好きだから

葉津緒

文字の大きさ
上 下
2 / 8

しおりを挟む
「お、お嫁さんは出来れば俺がなりたいけど……って違う! 酷いよ副総長さん、俺のファーストキス返してよぉぉ!?」

「んー、どうしよっかなぁ」


返せるもんなら返してみろ、という心のツッコミはさて置き。
泣きながらポカポカと目の前の胸板を叩く平凡少年。反省の色などかけらも見えず、あははと笑う元凶。
真剣に抗議しているのだろうが、下手するとイチャつきながら痴話喧嘩をしているバカップルにも見える。

その光景をハラハラして見守る不良たち。
……何故か皆、あえて総長からは視線を逸らしているのだが。


「副総長さんのバカー!」

「あーごめんねぇ? でも俺がしたのは口の端っこだし、今から総長に消毒のキスをしてもらえば良いっしょ」


適当に謝る男の言葉に、パアァァアと表情を明るくさせる平凡。
若干、鼻息が荒いのは気のせいだろうか。


「ハッ、そそそうか。総長、消毒してください!」

「うるせえ。チッ、仕方ねぇな」


え!?
と屋上にいるほぼ全員が息を呑んだ。
まさかの同意に不良達は驚き、少年は歓喜し、愉快犯は面白そうにさらに口角を上げる。


「おら、覚悟しろよ」

「そ、総長……!」


ゆっくりと近付いた総長。
だが皆が見ている前で、頭を掴まれ無理やり口に「消毒」のキスをされたのは――

何故か平凡少年ではなく、副総長の方だった。



真っ青になる平凡と、目を見開き硬直したまま顔色を失くす男。
決定的瞬間を!
と、うっかりスマホで写真を撮ってしまった周囲の不良に


「おい、今の写真こいつの彼女に送っとけ」


と総長が指示を出す。
その言葉でハッと我に返り


「ちょっ、バカ止めろ!」


慌ててスマホを取り上げようとする副総長。
チャラそうに見えて、実は溺愛中の可愛い可愛い彼女がいたりするのだ。
その彼女。控え目ながらも愛ゆえに嫉妬深く、ただでさえ美形の彼氏に

「貴方の周りにはいつも綺麗な人が一杯。だから私みたいな平凡、すぐに飽きちゃうよね。そんなのやだけど……もし貴方が浮気した時は、私すぐに別れます。だって、あんまり迷惑かけて……せめて嫌われたくはないの」

とやや卑屈な心配をしがちな上に、結構な天然さんでもある。
そのため、総長と彼氏のキス写真を見て

.
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仮面の兵士と出来損ない王子

天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。 王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。 王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。 美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。

【完結】終わりとはじまりの間

ビーバー父さん
BL
ノンフィクションとは言えない、フィクションです。 プロローグ的なお話として完結しました。 一生のパートナーと思っていた亮介に、子供がいると分かって別れることになった桂。 別れる理由も奇想天外なことながら、その行動も考えもおかしい亮介に心身ともに疲れるころ、 桂のクライアントである若狭に、亮介がおかしいということを同意してもらえたところから、始まりそうな関係に戸惑う桂。 この先があるのか、それとも……。 こんな思考回路と関係の奴らが実在するんですよ。

【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。 「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」  ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。 「では、私がいただいても?」  僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!  役立たずの僕がとても可愛がられています!  BLですが、R指定がありません! 色々緩いです。 1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。 本編は完結済みです。 小話も完結致しました。  土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)  小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました! アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

モブオメガはただの脇役でいたかった!

天災
BL
 モブオメガは脇役でいたかった!

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

処理中です...