グエーグエーぎゃぎゃぎゃ
「な、何今の何今の何今のぉぉ!?」
風や木々、小動物(?)などの発する物音に怯え、ひたすら目と耳を塞ぐわんわん。
いっそやみくもに走ってでも逃げ出したいところだが、先程それが原因で木の根っこに躓き足をくじいたばかりである。
その上、夜になれば寮の明かりを頼りに帰れるだろうとの期待は既に外れていた。
人間の身長を遥かに越す樹木達に視界を遮られ、月の光すらほとんど届かないのだ。
しかも今は五月。
日中はともかく夜はまだかなり肌寒い季節である。
暗闇と孤独への不安、体力を消耗させる気温の低下が、次第にわんわんを弱らせていくのだった。
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