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卵焼き
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バスルームを覗くと湯船が溜まったようだ。そしてちらっと添えられているシャンプーやボディーソープを見る。市販のモノに見えるが、沙夜達が使っているモノとは違う。もっとも沙菜は気を遣っていて、シャンプーやボディーソープも専用のモノを使っているようだが、沙夜は洗えれば良いという姿勢なのでそんなモノにこだわりはない。
沙菜のように裸にならないといけないような仕事であれば、ある程度気を遣わないといけないだろう。AVは夢を売る仕事では無いといけない。肌にシミがあったりするのは、見ている人達を幻滅させるだろうから。
沙夜はその辺に気を遣ったりしない。いつか沙菜から進められたボディークリームというモノを使ってみたが、肌がベトベトして気に入らなかった。それに変な匂いがするのだ。合成的な匂いが嫌だと思う。
沙夜は唯一化粧水として使っているモノは手作りの物だった。余計な匂いもしないし、自分の好きなように出来るから。
一馬の奥さんもそういう女性なのだろう。コーヒーを淹れるのに余計な匂いがあると困るし、口にするモノも仕事の前には口にしない。味覚が狂うかららしい。
そういう所が似ているから惹かれているなら、それは違う。奥さんに自分を重ねられているような気がしてするから。自分は自分で、奥さんの代わりでは無い。そう思いながら、沙夜は風呂場をあとにした。
「お風呂が沸いたわ。」
ベッドに腰掛けてテレビのチャンネルを変えていた一馬がそのテレビを消すと、沙夜の方を見る。
「見ていて良いのに。何か良い番組でもしていたかしら。」
「別に。こういうところのテレビは普段は見れないチャンネルがあると思っただけだな。」
「あぁ……ペイチャンネルのこと?」
沙菜からそういう番組に出るというのを聞いたことがある。AVだけでは無く、AV女優や男優が出てトークをしていることもあるらしい。ただそのトークの内容は地上波では絶対に放送されないような内容なのだが。
「どうしてこういうホテルではそういう放送を入れているのかしら。」
「他人のモノを見て、自分たちも気分を盛り上げるためだろう。」
「一馬は観ないの?」
沙夜はそう聞くと、一馬は少し笑って言う。
「こういうところで育ったし、ソープ嬢もキャバクラ嬢も身近にいた。知識だけは教えて貰えていたな。」
それだけでは無くヤクザなんかも身近にいて、一馬が剣道に打ち込んでいるのを観たその人はいずれ組に入って用心棒になって欲しいと言っていたが、両親がそれを反対していた。その辺は常識のある人で良かったと思う。それにそのヤクザだって本気では無かったのだ。
「知識だけは?」
「中学生くらいの頃か。友達の家で兄が持っていたAVをみんなで観たことはある。しかし、やはり作り物だと思ったな。お前は妹のでて居るモノなんかは観なかったのか?」
すると沙夜は首を横に振る。
「沙菜から参考にすると良いってソフトを渡されたこともあるし、それを観たこともあるわ。知識としてはあっても良いと思っていたし。でも気になったのは行為では無く、その前にイメージビデオみたいなことをするでしょう?」
「あぁ。」
「その音楽が気になったわ。あとで知ったけど、あなたが演奏していたと聞いた。」
その言葉に一馬は立ち上がると、沙夜の方へ近寄っていく。
「そんなときから気にしていてくれたのか。」
「えぇ。存在感のあるベースで、なのに邪魔をしていない。女性よりも行為よりもその音楽が気になったわ。」
その言葉が何よりも嬉しい。一馬は手を沙夜の顎に添えると体を屈ませて軽くキスをする。
「何よりも嬉しい言葉だ。沙夜。」
セックスをする気は無いのかもしれない。だがこのまま別々というのはとても寂しい気がする。
「何……。」
シャツの裾に手を伸ばしてそれをあげようとした。その行動に沙夜は手を添える。
「風呂が沸いたと言っていた。脱がなければ風呂に入れないだろう。」
「自分で脱げるから。」
そう言って沙夜はその場から離れると、風呂場へ向かう。すると一馬もその中に入ってきた。
「何……。」
「あまり時間も無いから一緒に入るか。風呂が広いし、たまにはゆっくり足を伸ばしたい。」
「一人の方がゆっくり入れるわ。」
芹でもこんなことをしたことは無い。なのに、一馬は何を考えているのだろう。
「さっきも言っただろう。ここは休憩にしているんだ。時間があまりない。それにお前は終電までには帰りたいだろう?」
「そうだけど……ちょ……本当に?」
一馬は止める間もなく着ているシャツを脱ぐ。すると少し浅黒い肌に、鍛えられている見事な体が沙夜の目の前に現れた。そして結んでいたゴムを取る。そして着ているジーパンも脱ごうとした。
「何もしないと約束は出来ないが、お前も走ってここまで来たんだ。それに昼間は動いていたんだろう。汗くらい流したら良い。」
そう言われて、沙夜は少し俯いた。だが次々に服を脱いでいく一馬を見て、震える手で沙夜は自分のシャツに手をかける。
想像はしていたが、かなり良い体をしている。沙菜ほど胸は大きく無さそうだが、それでも一馬の奥さんよりも大きい気がした。それに腰のくびれもそれに繋がる尻のラインも綺麗なモノで、この体に触れたくない男などいないだろう。
思わず手を伸ばしかけた。だがよく見ると、沙夜の体には小さな傷跡が沢山ある。そうだ。その傷は自傷をしていたモノもあるかも知れないが、ほとんどは「二藍」を守るために付けたモノだった。手の傷は同じ会社の女性から付けられたモノ。腹の傷は一馬を守るために付けられたモノ。そのほかにも膝に打ち身を付けられたり、背中からパイプ椅子に突っ込んだこともある。
「沙夜。」
一糸まとわぬ姿になっても沙夜は前を手で隠そうとしている。一馬はその手を掴むと、その体を見た。まさか晒されるとは思っていなかった沙夜の顔が一気に赤くなる。芹でもこんなことをしたことが無かったからだ。
「ここか?」
そう言って一馬はその傷跡に触れた。貴理子から付けられたモノだろう。もうほとんどわからなくなっているが、腹のあたりに筋のような線が付いている。
「あぁ……。」
体を見たいとかそう言うことでは無いのだ。沙夜は一馬がなぞるその傷跡に自分の手を重ねる。
「えぇ。この傷跡。」
「あまりわからないな。よく見ればわかるくらいだ。」
一馬の奥さんの体には傷跡や火傷の跡が沢山ある。それは拉致されたときに付けられたモノだった。それに比べると綺麗な体だと思う。
「残るかもしれないとは言われたけれどね。もう結構わからなくなってる。」
一馬はその重ねられた手に指輪がまだあるのに気がついてそれを抜き取る。そして沙夜の服の上に置いた。そして自分の腕にはめられているブレスレットも取ると、自分の服の上に置く。その間、沙夜は自分の髪を上げた。一馬も長い方だが、自分の方が長いので迷惑になると思ったのだ。
すると白いうなじが見える。思わず一馬はその首筋に唇を寄せた。
「ちょっと。」
「どうした?」
「跡を付けようとしたでしょう?」
その言葉に一馬は少し笑う。
「さすがに目立つか。」
「えぇ。」
「だったら目立たないところだと良いんだな。」
すると沙夜は口を尖らせて言う。
「そんな問題じゃ無くて……。」
「今は何も考えるな。俺もお前のことしか考えない。お前も俺のことだけを見ていろ。」
その言葉に沙夜は少し違和感を持った。だが一馬の言う通りかも知れない。
馴染みの無いシャンプーを使っても、その匂いが一馬と過ごしたという証拠になる。セックスをするかどうかはわからない。それでも指輪を置いた時点で、芹のことを忘れるのだ。ただ目の前の人のことを見る。
そう思いながら一馬が入っていった風呂場に、沙夜も入っていった。
沙菜のように裸にならないといけないような仕事であれば、ある程度気を遣わないといけないだろう。AVは夢を売る仕事では無いといけない。肌にシミがあったりするのは、見ている人達を幻滅させるだろうから。
沙夜はその辺に気を遣ったりしない。いつか沙菜から進められたボディークリームというモノを使ってみたが、肌がベトベトして気に入らなかった。それに変な匂いがするのだ。合成的な匂いが嫌だと思う。
沙夜は唯一化粧水として使っているモノは手作りの物だった。余計な匂いもしないし、自分の好きなように出来るから。
一馬の奥さんもそういう女性なのだろう。コーヒーを淹れるのに余計な匂いがあると困るし、口にするモノも仕事の前には口にしない。味覚が狂うかららしい。
そういう所が似ているから惹かれているなら、それは違う。奥さんに自分を重ねられているような気がしてするから。自分は自分で、奥さんの代わりでは無い。そう思いながら、沙夜は風呂場をあとにした。
「お風呂が沸いたわ。」
ベッドに腰掛けてテレビのチャンネルを変えていた一馬がそのテレビを消すと、沙夜の方を見る。
「見ていて良いのに。何か良い番組でもしていたかしら。」
「別に。こういうところのテレビは普段は見れないチャンネルがあると思っただけだな。」
「あぁ……ペイチャンネルのこと?」
沙菜からそういう番組に出るというのを聞いたことがある。AVだけでは無く、AV女優や男優が出てトークをしていることもあるらしい。ただそのトークの内容は地上波では絶対に放送されないような内容なのだが。
「どうしてこういうホテルではそういう放送を入れているのかしら。」
「他人のモノを見て、自分たちも気分を盛り上げるためだろう。」
「一馬は観ないの?」
沙夜はそう聞くと、一馬は少し笑って言う。
「こういうところで育ったし、ソープ嬢もキャバクラ嬢も身近にいた。知識だけは教えて貰えていたな。」
それだけでは無くヤクザなんかも身近にいて、一馬が剣道に打ち込んでいるのを観たその人はいずれ組に入って用心棒になって欲しいと言っていたが、両親がそれを反対していた。その辺は常識のある人で良かったと思う。それにそのヤクザだって本気では無かったのだ。
「知識だけは?」
「中学生くらいの頃か。友達の家で兄が持っていたAVをみんなで観たことはある。しかし、やはり作り物だと思ったな。お前は妹のでて居るモノなんかは観なかったのか?」
すると沙夜は首を横に振る。
「沙菜から参考にすると良いってソフトを渡されたこともあるし、それを観たこともあるわ。知識としてはあっても良いと思っていたし。でも気になったのは行為では無く、その前にイメージビデオみたいなことをするでしょう?」
「あぁ。」
「その音楽が気になったわ。あとで知ったけど、あなたが演奏していたと聞いた。」
その言葉に一馬は立ち上がると、沙夜の方へ近寄っていく。
「そんなときから気にしていてくれたのか。」
「えぇ。存在感のあるベースで、なのに邪魔をしていない。女性よりも行為よりもその音楽が気になったわ。」
その言葉が何よりも嬉しい。一馬は手を沙夜の顎に添えると体を屈ませて軽くキスをする。
「何よりも嬉しい言葉だ。沙夜。」
セックスをする気は無いのかもしれない。だがこのまま別々というのはとても寂しい気がする。
「何……。」
シャツの裾に手を伸ばしてそれをあげようとした。その行動に沙夜は手を添える。
「風呂が沸いたと言っていた。脱がなければ風呂に入れないだろう。」
「自分で脱げるから。」
そう言って沙夜はその場から離れると、風呂場へ向かう。すると一馬もその中に入ってきた。
「何……。」
「あまり時間も無いから一緒に入るか。風呂が広いし、たまにはゆっくり足を伸ばしたい。」
「一人の方がゆっくり入れるわ。」
芹でもこんなことをしたことは無い。なのに、一馬は何を考えているのだろう。
「さっきも言っただろう。ここは休憩にしているんだ。時間があまりない。それにお前は終電までには帰りたいだろう?」
「そうだけど……ちょ……本当に?」
一馬は止める間もなく着ているシャツを脱ぐ。すると少し浅黒い肌に、鍛えられている見事な体が沙夜の目の前に現れた。そして結んでいたゴムを取る。そして着ているジーパンも脱ごうとした。
「何もしないと約束は出来ないが、お前も走ってここまで来たんだ。それに昼間は動いていたんだろう。汗くらい流したら良い。」
そう言われて、沙夜は少し俯いた。だが次々に服を脱いでいく一馬を見て、震える手で沙夜は自分のシャツに手をかける。
想像はしていたが、かなり良い体をしている。沙菜ほど胸は大きく無さそうだが、それでも一馬の奥さんよりも大きい気がした。それに腰のくびれもそれに繋がる尻のラインも綺麗なモノで、この体に触れたくない男などいないだろう。
思わず手を伸ばしかけた。だがよく見ると、沙夜の体には小さな傷跡が沢山ある。そうだ。その傷は自傷をしていたモノもあるかも知れないが、ほとんどは「二藍」を守るために付けたモノだった。手の傷は同じ会社の女性から付けられたモノ。腹の傷は一馬を守るために付けられたモノ。そのほかにも膝に打ち身を付けられたり、背中からパイプ椅子に突っ込んだこともある。
「沙夜。」
一糸まとわぬ姿になっても沙夜は前を手で隠そうとしている。一馬はその手を掴むと、その体を見た。まさか晒されるとは思っていなかった沙夜の顔が一気に赤くなる。芹でもこんなことをしたことが無かったからだ。
「ここか?」
そう言って一馬はその傷跡に触れた。貴理子から付けられたモノだろう。もうほとんどわからなくなっているが、腹のあたりに筋のような線が付いている。
「あぁ……。」
体を見たいとかそう言うことでは無いのだ。沙夜は一馬がなぞるその傷跡に自分の手を重ねる。
「えぇ。この傷跡。」
「あまりわからないな。よく見ればわかるくらいだ。」
一馬の奥さんの体には傷跡や火傷の跡が沢山ある。それは拉致されたときに付けられたモノだった。それに比べると綺麗な体だと思う。
「残るかもしれないとは言われたけれどね。もう結構わからなくなってる。」
一馬はその重ねられた手に指輪がまだあるのに気がついてそれを抜き取る。そして沙夜の服の上に置いた。そして自分の腕にはめられているブレスレットも取ると、自分の服の上に置く。その間、沙夜は自分の髪を上げた。一馬も長い方だが、自分の方が長いので迷惑になると思ったのだ。
すると白いうなじが見える。思わず一馬はその首筋に唇を寄せた。
「ちょっと。」
「どうした?」
「跡を付けようとしたでしょう?」
その言葉に一馬は少し笑う。
「さすがに目立つか。」
「えぇ。」
「だったら目立たないところだと良いんだな。」
すると沙夜は口を尖らせて言う。
「そんな問題じゃ無くて……。」
「今は何も考えるな。俺もお前のことしか考えない。お前も俺のことだけを見ていろ。」
その言葉に沙夜は少し違和感を持った。だが一馬の言う通りかも知れない。
馴染みの無いシャンプーを使っても、その匂いが一馬と過ごしたという証拠になる。セックスをするかどうかはわからない。それでも指輪を置いた時点で、芹のことを忘れるのだ。ただ目の前の人のことを見る。
そう思いながら一馬が入っていった風呂場に、沙夜も入っていった。
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