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栗きんとん
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卵を計ってより分けていく。その卵をパックに入れていくのだ。SMサイズ、Mサイズ、Lサイズとなり、それを一つ一つパックに詰めていく。SMサイズは昭人が詰めていき、Mサイズは芹が詰めていく。十個でいくらになるのかわからないが、ここの卵は高いらしい。
「親子丼食べたくなるな。」
芹はそう言うと、昭人も笑いながら言う。
「親子丼、相当美味しいよ。今度食べに来なよ。」
「そうするか。」
気軽に足を運べる仲になれば良い。芹はそう思っていたときだった。
「お前ら付き合ってんの?」
辰雄が卵をわけながら芹にそう聞いた。すると芹は顔を少し赤くさせる。
「誰と?」
わかっていたが、あえて聞いた。
「沙夜と。他のヤツなんか知らないし。」
意地悪そうに辰雄がそう言うと、昭人が口を尖らせる。
「えー?駄目だよ。」
その言葉に芹はムキになったように昭人に聞いた。
「何でだよ。」
「沙夜ちゃんは僕と結婚するんだから。」
「はいはい。」
芹はそう言ってまともに取っていない。もし本気だとしても昭人が結婚出来る歳となると、沙夜はいくつになるのか昭人は想像もしていないのだろうから。
「……ま、良いけどさ。お前らは結婚出来ないと思うし。」
「何でだよ。」
芹はそう聞くと、辰雄は珍しく真剣な顔で言う。
「お前、あれだろ?天草裕太の関係者じゃ無いのか。」
その言葉に芹は言葉を詰まらせた。どうしてそんなことを知っているのだろう。
「何で知ってんだよ。」
「天草って前に名乗ってた。それから裕太は俺の古い知り合いだし。」
「古い?」
「高校生くらいの時からの付き合いだよ。」
辰雄がホストをしていたときに裕太がホストクラブに入店したいと言ってきたのだが、すぐに裕太は未成年であることを見抜いて雇えないとオーナーが言っていたのを覚えている。
その時の裕太の目を見て、食事だけに誘い、どうして高校生がホストクラブで働きたいのかと聞いた。
「何か、楽器が欲しいとかって言ってたな。キーボードだったかシンセサイザーだったか。」
あの時の裕太を芹は良く覚えている。楽器屋でもらってきたカタログを見ながら、ずっとため息を付いていたのだ。本当に欲しいと思ったが、高校生が簡単に手に入れられるような代物では無かったのだろう。
だから高校の時はシンセサイザーは諦めたのだ。電子楽器を扱う楽器屋でバイトをしながら、ライブハウスに顔を出してバンドを組んだりした。その合間にピアノのレッスンへ行き、やっと音大へ入れたのだ。
「……で、天草裕太の何?」
辰雄はそう聞くと、芹は頷いて言う。
「兄だよ。」
「へ?兄弟なのか。」
「似てないだろ。」
「顔を見せてみろよ。」
卵を詰め終わってパックを置くと、芹は前髪を上げた。そこには裕太を若くしたような男がいる。その顔に、昭人も驚いたように芹を見ていた。
「髪を上げれば良いのに。」
「天草裕太の弟って知られるのが嫌なんだよ。」
髪を下ろして、芹はまた空のパックを手にする。そしてまた卵を詰め始めた。
「想像はつくよ。」
「何で?」
「どうせ、金、金言ってんだろ。」
その言葉に芹は驚いて辰雄を見る。まさか辰雄にも金をせびっているのかと思ったのだ。
「まさかあんたにも?」
「話が来たよ。いつだっけかな。こいつがまだ忍の腹にいる頃だっけか。それより前か覚えてないけど。まだホストをしているのかって言ってきてさ。田舎にいるって言ったら、それから連絡は無いな。」
田舎の方で養鶏をしている。それしかおそらく裕太の情報は無いのだろう。だからあっさり引き下がったのだと思う。
「借金でもあるのかあいつ。」
「お人好しで作った借金らしいよ。」
芹はかたくなに金を貸さなかった。だから紫乃を使って、金を払わせようとしたのだろう。しかし芹はそれすらも捨てて、裕太と紫乃の前から姿を消したのだ。
「……どっちでも良いけどさ。そんなヤツが身内にいて、沙夜が嫁に来るとは思えないな。あいつは頭が良いやつだ。いくら好きでも結婚となれば別だろうし。」
「家族なんか関係ない。」
その言葉に辰雄はムキになったように言う。
「結婚するってのは家族を作るって事だ。家族を捨てたようなヤツに、家族なんか作れるわけが無いだろう。」
そう言われて芹は言葉を詰まらせた。確かにその通りだ。子供が出来ようと、出来まいと結婚をするという言葉家族を作ると言うことなのだから。
辰雄の姉は自殺をしている。異国で苦しいことが沢山あったのだろうと思っていたのだ。だがその真実がわかったとき、辰雄は人間に絶望した。そしてホストの職を辞め、田舎を嫌う妻とも離婚し、この土地で一人で生きていこうと思っていた。
昔祖母がしていたように、養鶏をして生きていく。一人であれば不自由は無いと思っていたのだ。だが忍が無理矢理弟子入りのようなことをし、一緒に住み、やがてお互いに好きになった。似たもの同士だと思ったから。
忍となら、もう一度人を信じていけると思えた。裏切られても忍だけは裏切らないと思う。そしてもう一人信じれる人が出来た。それは自分の息子なのだ。そしてもう一人、忍のお腹に信じれるモノが生まれてくる。
「そのままじゃ、一緒になってもすぐ別れが来る。沙夜は強そうに見えて結構不安定な所があるからな。お前と一緒に居てもお前も一緒に倒れそうだ。」
そんなことは無い。沙夜が芹を置いていくそんな地獄があるだろうか。嫌あった。その事実に芹は手を止める。
「……そんなことはさせない。」
「だったらお前、髪を切れ。」
「……。」
「お前が逃げてんのに、沙夜まで逃げさせるつもりか?そんなヤツに沙夜を渡せるわけが無いだろ。昭人の嫁になった方がまだ現実味があるわ。」
「そう言うわけにはいかないんだよ。あんたさ、俺の何を知ってんだよ。事情があったんだ。」
熱くなる芹に対して、辰雄は冷静に言った。
「事情って金だけじゃ無いな。だったら女か。」
「……。」
その言葉に芹の手が止まる。
「女か金か酒か。人間同士のトラブルの原因は大体それに限られるだろ。」
「……。」
その様子を見ていた昭人が、パックを置いて鶏舎の外に出て行く。そして再び戻ってきて、芹に紫色の花を手渡した。それは雑草のように見える。
「何だよ。これ。」
「僕、幼稚園で女の子と喧嘩したとき、大体こういう花をあげると女の子が許してくれるんだ。芹君もそうしたら良いのに。」
芹はその花を手にするとじっとそれを見る。だが首を横に振った。
「違うんだよ。」
「違うの?」
「……俺さ。騙されたんだよ。兄に。自分の嫁を近づけて、金を脅し取ろうとしたんだ。だから逃げた。和解なんか出来ない。和解をしてもまた騙されるんじゃ無いかとか、俺が弱ければ沙夜にまた迷惑がかかるし。」
「……。」
そういう事か。辰雄は少し納得したように頷いた。
「他には迷惑をかけているヤツはいないのか。」
「いると思う。「二藍」のベーシストは元々兄さんのバンドにいたヤツだった。だけどあいつは同じメンバーから借金の保証人にもならなかったし、金の貸し借りもしなかった。だから、あいつも陥れられたんだ。」
「裕太から?」
「いいや。多分……あのバンドのメンバー全員から。」
「……。」
「あいつだって相当人間不信だったんだ。それを変えてくれたのが奥さんだって言ってた。」
沙夜もそんな存在になれると思う。支えあえる関係になれると思ったから。
芹はその持っている花をパックの横に置く。どこにでもある雑草の花だと思った。だがその花こそが沙夜のように思えた。踏み潰されても強く生きていこうとしている。その部分で、芹は劣っている気がした。
「髪、切るか。」
「その気になったか。」
辰雄はそう言って卵をまた分けていった。
「親子丼食べたくなるな。」
芹はそう言うと、昭人も笑いながら言う。
「親子丼、相当美味しいよ。今度食べに来なよ。」
「そうするか。」
気軽に足を運べる仲になれば良い。芹はそう思っていたときだった。
「お前ら付き合ってんの?」
辰雄が卵をわけながら芹にそう聞いた。すると芹は顔を少し赤くさせる。
「誰と?」
わかっていたが、あえて聞いた。
「沙夜と。他のヤツなんか知らないし。」
意地悪そうに辰雄がそう言うと、昭人が口を尖らせる。
「えー?駄目だよ。」
その言葉に芹はムキになったように昭人に聞いた。
「何でだよ。」
「沙夜ちゃんは僕と結婚するんだから。」
「はいはい。」
芹はそう言ってまともに取っていない。もし本気だとしても昭人が結婚出来る歳となると、沙夜はいくつになるのか昭人は想像もしていないのだろうから。
「……ま、良いけどさ。お前らは結婚出来ないと思うし。」
「何でだよ。」
芹はそう聞くと、辰雄は珍しく真剣な顔で言う。
「お前、あれだろ?天草裕太の関係者じゃ無いのか。」
その言葉に芹は言葉を詰まらせた。どうしてそんなことを知っているのだろう。
「何で知ってんだよ。」
「天草って前に名乗ってた。それから裕太は俺の古い知り合いだし。」
「古い?」
「高校生くらいの時からの付き合いだよ。」
辰雄がホストをしていたときに裕太がホストクラブに入店したいと言ってきたのだが、すぐに裕太は未成年であることを見抜いて雇えないとオーナーが言っていたのを覚えている。
その時の裕太の目を見て、食事だけに誘い、どうして高校生がホストクラブで働きたいのかと聞いた。
「何か、楽器が欲しいとかって言ってたな。キーボードだったかシンセサイザーだったか。」
あの時の裕太を芹は良く覚えている。楽器屋でもらってきたカタログを見ながら、ずっとため息を付いていたのだ。本当に欲しいと思ったが、高校生が簡単に手に入れられるような代物では無かったのだろう。
だから高校の時はシンセサイザーは諦めたのだ。電子楽器を扱う楽器屋でバイトをしながら、ライブハウスに顔を出してバンドを組んだりした。その合間にピアノのレッスンへ行き、やっと音大へ入れたのだ。
「……で、天草裕太の何?」
辰雄はそう聞くと、芹は頷いて言う。
「兄だよ。」
「へ?兄弟なのか。」
「似てないだろ。」
「顔を見せてみろよ。」
卵を詰め終わってパックを置くと、芹は前髪を上げた。そこには裕太を若くしたような男がいる。その顔に、昭人も驚いたように芹を見ていた。
「髪を上げれば良いのに。」
「天草裕太の弟って知られるのが嫌なんだよ。」
髪を下ろして、芹はまた空のパックを手にする。そしてまた卵を詰め始めた。
「想像はつくよ。」
「何で?」
「どうせ、金、金言ってんだろ。」
その言葉に芹は驚いて辰雄を見る。まさか辰雄にも金をせびっているのかと思ったのだ。
「まさかあんたにも?」
「話が来たよ。いつだっけかな。こいつがまだ忍の腹にいる頃だっけか。それより前か覚えてないけど。まだホストをしているのかって言ってきてさ。田舎にいるって言ったら、それから連絡は無いな。」
田舎の方で養鶏をしている。それしかおそらく裕太の情報は無いのだろう。だからあっさり引き下がったのだと思う。
「借金でもあるのかあいつ。」
「お人好しで作った借金らしいよ。」
芹はかたくなに金を貸さなかった。だから紫乃を使って、金を払わせようとしたのだろう。しかし芹はそれすらも捨てて、裕太と紫乃の前から姿を消したのだ。
「……どっちでも良いけどさ。そんなヤツが身内にいて、沙夜が嫁に来るとは思えないな。あいつは頭が良いやつだ。いくら好きでも結婚となれば別だろうし。」
「家族なんか関係ない。」
その言葉に辰雄はムキになったように言う。
「結婚するってのは家族を作るって事だ。家族を捨てたようなヤツに、家族なんか作れるわけが無いだろう。」
そう言われて芹は言葉を詰まらせた。確かにその通りだ。子供が出来ようと、出来まいと結婚をするという言葉家族を作ると言うことなのだから。
辰雄の姉は自殺をしている。異国で苦しいことが沢山あったのだろうと思っていたのだ。だがその真実がわかったとき、辰雄は人間に絶望した。そしてホストの職を辞め、田舎を嫌う妻とも離婚し、この土地で一人で生きていこうと思っていた。
昔祖母がしていたように、養鶏をして生きていく。一人であれば不自由は無いと思っていたのだ。だが忍が無理矢理弟子入りのようなことをし、一緒に住み、やがてお互いに好きになった。似たもの同士だと思ったから。
忍となら、もう一度人を信じていけると思えた。裏切られても忍だけは裏切らないと思う。そしてもう一人信じれる人が出来た。それは自分の息子なのだ。そしてもう一人、忍のお腹に信じれるモノが生まれてくる。
「そのままじゃ、一緒になってもすぐ別れが来る。沙夜は強そうに見えて結構不安定な所があるからな。お前と一緒に居てもお前も一緒に倒れそうだ。」
そんなことは無い。沙夜が芹を置いていくそんな地獄があるだろうか。嫌あった。その事実に芹は手を止める。
「……そんなことはさせない。」
「だったらお前、髪を切れ。」
「……。」
「お前が逃げてんのに、沙夜まで逃げさせるつもりか?そんなヤツに沙夜を渡せるわけが無いだろ。昭人の嫁になった方がまだ現実味があるわ。」
「そう言うわけにはいかないんだよ。あんたさ、俺の何を知ってんだよ。事情があったんだ。」
熱くなる芹に対して、辰雄は冷静に言った。
「事情って金だけじゃ無いな。だったら女か。」
「……。」
その言葉に芹の手が止まる。
「女か金か酒か。人間同士のトラブルの原因は大体それに限られるだろ。」
「……。」
その様子を見ていた昭人が、パックを置いて鶏舎の外に出て行く。そして再び戻ってきて、芹に紫色の花を手渡した。それは雑草のように見える。
「何だよ。これ。」
「僕、幼稚園で女の子と喧嘩したとき、大体こういう花をあげると女の子が許してくれるんだ。芹君もそうしたら良いのに。」
芹はその花を手にするとじっとそれを見る。だが首を横に振った。
「違うんだよ。」
「違うの?」
「……俺さ。騙されたんだよ。兄に。自分の嫁を近づけて、金を脅し取ろうとしたんだ。だから逃げた。和解なんか出来ない。和解をしてもまた騙されるんじゃ無いかとか、俺が弱ければ沙夜にまた迷惑がかかるし。」
「……。」
そういう事か。辰雄は少し納得したように頷いた。
「他には迷惑をかけているヤツはいないのか。」
「いると思う。「二藍」のベーシストは元々兄さんのバンドにいたヤツだった。だけどあいつは同じメンバーから借金の保証人にもならなかったし、金の貸し借りもしなかった。だから、あいつも陥れられたんだ。」
「裕太から?」
「いいや。多分……あのバンドのメンバー全員から。」
「……。」
「あいつだって相当人間不信だったんだ。それを変えてくれたのが奥さんだって言ってた。」
沙夜もそんな存在になれると思う。支えあえる関係になれると思ったから。
芹はその持っている花をパックの横に置く。どこにでもある雑草の花だと思った。だがその花こそが沙夜のように思えた。踏み潰されても強く生きていこうとしている。その部分で、芹は劣っている気がした。
「髪、切るか。」
「その気になったか。」
辰雄はそう言って卵をまた分けていった。
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