王道くんと、俺。

葉津緒

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第四章

21

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……いや、確かにそうかもしれないけども。ちょっと、あの。
優馬隊長、この人本当に信頼しても大丈夫なんですよねッ。



授業が終わり、飛んで来た優馬隊長が郁人さまの様子をくまなくチェック。
そこからは土屋くんも一緒のお説教タイムに。ひえぇっ!?


「くだらないこと(千葉との張り合い)で危なく郁人さまを怪我させるところだったなんて」

「……悪かった」


怯える僕らをよそに、謝罪の言葉を口にする土屋くん。はいぃ?
え。まさか優馬隊長・最強説って本当なの!?

郁人さまも驚いた様子で土屋くんのおでこに触れて、熱を計ってます。あ、ぺいっと手を剥がされた。


「千裕くんも、郁人さまを危険にさらすような真似は止めてもらえますか」

「うん、ごめんね。だけどあれで助けられないようじゃ二人とも今後は郁人くんに必要ないんじゃないかな」

「……!?」

「ああ、なるほど。確かにそれもそうだね」

「でしょう?」


ふふふ、と笑い合う可愛らしい二人。
な、何だか黒い。そして怖いです。
寒気がして視線を逸らすと、またも郁人さまのあの蕩けるような微笑みが――


「なるほど全く反省してませんね、郁人さまぁ?」

「ひいぃッ!?」


笑顔の優馬隊長の後ろに一瞬、鬼のような幻影を見た気が、あれ?



やがて隊長が隣のクラスへ帰ると。
郁人さまは疲れきった様子で机に突っ伏し、その後の授業を静かに真面目に受けられていました。
朝、あれほど皆に衝撃を与えた憎い転入生のことも忘れているようなので、僕ら親衛隊一丸となり奴の話題が郁人さまのお耳に入らぬよう様々な努力と工作を続け……。

ですがそれも、帰りのホームルームが始まり、氷川紀幸が転入生の所在を千葉先生に尋ねてから数秒後。

「あああああっ、また忘れてたー!!?」

と郁人さまが絶叫し、僕らは再び絶望に襲われ打ちひしがれて。
――全ては徒労に終わりました。


おのれ、氷川め。
思い出した途端しつこく「ねぇねぇ、歩くんは!?」と千葉先生を質問攻めにする郁人さま。それを警戒心あらわに睨む氷川。

ちょっと、何だよその目!
お前が、例のキラースマイルで教室から消えた連中に含まれていたのは知ってんだからなッ。
同じく消えた太賀がすっきりした顔でトイレから戻る途中、廊下の端っこで体育座りになり何やらぶつぶつ呟いてる氷川を見つけ回収した。そう、中村くんに報告してたし。
教室に帰ってきてからもしばらくの間、真っ赤な顔でチラチラ郁人さまを見てたくせに……。

よし、こいつも優馬隊長に報告しよう。
それもなるべく誇張気味に!



<郁人さま親衛隊、隊員Aの視点・終わり>




【第四章/END】
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